現在ナショナル・トラストが管理するモンクス・ハウス

英国のモダニズム文学を代表する作家ヴァージニア・ウルフ。イースト・サセックスのルイス郊外にひっそりと佇むヴァージニアと夫レナードの終の棲家へ足を運んだ。

●ホリデー ●取材・執筆・写真/本誌編集部

ガーデンを抜けると、ヴァージニアの執筆のための小屋がある

ウルフ夫妻が1919年に購入し、週末や夏、クリスマスを過ごしたのがこの「モンクス・ハウス」。初めは電気も水道も通っておらず、キッチンは使い物にならない状態だったが、購入後、ふたりは徐々に手を加え、快適な空間を作り上げていった。

ダイニングチェアの背もたれには姉で画家のヴァネッサ・ベルが手掛けた刺繍がほどこされ、優しい印象を与える。

ここでのヴァージニアの一日を追ってみると、こんな具合だ。まずはレナードが朝8時に朝食を作り、ヴァージニアの寝室へと持っていく(ふたりはいつも別々の部屋で寝た)。食後、ヴァージニアは郵便物に目を通すと、前日に執筆したものを手にバスルームへ。浴槽に浸かり、誰かに聞かせるような大きな声で原稿を読み上げ、音を確かめながら推敲した。天気の良い日にはその後、ガーデンを抜けた先にある執筆のための小屋に向かい、午前中をそこで過ごした。

寝室=写真左=にある本棚の一部にはヴァージニアによってカバーがかけられた本が並ぶ=同上右。精神を落ち着けるために、この作業に勤しんだ。
ヴァージニアの遺灰が埋められた場所に据えられた胸像。近くにはレナードも眠っている。

レナードとともに簡単なランチを済ませると、しばらく読書をし、散歩に出かけた。午後4時ごろに紅茶で一息ついたあとは、手紙や日記を書き、夕食後は音楽を聴いたり、読書をしたりしながら、静かな時間を過ごした。
この家を訪れる人は、姉ヴァネッサ、友人のダンカン・グラント、ヴィータ・サックヴィル・ウェストなど親しい人たちに限られた。ヴァージニアは彼らとともにガーデンのデッキチェアに腰を下ろして会話を楽しんだ。ただ彼女の日記にはこうも記してある。「彼らが来るのはとても嬉しいことだわ。でも本当のことを言うと、彼らが去るのはもっと嬉しい」。彼女がいかにプライベートの時間を愛したかが理解できる。
モンクス・ハウスのあちこちに積まれた本、姉ヴァネッサが手掛けたインテリアなどを見ると、彼らの穏やかな生活が目に浮かぶ。と同時に、この爽やかな空間でさえもヴァージニアが精神を病んだという事実に、胸が締め付けられるような思いがした。

執筆のための小屋。入り口にはさまざまな出版社から発行されたヴァージニアの著書「自分だけの部屋」が飾られている。
Travel Information 2019年8月15日現在

Monk's House
Rodmell, Lewes, East Sussex, BN7 3HF
www.nationaltrust.org.uk/monks-house

アクセス
ロンドン・ヴィクトリア駅から電車でルイス駅へ(約1時間)。ルイス駅からはタクシーで10分程度(帰りはタクシーをつかまえるのが難しいので事前にタクシー会社の電話番号などをメモしておくと便利)。もしくは徒歩。

オープン時間
水~金:ハウス 13:00~17:00、ガーデン12:30~17:30

入場料
大人:6.30ポンド、子ども:3.15ポンド
冬期は休館

週刊ジャーニー No.1099(2019年8月15日)掲載