徳川るり子の細腕感情記Ⅱ
2016年3月1日
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何ゆえ、今年の「母の日」は
3月の第1日曜なんですの?

徳川るり子の細腕感情記Ⅱ
徳川るり子

愛するお父様へ

 前文お許しくださいませ。
 日本では、もうすぐ桃の節句(雛祭り)でございますね。おじい様から贈っていただいた、わたくしの大切な京雛たちは、今年も飾られているのでしょうか…? さて、今回もまた英国と日本の違いについて知り得ましたことを、ご紹介いたしますね。
 最近、街中やデパートの売り場などで「Mothering Sunday」や「Mother's Day」という文字が掲げられているのをしばしば目にいたします。不思議に思い、エドワーズ夫人に尋ねてみますと、なんと今年の英国の「母の日」は3月6日だというのです!(日本では5月の第2日曜が母の日とされております)。一体なぜ、英国と日本では日付が異なるのでしょう? いつもの好奇心が頭をもたげてまいりましたので、調べてみることにいたしました。
 いくつかの資料をあたりましたところ、どうやら母の日は宗教的な行事に由来するようです。英国では、キリスト教徒の断食期間(レント)に入ってから4週目の日曜が母の日と定められています(パンケーキ・デーの起源を調べました折に、レントについてお伝えいたしましたが、覚えておられますか?)。レントやイースターの始まりの日は毎年日付が変わりますので、当然ながら母の日も移動します。3月中旬から4月上旬になることが多いそうですが、今年は3月6日が母の日とのこと。
 起源をたどりますと、英国でキリスト教を布教した古代ローマ人が、イエス・キリストの母であるマリア様を讃える日として「聖母の日」を3月中旬ごろに設定したのが始まりだそうです。かつては母教会(自身が洗礼を受けた教会)を訪れる日だったとのこと。それが次第にイエス・キリストの断食の苦しみを分かち合うレントの期間と結びつき、「母に感謝する日」として英国で定着したのだとか。使用人もこの日は仕事を休み、実家の母親に会いに行きました。その際に、若い女性の使用人は日ごろの感謝を込めて、母親にシムネル・ケーキ(simnel cake)というドライフルーツがたっぷりと入ったケーキを焼いてプレゼントしたそうです。ケーキの上には、マジパンで作られた11個の丸い小さなボールがのせられ、このボールは「最後の晩餐」に集ったイエス・キリストの11人の使徒たちを表すとのこと(イエス・キリストを裏切ったとされる12人目の使徒のユダは、数に入れられていません)。
 現在の母の日には、感謝の気持ちを込めたカードのほか、ラッパズイセン(wild daffodil、別名:Lent lily)を贈ったり(最近はバラを贈られる方も多いようです)、シムネル・ケーキを一緒に食べたりします。
 ちなみに、日本の母の日は米国に倣っているようです。19世紀、ウエストヴァージニア州の小さな町に住んでいたアンナ・ジャーヴィスという女性が、亡くなった母親のためにカーネーションを捧げたことが、その由来だとか。ですので、英国人と母の日について話しておりますと、「米国の母の日とは違って、古い歴史があるのですよ!」と胸を張られる方もおられるのです。
さらに付け加えますと、「父の日」は英国も日本も同じ、6月の第3日曜です。それでは今日はこのへんで。お母様にもよろしくお伝えくださいませませ。

かしこ 
平成28年2月21日 るり子

徳川るり子の細腕感情記Ⅱ

とくがわ・るりこ◆ 横浜生まれのお嬢様。名門聖エリザベス女学院卒。元華族出身の25歳。あまりに甘やかされ過ぎたため、きわめてワガママかつ勝気、しかも好奇心(ヤジ馬根性)旺盛。その性格の矯正を画する父君の命により渡英。在英1年5ヵ月。ホームステイをしながら英語学校に通学中。『細腕感情記』(平成6年3月~平成13年1月連載)の筆者・徳川きりこ嬢の姪。

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