徳川るり子の細腕感情記Ⅱ
2016年2月12日
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何ゆえ、「王室御用達」の商品は
かように沢山ありますの?

徳川るり子の細腕感情記Ⅱ
徳川るり子

愛するお父様へ

 前文お許しくださいませ。
 お父様、女学院の幼稚舎時代からの大親友、ゆり絵さんをおぼえておられますでしょうか? 実は先週、「今、ロンドンに滞在しているのだけれど、もしよければお茶いたしません?」と突然、彼女から電話があったのです! どうやら急にロンドン旅行を思い立ったようで、昔からその猪突猛進な面と大胆さに驚かされてきましたが、相変わらずのようで安心するやら、呆れるやら…でございました。本日は、彼女と久々にお茶を楽しんだ際に、話題にのぼったことについてご報告いたします。
 ゆり絵さんは、ご家族へのお土産として英国王室の関連商品を購入しようと思ったものの、あまりにも種類が多く迷ってしまったそうなのです。王室関連商品は、主に3つに分類できます。①王室メンバーなどをモチーフにした非公式商品 ②王室が販売している公式商品「ロイヤル・コレクション」③王室御用達の商品となります。彼女は、王室御用達品を購入したいようなのですが、紅茶だけでも「トワイング」「フォートナム&メイソン」「パートリッジ」のほか、ヨークシャーティーで知られる「テイラーズ」など、種類・価格ともに豊富。またチョコレートも有名な「シャルボネル・エ・ウォーカー」「プレスタ」以外に、子どもに人気の「キャドバリー」も王室御用達だとか。『王室御用達』というと希少で高級なイメージがありますが、意外なことに、英国では庶民的なお菓子や日用品も御用達として認定されている様子。一体どのような基準で選出されているのか興味をおぼえ、「王室御用達認定協会(Royal Warrant Holders Association)」に電話をかけてみることにいたしました。
 対応してくださった男性によりますと、王室御用達の認定書を「ロイヤル・ワラント(Royal Warrant)」といい、認定書を授与する権限をもっている王族は、エリザベス女王、その夫のエジンバラ公、チャールズ皇太子の3人だそうです。現在は、それぞれ約700店、40店、170店にロイヤル・ワラントを与えているとのこと。以前は、これにダイアナ元妃の認定店も加わっていました。御用達の認定を受けると、店は授与者の紋章(3人の紋章はおのおの異なります)を掲げることができます。
 認定を受けるには、業者側が王室御用達認定協会に自ら申請する必要があるそうです。一定量の商品を最低5年間、王室に納入し続けていることが条件で、今後も継続的に納入できるか、価格の適正さ、品質、経営者の信頼性などを同協会が審査するとのこと。またロイヤル・ワラントには有効期限があり、5年毎に更新されます。品質などが低下したと判断された場合、認定書は剥奪されるのだとか。
 王室の生活全般に関わるため、御用達品は自動車から食品、文房具やトイレットペーパー(!)といった日用雑貨まで広範囲にわたります。エドワーズご夫妻宅のキッチンで、パッケージにロイヤル・ワラントが印刷されている品物を探してみると、ケロッグのシリアル、ハインツのトマトケチャップ、HPソース、フェアリーの食器用洗剤にも紋章が! 王族方の普段の生活が垣間見られるようで、少々親近感が湧きました。
 ちなみに、日本では戦後の1954年に「宮内庁御用達」制度が廃止され、現在は宮内庁が公式に認める御用達商品はないようです。それでは今日はこのへんで。お母様にもよろしくお伝えくださいませませ。

かしこ 
平成28年2月8日 るり子

徳川るり子の細腕感情記Ⅱ

とくがわ・るりこ◆ 横浜生まれのお嬢様。名門聖エリザベス女学院卒。元華族出身の25歳。あまりに甘やかされ過ぎたため、きわめてワガママかつ勝気、しかも好奇心(ヤジ馬根性)旺盛。その性格の矯正を画する父君の命により渡英。在英1年4ヵ月。ホームステイをしながら英語学校に通学中。『細腕感情記』(平成6年3月~平成13年1月連載)の筆者・徳川きりこ嬢の姪。

ruriko