徳川るり子の細腕感情記Ⅱ

何ゆえ、世界陸上は
開催されるようになりましたの?


徳川るり子

愛するお父様へ

前文お許しくださいませ。

お父様、いかがお過ごしでしょうか?

8月4日より、ロンドン・スタジアム(ロンドン・オリンピックの際に建設されたスタジアムのことです)にて「世界陸上競技選手権大会(IAAF World Championships in Athletics)」が開催されます。「世界陸上」といえば、某俳優さんの熱い解説者ぶり(!)を思い出してしまいますけれど、せっかくの貴重な機会ですので、日本人選手のみなさんの活躍をスタジアムで応援したいと思っております。独特のポーズで知られるジャマイカ出身の最速短距離走者、ウサイン・ボルト選手も今大会での現役引退を宣言しておられますし、きっと盛り上がること間違いなし! でしょう。

それにいたしましても、この世界陸上、陸上競技選手にとってはオリンピックと同じくらい重要な大会とのことですが、一体どのようにして始まったのでしょうか? 好奇心がむくむくと頭をもたげてまいりましたので、調べてみることにいたしました。

世界陸上ロンドン大会の事務局に問い合わせましたところ、広報担当の男性が丁寧に対応してくださいました。

彼のお話によりますと、歴史はそれほど古くなく、大会創設のきっかけは1980年に行われたモスクワ・オリンピックだとか。その頃、米国とロシア(当時はソ連)は冷戦中でした。ロシアのアフガニスタン侵攻に抗議し、米大統領はオリンピック出場のボイコットを提唱。北米のほか、西ドイツ、南アフリカ、イラン、シンガポール、日本など、地球の西側にある多くの諸国が出場しなかったそうです。

このボイコット運動は、4年後のロサンゼルス・オリンピックでも繰り広げられたそうですが、五輪での金メダルのために全身全霊をかけてトレーニングに取り組んできた陸上選手や関係者にとっては、やはり納得できるものではありません。以前から「4年に1度のオリンピック以外にも、世界中の選手たちが集まって競える大会をつくろう」という機運があったことも相まって、新たに誕生したのが「世界陸上競技選手権大会」だったとのことでした。

1983年に第1回大会がフィンランドのヘルシンキで開催され、なんと180ヵ国以上が参加したとのこと! 4年に1度、オリンピックの前年に開催することが決められたそうですが、第3回の日本大会以降は、2年に1度、オリンピックの前年と翌年に開かれているとのお話でした。こうした成り立ちからもわかりますように、世界陸上の出場国数は、実はオリンピックよりも多いのだとか…。

日本はこれまで2度ほど世界陸上の主催国となっておりますが、英国での開催は今回が初めてとのこと。広報担当の方も「ロンドン・オリンピックの再来となるよう盛り上げていきたいと思います」とおっしゃっていました。開会がますます待ち遠しくなった次第です。

それでは今日はこのへんで。お母様にもよろしくお伝えくださいませませ。日本の選手のみなさん、がんばれー!

かしこ
平成29年7月31日 るり子


とくがわ・るりこ◆ 横浜生まれのお嬢様。名門聖エリザベス女学院卒。元華族出身の26歳。あまりに甘やかされ過ぎたため、きわめてワガママかつ勝気、しかも好奇心(ヤジ馬根性)旺盛。その性格の矯正を画する父君の命により渡英。在英2年10ヵ月。ホームステイをしながら英語学校に通学中。『細腕感情記』(平成6年3月~平成13年1月連載)の筆者・徳川きりこ嬢の姪。

週刊ジャーニー No.995(2017年8月3日)掲載