
■ 第205話 ■生意気ヨセフ、売り飛ばされる
▶アブラハム、イサク、ヤコブに続き「旧約聖書」創世記の最重要人物の一人、ヨセフの話に移る。以前語ったようにヤコブには4人の妻がいた。レアとラケルの姉妹とその召使いの女2人の計4人。ヤコブは4人の妻の中でラケルを最も愛した。もともと惚れたのはラケルだけ。姉レアは伯父のラバンに騙されて寝てしまい責任取った人。2人の女召使に至ってはレアとラケルについて来たオマケ。結局4人の妻たちは12人の男の子を産む。しかし最愛のラケルが産んだのはヨセフ(11男)とベニヤミン(12男)の2人だけだった。
▶ヤコブはとりわけヨセフを可愛がった。神と闘って打ち負かし「イスラエル」の名を与えられた人物とは思えないほど露骨なエコ贔屓。ヨセフは賢い子だったが父親からの寵愛を受けて育ったため超生意気で空気も読めない。ある日ヨセフは兄たちを前にして言った。「昨夜面白い夢を見た。畑で麦束を結わえていたら僕の麦束が突然立ち上がったんだ」。兄たちは怪訝そうな表情で「それでどうなった?」と尋ねた。「兄さんたちの麦束が僕の麦束の周りを取り囲んでひれ伏したんだ」。兄たちは顔を真っ赤にして「お前が俺たちの王になるとでも言いたいのか」。ヨセフはツンとした表情で「そうみたい」と答えた。兄たち激怒。後日、今度は父母に対し「昨夜、すごい夢を見たよ」と始めた。父ヤコブが「どんな夢だ?」と聞くとヨセフは「太陽と月、そして十一の星が僕の前にひれ伏すんだ」。ヤコブは「私とラケル母さん、そして兄弟揃ってお前に従うことになるという意味か?」と尋ねた。ヨセフは「そうみたい」と答えた。「のぼせ上がるんじゃない!」と雷一発、砂漠の果てまでブッ飛ばすかと思ったらヤコブ「面白い。この子は大物かもしれん」だって。ヤコブ、アホなの? 他の兄弟たちが面白いはずがない。「あの野郎、いつか痛い目に遭わせてやる」。思い上がりとエコ贔屓が原因でヤコブ一家は一触即発状態となった。

▶ある日、兄たちが羊飼いをしているところにヨセフが父ヤコブの伝言を持ってやって来た。相変わらず上から目線の物言いに兄弟たちの堪忍袋の緒が切れた。「やっちまえ!」の号令の下、兄弟たちは一斉にヨセフに襲い掛かった。ヨセフは服を剥ぎ取られた上に穴の中に突き落とされた。さらに通りかかった隊商に二束三文で売り飛ばされた。兄弟たちはヨセフから剥ぎ取った服にヤギの血を塗りたくって家に戻った。血にまみれたヨセフの服を手にしたヤコブは「ああ、何ということだ。ヨセフは野獣に襲われたに違いない」と言い激しく嗚咽した。ヤコブは最愛の息子が死んだと思い嘆き続けた。まさか自分のエコ贔屓というダメ親父ぶりが引き起こした兄弟間闘争だとは夢にも思わなかった。
▶一方、ヨセフはエジプトに連行され王宮廷仕えの侍従長に買われた。奴隷として買ったが侍従長はヨセフがイケメンなだけでなく大変賢い若者であることに気づいた。試しに高度な仕事をさせてみるとヨセフはそれらをいとも簡単にこなした。侍従長はやがて家の財産の管理を任せるほどにヨセフを信頼した。それもこれも全ては神の恵み。しかし厄介なことにヨセフは侍従長の妻をも魅了した。ある日、侍従長の妻はヨセフの耳元で囁いた。「私の寝室にいらっしゃい」。聖書が昼下がりのテレビドラマになっちゃうの? 心配しながら次号に続く。チャンネルはそのままだ。
参考:阿刀田高著「旧約聖書を知っていますか」他
週刊ジャーニー No.1328(2024年2月8日)掲載
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