ホンネで語る!
英国の医療事情

前編

ちゃんとGP登録してる?

日本とは大きく異なる英国の医療事情について、英国で暮らす女性3名による座談会を決行。GPや病院、医療保険などをテーマに、実体験を熱く語っていただいた(全2回)。
参加者のプロフィール
Aさん(33歳)/在英11年。学生ビザで来英後、就労ビザを取得。ロンドン北部在住。
Bさん(29歳)/在英3年半。ワーホリビザで来英後、就労ビザを取得。ロンドン東部在住。
Cさん(35歳)/在英7年。学生ビザで来英後、就労ビザを取得。ロンドン北部在住。

GP登録は必須事項

― 英国では緊急の場合などを除いて、NHS(国民医療サービス)の病院ですぐに治療を受けることはできません。まずGP(総合診療医)の診療所へ行き、必要があれば病院を紹介してもらうというシステムですが、みなさんは渡英後、すぐにGP登録しましたか?

A
私は最初、学生としてイギリスに来たので、日本で留学生用の保険に入っていました。だから何かあれば日系の病院に駆け込もうと思っていたし(保険でカバーできるので)、大学内に医療センターがあったので、結局はそこで診てもらっていました。

― ではGP登録はしていなかったんですね?

A
そうです。その後のPSW(卒業後に2年間滞在できるビザ)の期間中は、保険の更新もGP登録もしていませんでした。
B
大病しなくてよかったですね。
A
本当ですよね。仕事が決まって、NIナンバー(National Insurance Number)を取った後、大風邪を引いて声が出なくなっちゃって。慌てて近所のGPに行き「私はこの辺に住んでます。NIナンバーはこれです」と申告したら、「まず登録をして」と言われ、書類を渡されて帰されました。仕方なく家で書類を記入してGPに持っていき、登録が完了してから、やっと診察予約が取れるようになったんですけど、予約日がきたときにはもう治ってました(笑)

― 英国の「あるある話」ですね(笑)

C
そのGPは、どうやって見つけたんですか?
A
当時はロンドンの郊外に住んでいて、小さな町だったので「NHS」と書いてある診療所がすぐに見つかったんです。あと、数人のイギリス人とハウス・シェアをしていたから、彼らが助けてくれましたね。
C
フラット・メイトからの情報は大切ですよね! 私も引っ越すたびに、「どこのGPに行ってる?」って聞いてます。
B
私もワーホリのときは日本で保険に入ってきたので、GPの登録もしなかったし、使ったこともなかったですね。でも今は6ヵ月以上滞在する人は、事前にIHS(国民医療サービス料)を払わないといけないので、GP登録をして必要な場合には利用しないと、もったいないと思います。

― ロンドンで就職した後は、GPに行きましたか?

B
ちょっとした持病があるので、NIナンバーを取ってすぐにGP登録をしました。NHSのウェブサイト「Find GP services」で近所のGPを検索して、高評価のところを選びました。
C
みなさん、ちゃんとしていますね。私は働きはじめてからも、ずっとGP登録をしなかったんです。フラット・メイトから良いGPを聞いて「登録しなくちゃ」と思っていたんですけど、書類の記入とか、住所証明のために銀行口座の明細を取りに行くのが面倒で…(苦笑)
AB
えぇー!
A
具合が悪くなったことはないの?
C
風邪を引いても、日本や「BOOTS」で買った市販の薬で治るし…。GPに行くほどの病気にもならなかったので、そのままにしていたら5年くらい経っちゃった。

― もしかして、まだ登録してないのですか?

C
実は去年、指を複雑骨折したんです。緊急事態だし週末だったので、HNS病院の救急科「A&E(Accident and Emergency)」に直接行ったら、GP登録していなかったことが問題になって大変だったので、それを機にやっと登録しました(笑)

「GP登録をしていなかったので診察してもらえなかった」と話すAさん(右)、
「IHSを払っているのだからGPはできるだけ使わないと」とBさん(左)。

「シクシク痛い」はどう表現?

―GPは頻繁に利用していますか?

A
私は突発的に具合が悪くなることが多くて。たとえば以前、突然耳が聞こえなくなって、GPに行きました。でもGPでは詳しい検査ができないので、とりあえず耳の穴を覗き込まれて「中耳炎じゃない?」って。ちょっと心配でしたが、薬の処方と念のために耳鼻科専門の病院も紹介してくれました。でも、数日後にその病院から「状況はどう?」と電話がかかってきた時には薬が効いて治っていたので、病院には行かずにすみましたね。

― ちなみに、そのときはすぐにGPの診察予約が取れたんですね。

A
そのGPは、予約なしで診察してもらえる「ウォークイン(Walk-In)」をやっていたんです。その日はそれほど混んでいなかったので、1時間くらい待合室で待った程度でした。GPによっては「ウォークイン」をやっていなかったり、朝だけ、水曜日だけとか限られていたりします。

― GPを選ぶときは、そういう点も考慮しましたか?

A
いえ、その時はたまたま登録しているGPが「ウォークイン」をやっていたのでラッキーでした。あとは、勤務している会社や自宅の近所にあるGPで、「ウォークイン」をやっている場合は、登録していなくても診察してもらえると聞いたことがあります。
C
へぇーそうなんだ。
B
私のGPは「ウォークイン」はないんですけど、緊急だとインターネットで2日先の予約が取れるんです。普通は1~2週間先なので、何かあった場合でも比較的安心ですね。
A
私は引っ越しが好きなので、これまでGPは7~8ヵ所変わっているんですけど、場所によってシステムや対応が全然違うんですよ。広くて医者の数も多くて、待合室に設置された電光掲示板に「○番の人は▲番の診察屋へ」って表示されるような所もあれば、狭くて待合室と診察室しかなく、看護師さんが患者の名前を読みあげて呼ぶような場所もある。

 

―GPの規模と質の良さは、比例すると思いますか?

A
そんなことはないと思います。不便な点はたくさんありますけど、GPで嫌な体験をしたことは、今のところないですね。

―不便な点とは?

A
イギリスの医療で一番不便だと感じるのは、GPを通さないと専門の医者に診てもらえないこと。難聴になった時も、耳鼻科医にすぐ診察してもらえないのが不安でした。日本なら耳鼻科へ直行できるのに…。
C
確かに。でも、逆の意見を聞いたことがあります。たとえば日本で女性が腹痛になった場合、内科と婦人科のどちらに行けばいいかわからなかったけど、イギリスだとGPで色々な可能性から診断してもらえるから安心だって。
A
なるほど~。原因が明らかじゃない時は、確かに助かるかも。
B
初期段階で自己判断するのは、ちょっと不安かもしれませんね。
A
あとは英語の問題。最初の頃は医療英語がまったくわからなかったので、辞書を持って行きました。ただ辞書で調べても、日本語で書いてある病名の意味がわからなかったりするんですけど(笑)。それと、症状を訴える英語も難しい。ドーンとした痛み、キリキリ痛い、シクシク痛い、ズキズキ痛いとか。自分の語彙力のなさと、イギリス人がどう表現するのかを知らないというのもあって、上手く説明できないもどかしさがあります。頑張って形容詞をたくさん付けて表現するけど、今もちゃんと伝わっているのかどうか…。日本語だとひと言で伝わるのに! って。
B
それ、わかる!

5年もGP登録をしていなかったCさん。

病院で軟禁生活

―GPではなく病院に行ったことはありますか?

A
数年前に、病院のA&Eに駆け込みました。突然体調を崩して、家で胆汁を吐くくらいにもどしてしまって。「GPに行ってる場合じゃない!」と、近所の大きな病院へ行きました。他の患者さんですごく混んでいて、3時間ほど待ったんですけど、不思議なことに、診察してもらう時に限ってホッとするからか、症状が少し治まるんです。医者に「1~10までで、どのくらい体調が悪いか」と聞かれて、正直に「7」と答えたのが失敗でした。その後、さらに4時間も放っておかれて、こういう時は大げさに言わなきゃいけないと学びましたよ。「12」とか(笑)
B
結局、原因は何だったの?
A
それが、「原因がわからないから入院しなきゃいけないけど、ベッドの数が足りない」と言われ、救急車で別の病院に搬送されました。完全個室で隔離されて、4日間入院しましたね。
C
着の身着のまま!?
A
そう! 充電器がないから携帯電話の電源が切れちゃって誰とも連絡がとれないし、「何かのウィルスに感染しているかもしれない」と部屋から一歩も出れなかった。病院のシャワーも浴びれないし、トイレは病室に備え付けられていた「おまる」!
BC
うわぁ、それはキツイ…。
A
1日1回、医者が回診にくるだけで、ずーっと一人ぼっち。しかも大学病院だったから、医者がくるときは学生を15人くらいゾロゾロ引き連れてきて、毎回カルテを読みあげ、医者の診断を学生たちがメモするんです。目が覚めたらベッドのまわりを取り囲まれていたこともあって、恥ずかしかったなぁ…。
B
まさに「公開処刑」状態(笑)
C
食事はどんな感じ?
A
朝と夕方の1日2回。朝はホットサンド、夕方はフィッシュ&チップス、ラザニア、エールパイとか、まるでパブメニューでした。ちなみに、体調不良の原因はストレスだったらしいです。あんなに軟禁されたのに(笑)

大学病院に入院経験のあるAさん。

複雑骨折で手術

C
私は先程ちょっと話したように、指を複雑骨折して病院へ行きました。サリーで乗馬中に落馬してしまい、乗馬クラブのスタッフが教えてくれた総合病院のA&Eに、タクシーで向かいました。3時間ほど待ってレントゲンを撮った結果、後日手術することになって、私の自宅の近くにある病院を調べてくれたり、レントゲン写真をその病院に送ってくれたりと丁寧に対応してくれましたね。
B
いい病院にあたりましたね。
C
問題は次で、紹介されたロンドンの病院に行ったら、GPが未登録だったので「GP登録した後に来て」と追い帰されそうになって…。「手術が必要なのに待てません! 」と診断書を見せて訴え続けたら、溜め息をつきながら「仕方ないわね」としぶしぶ診察手続きをしてくれました。その後、手術日も1週間後を指定され、「1週間も待てません! 痛くて耐えられないんです!」と何度も訴えたら、2日後になった(笑)。言われたままに受け止めていると、イギリスでは損することを実感しました。Aさんの話にもあったように、自分の身を守るためには自己主張は過剰なくらいしないと。
A
そうそう。必ずしも上手くいくとは限らないけど、外国人ということで足元を見る人もいるから、きちんと主張しないと負ける! こともある(笑)
C
面白かったのが、手術後に全身麻酔から目覚めた時。看護師さんに「大丈夫? 気分悪くない?」と尋ねられるかと思いきや、「コーヒーと紅茶どちらがいい? サンドウィッチはたまご、ハム、チーズのどれにする?」と聞かれたこと。今、目覚めたばかりなんだけど、もう食事の話? イギリス人ってすごいな…って(笑)

大腸内視鏡検査を受けたことがあるBさん。

大腸がんの疑い?

B
私は腸管から出血してしまい、インターネットで調べたら大腸がんの恐れがあると知って怖くなり、GPに行きました。検便をしたところ「陽性なので病院に行ったほうがいい」と言われ、紹介された病院で血液検査をしたら、後日「結果がよくないので、もう一度採血してくれ」と連絡がきて。最終的に、大腸内視鏡検査を受けることになったんです。病院から検査の注意事項と下剤が送られてきて、検査日も指定されていたんですけど、日程を変えようと病院に電話しても全然繋がらない。病院内で散々たらいまわしにされて、何度も最初から説明しなくちゃいけないし、本当に疲れました。

―またもや英国の「あるある話」ですね。

B
しかもイギリスでは大腸内視鏡検査は全身麻酔をするのが一般的らしいんですけど、それを知らなかったので一人で行ったら「なんで付き添いがいないんだ!」って怒られました。でも平日の昼間に、すぐ呼び出せる人もいなかったので、麻酔なしで検査して…激痛でしたよ。
C
それ、私もあった! 事前説明では部分麻酔だったのに、当日行ったら「全身麻酔だから帰宅するのに付き添う人が必要」と。「付き添い人が見つかるまで手術しない」と言うから、すごく焦りました。ただ私の場合は週末の朝だったので、近くに住む友人に電話して迎えに来てもらいましたけど。
A
基本的に病院には友達を連れていかないし、いざという時に頼れる人を確保しておくのは大事ですね。平日も大丈夫な人とか、家が近い人とか。
B
そう思います。結局、大腸内視鏡検査の1ヵ月後に手紙が届いて、検査結果が出る日付はさらに2ヵ月先だった(笑)。最初にGPへ行ってから検査結果が出るまで、5ヵ月近く経っていたので、すっかり元気になっていて、どこも悪くなかったです。
A
重大な病気じゃなくてよかった!
B
たぶんストレスだろうって(笑)
A
出たストレス! この国が私たちの身体を悪くするんだ、きっと(笑)

週刊ジャーニー No.1042(2018年7月5日)掲載

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