2016年4月29日
何ゆえ、「オイスター」・カードと名付けられたんですの?
愛するお父様へ
前文お許しくださいませ。
お父様、お変わりございませんでしょうか?
先週は、パリから遊びにいらした女学院時代の友人と楽しく過ごしました。今日はその折に不思議に思ったこと、いえ、正確に申しますと、友人に尋ねられて答えられなかった事柄について、ご報告することにいたします。
ロンドンの観光スポットを数日かけて案内しようと思い、友人にロンドンのバス・地下鉄用ICカード「オイスター・カード」の購入をすすめました。オイスター・カードはJR東日本が発行しているICカード「Suica」に相当するもので、ロンドン交通局が発行しているプリペイドカードです。ロンドン市内のバス、地下鉄などの公共交通機関を割安で利用することができますので、大変便利です。
ところが、わたくしのアドバイスを聞いた友人は「オイスター・カード?」と不思議そうな表情。「ロンドンは牡蠣(oyster)の名産地でもございませんのに、どうしてオイスター・カードと名付けられたのでしょう?」と、逆に質問を受けたのです! ロンドンに滞在して1年7ヵ月が経ちましたが、恥ずかしながら、わたくしは答えることができませんでした…。確かに、一体なぜ「オイスター」と命名されたのでしょうか? 思い切って、ロンドン交通局に電話をかけてみることにいたしました。
親切に対応してくださった広報担当の女性によりますと、オイスター・カードが導入されたのは13年前の2003年。当時、ロンドンで初めて発行されるICカードということで、「ほかに類を見ないユニークな名称」「記憶に残り、覚えやすく、呼びやすいもの」であることが条件だったそうです。いくつか候補が挙がっていたようですが、時代や流行を感じさせず、かつ『交通』を連想させない斬新な名前を選択した結果、「オイスター」に決まったとおっしゃっていました。
また、後付けになりますけれど…と前置きされたうえで、別の意味として「牡蠣の貝殻の頑丈さから『厳格なセキュリティ』を、真珠を生産することから『価値』を表しているのですよ」とのこと。そして驚いたことに、なんと17世紀頃までテムズ河で牡蠣が養殖されていたのだとか! 良質な牡蠣がとれることで有名だったようですが、18世紀に産業革命期を迎え、貿易が盛んになって多くの船がテムズ河を行き来したり、河岸の工場から排水が流れ込んだりしたため、水の汚染によって牡蠣は絶滅してしまったそうです。
ちなみに、シェイクスピアの作品『ウィンザーの陽気な上房たち(The Merry Wives of Windsor)』の中には「The world is your oyster.(この世はあなたの思うがまま)」というセリフが登場するそうで、「オイスター・カードを使えば、思いのままに自由にロンドンを移動できる」という意味も込められているとのお話でした。たった一枚のICカードですが、その名にはたくさんの由来があったのですね。大変勉強になりました。
それでは今日はこのへんで。お母様にもよろしくお伝えくださいませませ。
かしこ
平成28年4月25日 るり子











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