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徳川るり子の細腕感情記Ⅱ

2016年4月22日

何ゆえ、バッキンガム宮殿の衛兵交替式は華やかに行われるんですの?


徳川るり子

愛するお父様へ

前文お許しくださいませ。

お父様、お変わりございませんでしょうか?

ここのところ、日が本当に長くなり、夜8時近くになっても夕暮れの光が残っているようになったのですよ。夏至までまだ2ヵ月ございますので、ますます夜が来るのが遅くなることでしょう。さて、本日も新たに知りました英国の文化について、ご報告いたしますね。

先週末、英語学校の友人たちと一緒に、バッキンガム宮殿の衛兵交替式(Changing the Guard)を見に行ってまいりました。赤い上着と黒いズボン、黒い毛皮の長帽子というスタイルで有名な英国衛兵隊が、軍楽隊の奏でる音楽に合わせて行進する姿は、「ロンドン観光の目玉」のひとつです。毎年4月~7月までは毎日、それ以外の時期は隔日、午前11時30分から約45分間にわたって行われています。かなり混雑すると聞いておりましたので、早めに現地へ向かったのですが、開始の30分以上前にもかかわらず、すでに多くの人々が! ベスト・ポジションの「ヴィクトリア女王記念碑の前」を確保することはできませんでした…。それにしましても、毎日催行されておりますのに、これほど人気を集める衛兵交替式とは、どのように始まったのでしょうか? 好奇心がわき、調べてみることにいたしました。

衛兵交替式の歴史は古く、なんと350年以上前までさかのぼるようです。清教徒革命により、皇太子のチャールズ(処刑されたチャールズ1世の息子)や有力貴族はヨーロッパ大陸へと亡命。皇太子の身を守るために、王党派の貴族たちは亡命先で護衛隊や騎馬護衛隊を次々と結成しました。そして1660年に王政復古となり、皇太子がイングランド王チャールズ2世として即位することが決まると、チャールズは各護衛隊や騎馬護衛隊を引き連れてロンドンに凱旋したとのこと。彼らが、現在の近衛歩兵隊(The Foot Guards)や王室騎兵隊(The Household Cavalry)の起源であり、この王政復古以来、衛兵交替式はずっと行われているそうです。失礼ながら、観光客向けのアトラクションの一種のように思っておりましたが、伝統ある慣習だったのですね。

衛兵交替式は、バッキンガム宮殿での護衛任務を終え、ウェリントン兵舎へ帰っていく近衛歩兵隊と、ウェリントン兵舎からバッキンガム宮殿へ新たに向かう近衛歩兵隊とのあいだで行われる「引継ぎ式」のようなものです。しかしながら、同時刻に、バッキンガム宮殿の近くにあるセント・ジェームズ宮殿を警護する近衛歩兵隊が交替のために合流したり、ホースガーズ・パレード(王室騎兵練兵場)からハイドパーク兵舎へと戻る騎兵隊が通過したりいたしますので、華やかな行進に見えるようです。

また最近は、軍楽隊も「スター・ウォーズ」といった人気映画のテーマソングやビートルズのヒット曲など、行進曲以外の音楽をサービスで演奏してくれます(わたくしが見学したときは、エルトン・ジョンでした)。衛兵交替式といっても形式ばってばかりいない点が、人気の秘密なのかもしれません。

それでは今日はこのへんで。お母様にもよろしくお伝えくださいませませ。

かしこ
平成28年4月19日 るり子


とくがわ・るりこ◆ 横浜生まれのお嬢様。名門聖エリザベス女学院卒。元華族出身の25歳。あまりに甘やかされ過ぎたため、きわめてワガママかつ勝気、しかも好奇心(ヤジ馬根性)旺盛。その性格の矯正を画する父君の命により渡英。在英1年7ヵ月。ホームステイをしながら英語学校に通学中。『細腕感情記』(平成6年3月~平成13年1月連載)の筆者・徳川きりこ嬢の姪。

 

 

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