徳川るり子の細腕感情記Ⅱ

2016年3月17日

何ゆえ、イースターには
卵とウサギが欠かせませんの?


徳川るり子

愛するお父様へ

前文お許しくださいませ。

お父様、お変わりありませんでしょうか?

英国の春の一大行事「イースター」が、いよいよ来週に迫ってまいりました。スーパーマーケットには、卵やウサギをかたどったイースター限定のチョコレートがずらりと並んでおり、甘いものに目がないわたくしにとっては、少々『目の毒』な光景となっております…。それにしましても、一体なぜイースターのお菓子やグッズなどには、卵やウサギがあしらわれているのでしょう? 常々疑問に思っておりましたので、これを機に思い切って調べてみることにいたしました。

わたくしと同じように不思議に思われる方はやはり少なくないようで、たくさんの資料がございました。それらに目を通してみますと、古来より卵は、長い期間をかけて命を形成し、やがて殻が割れて新しい生命が誕生することから「復活」や「生命」の象徴と考えられてきたようです。イースターは、十字架にかけられたイエス・キリストが『復活』したことを祝う日ですから、復活のシンボルである卵を飾ったり、食べたりするようになったと説明されておりました。

また通常の卵とは異なり、イースターエッグは殻がカラフルに色づけされていたり、綺麗な装飾が施されていたりしますが、これにも深い意味があるとのこと。さかのぼること700年以上前、当時のイングランド国王エドワード1世が、黄金でコーティングしたイースターエッグを、親しい友人や功績のある兵士たちに下賜したそうです。その数は、なんと450個(!)にも及んだとか。その金の卵は、幸運、繁栄、愛などをもたらすとされていたようで、これ以降、英国ではイースターエッグに華やかな装飾を施すようになったそうです。

さて一方、ウサギは多産であることから「繁栄」と「豊壌」の象徴と考えられてきました。さらに、どうやら昔はウサギは雌雄同体と信じられていたようで、清らかな身体のまま繁殖できることから、聖母マリアを象徴する動物ともみなされていたとのこと。ウサギは春に出産のピークを迎えますので、生命誕生のシンボルとしての意味も込めて、イースターのお祝いに欠かせない存在になったそうです。

ちなみに、現在広く知られている「イースターバニー(ウサギ)がイースターエッグを運んでくる」という逸話につきましては、17世紀のドイツで生まれたものではないかとの説が有力だとか。イースターバニーが庭などに隠したイースターエッグを探し出すという、宝探しのようなイベント「イースターエッグ・ハント」が英国に定着したのは、それからさらに200年後の19世紀後半です。卵に比べますと、イースターとウサギの関係は比較的新しいようですね。

ところで、イースター期間は、わたくしが通う英語学校も4連休となります。ご家族に会いに帰国するクラスメイトが大半なのですが、英国に残る予定の数人のお友達と一緒に、ドイツのバイエルン地方を旅行しようと思っております。

それでは今日はこのへんで。お母様にもよろしくお伝えくださいませませ。

かしこ
平成28年3月14日 るり子


とくがわ・るりこ◆ 横浜生まれのお嬢様。名門聖エリザベス女学院卒。元華族出身の25歳。あまりに甘やかされ過ぎたため、きわめてワガママかつ勝気、しかも好奇心(ヤジ馬根性)旺盛。その性格の矯正を画する父君の命により渡英。在英1年半。ホームステイをしながら英語学校に通学中。『細腕感情記』(平成6年3月~平成13年1月連載)の筆者・徳川きりこ嬢の姪。