
■ 第232話 ■パリ五輪開会式、なんだかなー
▶ちょっと脱線してパリ五輪の開会式で知ったかぶりだ。個人の感想だが政治的メッセージ&ポリコレ満載の奇妙な開会式だった。「今回もやる?」と思っていたらやっぱりやった。ジョン・レノンの名曲「イマジン」熱唱。炎に包まれたピアノは各地で続く戦火を意味したらしい。ここのところオリンピック開会式で「イマジン」を歌うのが定番となっている。東京でも北京でも歌われた。1996年のアトランタ五輪閉会式でスティービー・ワンダーが歌ったのが最初らしい。以降トリノやロンドン、平昌でも。いつしか五輪テーマ曲のようになった。「イマジン」は名曲だけど、歌詞が抱える矛盾を指摘する声も多い。果たしてこの曲は五輪開会式の最適解なの?
▶これから各国代表選手たちがそれぞれの国家や国旗を背負って死闘を繰り広げる。国別に獲得メダル数が発表され、嫌が上にもナショナリズムが高揚する。自国の国旗が一番高いところに翻り、国歌が演奏されれば感動に胸キュン。国威発揚の好機と捉えている国も多い。五輪開会式は4年に1度の国別対抗大運動会の幕開けセレモニー。だけど「イマジン」は「想像してごらん。天国も地獄も国家もない世界。殺す理由も死ぬ理由も宗教もない。皆が平和に生きている世界」。さらに「想像してごらん。何も所有しないって。欲張ったり飢えることもない。世界は兄弟。想像してごらん。みんなが世界を分かち合う姿を」と熱くたぎる闘争心に水を差す。

▶今から国を背負って戦おうとするアスリートたちに「世界はひとつで、国や人々の間に隔たりは存在しない」と言い、所有する欲望を戒め、人類は皆きょうだいだと語りかける。国境や宗教、資本主義を否定しているともとれる歌詞のためジョン・レノンは一時期共産主義者と疑われた。9.11以降、一部で放送禁止となった、いわくつきの名曲。「人類は皆兄弟」と言いながらロシアとベラルーシは国としての五輪参加を認めず村八分。一方でイスラエルとパレスチナはいらっしゃい。想像してごらん、と言うからつい勝手に大人の裏事情を想像しちゃう。あくまで個人の感想ね。
▶王妃マリー・アントワネットが刎ねられた自らの首を抱えて登場する演出には「革命の美化」や「死刑制度肯定」といった批判が上がった。またレオナルド・ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」を連想させる演目ではLGBT活動家で同性愛者の女性が女装したドラァグクイーンたちに囲まれる演出。これに対してフランスのカトリック教会は「キリスト教に対する愚弄と冷笑だ」と嚙みついた。あっちこっちから叱られた。大会組織委員会は「誰かを不快にさせたとしたらごめんね」と謝罪。多様性は結構だがやり過ぎれば鼻につく。007やエリザベス女王登場などエンタメに徹したロンドン五輪開会式と比較する意見も多く見られた。莫大な費用がかかる現代オリンピック。財政面やテロのリスクを負う以上、開催国の思想や思惑が盛り込まれる自由はある程度、許容されるべきとは思う。しかしそれによって不快な思いや憤りを感じる人が大勢出るようではむしろ逆効果。町の盆踊り大会で町長が偏った思想を延々語ったら子どもは白けて家に帰ってゲームに熱中する。五輪の主役はあくまでもアスリートたち。主催者は金だけ出してあとは可能な限り善意の脇役に徹して欲しいもんだ。閉会式、大丈夫かな? と心配したところで次号に続く。チャンネルはそのままだ。
週刊ジャーニー No.1354(2024年8月8日)掲載
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