何ゆえ、トラファルガー広場のクリスマス・ツリーはノルウェーから運ばれますの?
愛するお父様へ
前文お許しくださいませ。
お父様、いかがお過ごしでしょうか?
今年もあっという間に一年が過ぎ、もう師走が目前です。街中でもクリスマス・ツリー用の木の販売が始まり、網に覆われた木が並んでいるのを見ますと、年末が近づきつつあることを実感いたします。今回は、このクリスマス・ツリーに関連する事柄についてご報告したいと思います。
ロンドンで有名なクリスマス・ツリーのひとつといえば、トラファルガー広場に飾られるツリーです。毎年12月第1週の木曜に点灯式が行われるのが慣わしで、広場の隣に建つセント・マーティンズ・イン・ザ・フィールド教会の聖歌隊が賛美歌を歌う中、イルミネーションが点灯されます。わたくしも昨年参列したのですが、特別ゲストが登場してカウントダウンするような華やかなイベントではなく、伝統的で静かな(質素な?)ものであった記憶があります。
このトラファルガー広場に飾られるツリーは、毎年ノルウェーから運ばれてくるそうなのですが、一体なぜノルウェー産のものを使うのでしょう? 気になりましたので、調べてみることにいたしました。
点灯式を主催するロンドン政府によりますと、トラファルガー広場にクリスマス・ツリーが飾られるようになったのは、第二次世界大戦終了後の1947年のこと。大戦時にノルウェーがドイツ軍から侵攻を受けた際、英国は遠征部隊を派遣し、ノルウェーを助けたのだとか。このサポートに対する感謝の気持ちとして、自国に生える「トウヒの木(Norwegian spruce)」をクリスマス・ツリー用に英国へプレゼントしたのが始まりだそうです。
ちなみに、トウヒの木とはモミの木と同じ常緑の針葉樹で、現在はクリスマス・ツリーに使われる木といえばトウヒの木が一般的であるようです。
実は、この贈呈用の木を選ぶにあたり、ノルウェー側ではいくつか決まりごとがあるのだとか。(1)全長20メートル以上(2)樹齢50~60年以上(3)首都オスロ周辺の森林で伐採されたものが必須条件。木々を見回り、その年におけるもっともクリスマス・ツリーにふさわしい木(通称「森の女王(the queen of the forest)」と呼ぶそうです)が、英国へ船で送られてくるとのこと。ツリーに飾られるイルミネーションはとてもシンプルなものですが、これは伝統的なノルウェー・スタイルなのだとおっしゃっていました。
今年の点灯式は12月7日(木)に行われます。1947年以来、ノルウェーからは毎年欠かさずツリーが届けられるそうで、今年はちょうど70周年にあたるとのこと。せっかくですので、今年もまた足を運んでみようと思っている次第です。
それでは今日はこのへんで。風邪など召されないよう、ご自愛くださいね。お母様にもよろしくお伝えくださいませませ。
かしこ
平成29年11月27日 るり子
週刊ジャーニー No.1012(2017年11月30日)掲載