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■ 第242話 ■どの口が言ってんだ?の黄禍論

▶1888年、わずか29歳にしてドイツ帝国3代目皇帝となったヴィルヘルム2世。何度も言うけど英ヴィクトリア女王の孫ね。即位から2年後、好きにやらせてくれないドイツ統一の立役者ビスマルクを邪魔くさいと排除。生まれたてでまだ足腰プルプル小鹿のようなドイツ。ロシア、フランスと大国に挟まれる中、ビスマルクは勢力均衡を図り、戦争にならないよう他国と奇跡的バランスを保っていた。それをポンコツ小僧ヴィルヘルム2世が全部ぶっ壊し、世界大戦に突き進んで行く。

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▶ヴィルヘルムは強烈な汎ゲルマン主義。スラブ民族国家ロシアとの提携が気に入らない。ビスマルクが苦心して築き上げたロシアとの再保障条約の延長を破棄。ドイツにフラれて不安になったロシアは孤立していたフランスに急接近。露仏同盟を結んじゃった。フランスはアフリカでイギリスと、ロシアはアジアでイギリスと激しく植民地争奪バトルを展開中。露仏同盟はドイツ敵視と同時にイギリスを牽制する同盟。それでもヴィルヘルム2世はロシアのニコライ2世と仲良し。なんせヴィルヘルム2世は英ヴィクトリア女王の孫。9歳年下のニコライ2世はヴィクトリア女王の孫の旦那で2人は親戚関係にあり、互いに英語で文通し合うほどの間柄。表面上親しくても我こそは偉大なるゲルマン民族の国ドイツの皇帝。スラブの語源は「奴隷」のスレイブ。ヴィルヘルムはロシアをかつてのゲルマンの奴隷と見て腹の中では格下扱いしていた。

清を巡る列強会議
清を巡る列強会議。祖母ヴィクトリアと睨み合うのが孫のヴィルヘルム2世。

▶1894年、日清戦争が勃発し日本が勝利した。講和条約で日本が遼東半島の割譲を要求していることを知るとアジア進出を目論むロシアはドイツやフランスを誘ってこれに干渉して来た。「日本が遼東半島を所有すると北京が脅威を感じるよ。そうなると朝鮮の独立が怪しくなるよ。極東の平和を願うならユーは遼東半島、清に返しちゃいなよ」。三国干渉だ。「我々は友好国だけど、言うこと聞かないなら武力行使もあるよ」と脅すことも忘れない。


▶ヴィルヘルムは祖母ヴィクトリア女王のイギリスも誘ったけど、イギリスは乗らずに不干渉。日本は最終的に三国の脅しに屈した。三国干渉を主導したのはロシア。ドイツの狙いは露仏が接近し過ぎないよう見張り、ロシアの注意を極東に向けさせ、日本に遼東半島を返させて清に恩を売ること。いずれにしてもヴィクトリア女王の孫と孫婿らの干渉により、日本は遼東半島を取り損ねた。屈辱的なニュースに日本国民ブチギレ。この時叫ばれたスローガンが痛い薪の上に寝て、苦い熊の胆を嘗めて我慢し、いつか倍返しという意味の「臥薪嘗胆(がしんしょうたん)」だ。

▶ヴィルヘルム2世の日本に対する屈折した思いは続く。日清戦争終結後に露独仏を中心にヨーロッパで湧き上がって来た「黄禍論」。「こうかろん」または「おうかろん」と読むが、要は日本の台頭が世界に禍をもたらすという脅威論だ。「黄禍論」自体はヴィルヘルム発ではないがヴィルヘルムは画家にイラストまで描かせて日本脅威論を煽った。「黄禍論」は後にアメリカでも広く議論され、19世紀に入ってから排日移民法などに繋がってゆく。15世紀末、ヨーロッパ人が大航海に出て以来、世界中の有色人種が白人に滅茶苦茶にされてきた。なのに日本は脅威だとか一体どの口が言っどんじゃ? お前らこそ「白禍」じゃボケ~! と穏やかに個人的感想を呟いたところで次号に続く。チャンネルはそのままだ。

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週刊ジャーニー No.1364(2024年10月17日)掲載

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