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■ 第107話 ■ロンドンのユダヤ人ゲットー

▼ロスチャイルドに戻ろうと思ったけど、偶然とても興味深いニュースに触れてしまった。「英国国教会は過去の誤った反ユダヤ主義に対し、2022年に謝罪する意向」だという。過去っていつよ。1222年だと。へー。いやいやいや800年前? 一体何があった? イングランドに初めてユダヤ人がやってきたのは1066年のノルマン・コンクェスト直後だ。ノルマンディー公ギョーム2世がイングランドに攻め入って勝利しウィリアム1世となった。国を支配するのには莫大な金がいる。征服したとは言え周りは敵だらけ。だから城もいっぱい買ったり建てたりしなくちゃ。そこでウィリアム1世はフランスから富裕なユダヤ人たちを呼び寄せて主に金貸し業をやらせた。ユダヤ人たちは王室や貴族相手に資金を提供しキリスト教で禁じられていた「利息」を荒稼ぎ。やがてイングランド経済に欠かせない存在となった。彼らは専用の居住区内に住まわされた。ゲットーだ。イングランド銀行がある地下鉄バンク駅から西300メートルほどの場所にOld Jewry(オールド・ジューリー)という通りがある。旧ユダヤ人居住区といった意味だ。かつてここにユダヤ人のゲットーやシナゴーグがあった。彼らは王の忠実な従者として様々な特権を与えられて大切に保護される一方、土地の所有を禁じられるなどの制約も多かった。

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▼王室や貴族たちに庇護され、莫大な利益を上げているユダヤ人たちは次第に疎まれ始めた。また、十字軍遠征が始まるとユダヤ人は「キリスト殺し」として憎悪の対象となった。そんな中、ユダヤ人が祝祭で食べるパンの中に、殺したキリスト教徒の少年の血を混ぜて焼いているという噂が飛び交い始めた。血の中傷(blood libel)と呼ばれる。悪質な作り話だったが人々は妄信した。そのため多くのユダヤ人たちが処刑された。1222年、オックスフォード近郊にイングランド各地から司教らが集まり教会会議が開かれた。そこでユダヤ人全員に黄色いバッジを胸に付けさせ、非ユダヤ人との接触を制限することなどが決定された。この教会会議が謝罪の対象だという。

Old Jewry
ゲットーがあったOld Jewryですが、何か?

▼1290年、国王エドワード1世は戦争で膨らんだ借金返済のため増税しようとした。ところが議会は増税を許す代わりにユダヤ人を国外に追放しろと迫った。こうしてユダヤ人は財産を没収された上でイングランドを追われ、フランスなどに渡った。その数、数千人と言われる。1640年代後半、清教徒革命に勝利し護国卿となったオリバー・クロムウェルはウィリアム1世と全く同じ思惑でアムステルダムからユダヤ人を呼び寄せ、金融業に就かせた。この間約350年もの間、イングランドにユダヤ人は存在しなかった。いつしか歴史上の存在となり「冷酷で金に汚くずる賢いユダヤ人」という負の伝説が独り歩きしていく。そのイメージを元にシェークスピアはシャイロックを生み出し、ヴェニスの商人を書き上げた。

▼奇妙なのはこのユダヤ人迫害があった当時、イングランドはカトリック教国であり、英国国教会はまだ誕生していないことだ。英国のユダヤ人団体も謝罪を要求した形跡はない。なんで国教会は800年も前の、それもカトリック教会が犯した過ちを進んで謝罪しようとしているの? もしかしてまた彼らの富が必要な状況になって来ているのかな。コロナか? ウクライナか? 仮想通貨か? ドロドロしたものがうごめいているよう印象操作したところで次号に続くぜ。チャンネルはそのままね。

週刊ジャーニー No.1227(2022年2月17日)掲載

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