何ゆえ、英国人はかように歩くのが速いんですの?
愛するお父様へ
前文お許しくださいませ。
お父様、いかがお過ごしでしょうか? 4連休のイースターが終わってしまいましたが、今週末には「アーリー・メイ・バンクホリデー」、来月末には「スプリング・バンクホリデー」と連続して休暇がやってまいります。今年は例年よりも降雨量が少なく、青空を望める日が続いておりますので、大変嬉しく思っている次第です。日本も間もなくゴールデンウィークに入りますけれど、お父様、お母様はどのように過ごされるご予定でしょうか。
さて本日も、英国と日本の違いにつきまして、ご報告させていただきますね。
渡英当初、カルチャーショックを受けた出来事のひとつが「人々の歩くスピード」です。ロンドンの街中や地下鉄のプラットフォームを歩いておりますと、わたくしを次々と通り越していく人はいても、わたくしがどなたかを追い越すことは、ほとんどなかったように記憶しております。当時は歩幅の差だと思い、「なんと足が長いのでしょう…」と暢気に考えておりましたが、どうやら歩くスピードが速いのではと最近になって思い至りました。エスカレーターやエレベーターの速度も速く、思い起こせば昨年初めに日本へ帰国した際、駅に設置されたエスカレーターの速度があまりにゆっくり感じられ、びっくりしたものでした(いつの間にか英国の生活スピードに慣れてしまっていたのですね)。
実際に英国人は、日本人よりも歩くのが速いのでしょうか? ふと好奇心がわき、調べてみることにいたしました。
どちらに尋ねればいいのか迷いましたが、思い切ってブリティッシュ・カウンシルに問い合わせてみましたところ、数年前に歩行速度に関する都市別の比較調査を行ったそうで、記録が残されているとのこと。その調査結果について、丁寧に教えてくださいました。
調査によると、世界でもっとも人々の歩くスピードが速い都市はシンガポール。そしてコペンハーゲン、マドリッド、広州と続くそうです。トップ10には、ほかにベルリンやニューヨークなどが入っており、ロンドンは12位。英国内ではロンドンが飛びぬけて速く、北アイルランドのベルファスト、スコットランドのエディンバラなども比較的スピードが速いようです。なんと歩行速度は、都市の経済成長率と比例するのだとか…。ちなみに、日本は19位でした。
ブリティッシュ・カウンシルの方のお話では、歩行者がタイミングよくエスカレーターに乗ることができるように、エスカレーターは歩行者の平均歩行速度にあわせて設置されているとのこと。ですので、各国でスピードが若干異なるのだとか。つまり、英国と日本ではエスカレーターの速度が違うのは当然だったのですね。しかも日本では高齢化対策の一環として、エスカレーターやエレベーターの速度軽減が励行されていることも、英国よりスピードが遅く感じられる一因かもしれません。
付け加えますと、日本のエスカレーターの平均速度は分速約30メートル、英国は分速約45メートルだそうです。
それでは今日はこのへんで。お母様にもよろしくお伝えくださいませませ。
かしこ
平成29年4月23日 るり子