■ 第225話 ■超高速で振り返る「天地創造」
▶「旧約聖書」離脱と宣言したのにちょこっと戻っちゃう。天地創造からアブラハム登場までの神話部分を超高速で語る。「旧約聖書」では天地は神が創ったことになっている。第1日目、神は天地を創造し光を与え、昼と夜ができた。2日目に空を創った。3日目に陸と海を創り、陸に草木を生えさせた。4日目、太陽、月、星を創った。5日目に水中で生きる生物と空を飛ぶ生物を創った。6日目、獣と家畜、そして自らをかたどって人間の男女を創り、人間に全ての生物を支配するよう命じた。6日間休まず働いた後の7日目を「安息日」とした。こうして7日間で天地ができた。8日目以降、神様は何してたんだろ。
▶天地創造早かった。さすが神技。しかし案外、雑だった。大地は豊かな水に恵まれ草木繁茂、動物増えて楽園となった。エデンの園だ。土から人間が創られ、鼻に息を吹き込まれ人類誕生。アダムだ。神はアダムに告げた。「楽園にある全ての木の実を食べて良い。ただし善悪を知る木の実だけは決して口にしてはならん」。そして神は眠っているアダムのあばら骨を取って女を創った。イブの誕生だ。ん? 天地創造6日目に神は人間の男女を創っているけど、どこ行った? 気にしちゃダメ。
▶アダムとイブは全裸だった。ある日、ヘビが現われてイブに善悪の木の実を食べるようそそのかす。イブは食べた。「あんたも食べなよ」。イブはアダムに勧めた。アダムも食べた。次の瞬間、2人は知恵を身に着けた。突然羞恥心を覚え「いやん」とイチジクの葉で前を隠した。股間に葉っぱをぶら下げた2人を見た神は「食ったなー!?」と怒った。アダムは答えた。「イブがくれました」。イブは言った。「ヘビが食べろと言いました」。人類初の言い訳2連発。「そなたたちがしたことは神に近づき追い越そうと試みる傲慢で生意気な行為であーる。許さーん。2人とも出ていけー!」と追放ビーム爆裂。アダムとイブは憎しみや悲しみ、妬み、そねみ、労働の苦しみ、そして死んで土に還る宿命を与えられた上にエデンの園を追われた。今我々が暮らすこの世界がその昔、アダムとイブが追放された先の世界だ。彼らが善悪を知ると言う怪しげな木の実を食べなければ我々は今頃、悲しみも苦しみも死もない楽園にいられたはずだ。
▶アダムとイブは追放先でカインとアベルという兄弟をもうけた。兄カインは土を耕し、弟アベルは羊を養った。ある日兄弟は神に貢物を捧げた。カインは大地の恵みを。アベルは子羊を。神はラムが好きだったようで子羊を大層喜んだがカインの野菜には目もくれなかった。神は肉派だった。野菜、美味しいのに。嫉妬に狂ったカインは弟アベルを殺害。怒った神はカインをエデンの園の東側に追放した。これが人類最初の殺人事件と言われる「カインとアベル」の超高速あらすじ。その後カインがどうなったかは分からない。元々は神がアベルまたは肉を偏愛し、カインまたは野菜を軽んじたことが原因なんだけど、神はそれをオール無視してカインを罰した。アダムとイブ、そしてカイン。神が創った人間は最初から意志薄弱で身勝手な粗悪品だった。しかし当欄の読者なら既に知っている。この神、依怙贔屓の達人。事の善悪よりも好き嫌いで判断する。周りに依怙贔屓する上司や先生がいたら諦めよう。なんせ聖書に出て来る唯一神からして依怙贔屓のカタマリ。ってな辺りで次号に続く。チャンネルはそのままだ。
参考:阿刀田高著「旧約聖書を知っていますか」他
週刊ジャーニー No.1347(2024年6月20日)掲載
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