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徳川るり子の細腕感情記Ⅱ
2016年1月29日
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何ゆえ、ひどい交通渋滞をまねく、
ロンドンの道路工事に対して
有効な処置がとられませんの?

徳川るり子の細腕感情記Ⅱ
徳川るり子

愛するお父様へ

 前文お許しくださいませ。
 お父様、お変わりありませんでしょうか? 本日は愚痴ばかりとなってしまうことを、どうぞお許しくださいますようお願いいたします。
 大都市である以上、仕方のないことではございますが、ロンドン中心部のひどい交通渋滞には強い不満を抱かずにはいられません。時間にゆとりのない日は、バスでの移動を避け、あまり好きではないのですが地下鉄を利用するようにしております。そうしませんと、一体いつ目的地に到着するのか時間が読めないのです…。
 「渋滞の最大の原因は道路工事」と長年にわたって非難されながらも、ロンドンでは一向に工事が減りません。道路工事といいましても、道路そのものの改修工事だけでなく、電気・ガス・水道(すべて地中に配管・配線されています)などの公共企業の工事も含まれます。とくに後者のケースでは、まとめて工事していただければまだしも、故意に別々に道路を掘り起こしているとしか思えないほど、似たような場所を何回も「掘っては埋め、掘っては埋め」を繰り返しているのです! また、工事に時間がかかるのも特徴で、夜間や休日には作業していないことがほとんど。これでは工事が早く終わるはずはなく、渋滞をまねくばかりです。なぜ政府は、工事終了の早期化を目指し、有効な処置をとらないのでしょう? 思い切って、交通省(Department for Transport)に電話をかけてみることにしました。
 対応してくださった担当者の方は、電気・ガス・水道の各会社が同時に作業をすることはできないため、工事期間が長引いてしまうこと、またそれぞれが近くに配管・配線されているため、工事の終了後に別の設備に不具合が生じやすいことなどを説明してくださいました。
 さらに、夜間・休日に工事が中断している理由は、ふたつ考えられるそうです。ひとつは周辺住民の安眠・休息を妨げないように、工事が認められていない時間帯が設けられている可能性があること。もうひとつは人件費の問題で、夜間や休日は特別手当の支給が義務づけられているため、出費を抑えたい施工主は平日の昼間にのみ作業をさせる傾向があるようです。
 ところが近年、道路工事によって渋滞が英国にもたらす経済的損失は年間40億ポンド(約6600億円)にも及ぶという調査結果が出たのだとか。交通省では、ロンドン中心部に乗り入れる車両を減らそうと「渋滞税」を導入したり、電気・ガス・水道といった企業工事に対しては、工事期間中の「道路レンタル料」を道路管理者に支払う制度を一部で試行したりするなど、少しでも渋滞を緩和させるべく、努めているとのことでした。
 2012年のロンドン五輪開催前は、今の比ではないほどの大規模な工事が行われていたそうですが、今も、観光客はあまり美しいとはいえない工事現場だらけの光景に、ガッカリしているはずです。歩道が広くなり、路面が張り替えられて綺麗になった場所も多く、「ヒールを傷つけることもなくて大助かり!」である面もあるのですが…。今後も怒りと諦めのため息は止まりそうにございません。
 それでは今日はこのへんで。お母様にもよろしくお伝えくださいませませ。

かしこ 
平成28年1月25日 るり子

徳川るり子の細腕感情記Ⅱ

とくがわ・るりこ◆ 横浜生まれのお嬢様。名門聖エリザベス女学院卒。元華族出身の25歳。あまりに甘やかされ過ぎたため、きわめてワガママかつ勝気、しかも好奇心(ヤジ馬根性)旺盛。その性格の矯正を画する父君の命により渡英。在英1年4ヵ月。ホームステイをしながら英語学校に通学中。『細腕感情記』(平成6年3月~平成13年1月連載)の筆者・徳川きりこ嬢の姪。

ruriko