徳川るり子の細腕感情記Ⅱ

何ゆえ、英国の公衆トイレは有料なんですの?


徳川るり子

愛するお父様へ

前文お許しくださいませ。

昨日はわたくしの安否を確認するお電話をいただき、ありがとうございました。お父様やお母様の声を久々に耳にすることができまして、大変嬉しく思いました。今回起きたロンドン・ブリッジ周辺の事件に限らず、英国では胸の痛む悲しい事件が頻発しております。予測不可能な出来事ですので、巻き込まれないようにするとお約束することはなかなか難しいですけれど、できるだけ身の回りに気をつけ、緊張感を持って過ごしてまいりたいと思っております。

さて、本日はあまり美しくないお話で申し訳ございませんが(どうぞお許しくださいませ!)、英国の公衆トイレ事情についてご報告したく、筆をとりました。

さて、本日はあまり美しくないお話で申し訳ございませんが(どうぞお許しくださいませ!)、英国の公衆トイレ事情についてご報告したく、筆をとりました。

日本の駅や公園にある公衆トイレは大抵無料ですが、英国の公衆トイレは基本的に有料です。相場は20~50Pで、コインを入れてゲートを通り抜けるタイプと、トイレの入口で「番人」にコインを渡すタイプがあります。また、ロンドンの街中にある公衆トイレはできるだけ目立たないように工夫して設置されており、ハイストリートなどの地下にあることも少なくありません。「Gents」や「Ladies」と書かれた小さなプレートが、地下に下りる階段の入口にポツンと飾られているだけで、存在を知らなければ見過ごしてしまう人が多いと思います(わたくしも最近まで全く気づきませんでした…)。「公衆トイレを隠す」習慣は100年以上前から英国で確立されており、最近は閉鎖された昔の公衆トイレを改装してカフェや住居にするなど(!)、驚くような試みが話題となっております。

それにしても一体なぜ、英国の公衆トイレは有料なのでしょう? 気になりましたので、調べてみることにいたしました。

ウェストミンスター・カウンシル(自治体)に問い合わせましたところ、公衆トイレが有料である理由は大きく分けて2つ挙げられるとのこと。

ひとつは経費の問題で、トイレの清掃代、水道代、トイレットペーパー代などの費用を捻出するため、有料になっているそうです。トイレの「番人」は清掃も行う管理人で、その管理人に使用料を払って利用するという仕組みなのだとか。日本の公衆トイレの場合は、国や市町村といった地元の自治体が税金を使って設置・管理するのが一般的ですので、無料となっているようです。

そして、もうひとつの有料の理由は犯罪抑制のため。英国の公衆トイレは人目につかない場所にあるため、とくに個室が多い女性用トイレなどは、中で犯罪が行われていても気づきにくいとのこと。ホームレスが住みついてしまうことも珍しくないので、有料化したり、管理人を常駐させたりして、それらを防いでいるのだそうです。日本の公衆トイレが無料なのは、それだけ「治安が良い証」とも言えるようでした。

今回もまたひとつ、英国と日本の違いを学んだ次第です。

それでは今日はこのへんで。お母様にもよろしくお伝えくださいませませ。

かしこ
平成29年6月4日 るり子


とくがわ・るりこ◆ 横浜生まれのお嬢様。名門聖エリザベス女学院卒。元華族出身の26歳。あまりに甘やかされ過ぎたため、きわめてワガママかつ勝気、しかも好奇心(ヤジ馬根性)旺盛。その性格の矯正を画する父君の命により渡英。在英2年8ヵ月。ホームステイをしながら英語学校に通学中。『細腕感情記』(平成6年3月~平成13年1月連載)の筆者・徳川きりこ嬢の姪。

 

 
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