徳川るり子の細腕感情記Ⅱ

何ゆえ、ノッティングヒルでは
カーニバルが開かれますの?


徳川るり子

愛するお父様へ

前文お許しくださいませ。

お父様、いかがお過ごしでしょうか?

早速ではございますが、本日も新たに知りました英国の文化についてご報告したく、筆をとりました。

ロンドン、いえ英国中の人々が集い、夏を謳歌する代表的なイベントのひとつが「ノッティングヒル・カーニバル」です。今年の開催は8月26日(土)~28日(月)の3日間で、バンクホリデーの3連休にあたります。サンバ・スクールに通う隣人の女性が、このカーニバルのパレードにダンサーとして参加する(!)と聞きましたので、英語学校のクラスメイトたちを誘って見に行こうと思っております(布面積の少ない衣装にドキドキしてしまうかもしれません…)。

それにしましても、ある意味、コミュニティ・イベントと言っても過言ではないほどの大変特徴的なお祭りが、一体なぜロンドンに住む人なら誰でも一度は耳にしたことがあるような人気のストリート・イベントになったのでしょうか? 好奇心がむくむくと頭をもたげてまいりましたので、調べてみることにいたしました。

ノッティングヒル・カーニバルの事務局に問い合わせましたところ、広報担当の女性が親切に対応してくださいました。

彼女のお話によりますと、このイベントは1950年代に旧英国領だったカリブ海に浮かぶ西インド諸島、とくにトリニダード島から移民としてやってきた人々が中心となって、1966年に正式に開催されたのだとか。開催当初の目的は、このイベントを通して人々が互いに知り合い、根強く残っていた人種差別を撤廃すること(当時、人種差別が原因で大規模な暴動がノッティングヒルで起きていたそうです)。そして、西インド諸島出身の移民が多く暮らす同地区のイメージアップを図ることだったようです。

最初の頃のカーニバル参加者は、音楽バンド2つとダンサー500人程度だったそうですが、参加者数は年々急激に増え続け、10年後には観客も合わせると15万人を超える事態に…。今では世界中から100万人以上が集まり、人種・国籍を問わず老若男女が集結して、多文化・他民族のロンドンを味わえる「夏の風物詩」になったとのことでした。実は、本場ブラジルで開かれるリオのカーニバルに次ぐ、世界第2位の規模なのだそうですよ!

有名なパレードはもちろん、カリビアン・フードや工芸品のお店がたくさん並び、サンバやカリプソなどのラテン音楽も楽しめるとのこと。友人たちと一緒に、初めてのノッティングヒル・カーニバルを存分に体験しようと思っている次第です(ちなみに、盗難事件が多いので所持品にはよく気をつけるようアドバイスをいただきました)。

それでは今日はこのへんで。日本はちょうどお盆の時期でございますね。お母様にもよろしくお伝えくださいませませ。

かしこ
平成29年8月13日 るり子


とくがわ・るりこ◆ 横浜生まれのお嬢様。名門聖エリザベス女学院卒。元華族出身の26歳。あまりに甘やかされ過ぎたため、きわめてワガママかつ勝気、しかも好奇心(ヤジ馬根性)旺盛。その性格の矯正を画する父君の命により渡英。在英2年11ヵ月。ホームステイをしながら英語学校に通学中。『細腕感情記』(平成6年3月~平成13年1月連載)の筆者・徳川きりこ嬢の姪。

週刊ジャーニー No.997(2017年8月17日)掲載