徳川るり子の細腕感情記Ⅱ
2015年12月23日
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何ゆえ、12月26日は
ボクシング・デーと呼ばれますの?

徳川るり子の細腕感情記Ⅱ
徳川るり子

愛するお父様へ

 前文お許しくださいませ。
 この手紙がお手元に届く頃には、わたくしも、お父様、お母様のもとで休暇を満喫していることでしょう。1年3ヵ月ぶりの日本、山手の屋敷内も久々に模様替えをされたとのことですので、どのような姿でわたくしを出迎えてくれるのかと想像いたしますと胸が躍ります。
 さて、今回も英国のクリスマスに関連する事柄についてご報告したく、筆をとりました。
 英国人にとってクリスマスは、日本でいえばお正月に匹敵する、とても大切な「家族イベント」でございます。
 24日のクリスマス・イヴの夜になると、家族や親戚が次々と集まってまいります。わたくしがホームステイさせていただいておりますエドワーズご夫妻のお宅にも、娘のサラさんご一家がクリスマス休暇を過ごしに来るそうです(ソフィーちゃんとニックくんに会えないことが非常に残念でなりません…)。
 クリスマス当日の朝は、クリスマス・ツリーの下に積まれたプレゼントを開けることから、一日がスタート。英国では、クリスマス・プレゼントは当日まで開けてはいけないことになっているようです。ツリーの下に置いておき、25日までワクワクしながら開封するのを待つのだとか。午後はじっくりと焼き上げたローストターキーを主役に、時間をかけてゆったりクリスマス・ディナーを楽しみます。
  そして、今回ご報告したいのがクリスマスの翌日、12月26日についてです。日本では25日を過ぎますと一気にお正月モードに突入してしまいますが、英国では26日も「ボクシング・デー(Boxing Day)」という祝日になります。多くのショップが一斉にクリスマス・セールを開催いたしますので、「セールの日」として英国では知られておりますが、それにしましても、一体なぜセールの日を「ボクシング・デー」と呼ぶのでしょう? 好奇心がむくむくと頭をもたげてしまいましたので、調べてみることにいたしました。
 ボクシングと言いましても、当然ながらスポーツ競技のことではございません。いくつか文献をあたりましたところ、どうやら「クリスマス・ボックス(Christmas Box)」に由来するようで、1830年代にはすでにボクシング・デーという名で「使用人のための休日」として定着していたとのこと。上流階級の屋敷に勤める執事やメイドといった使用人たちは、クリスマスも働かねばならず、休暇をもらえるのはクリスマスの翌日からでした。屋敷の主人は、使用人たちに労いの意を込めて、贈り物やお金などが入ったクリスマス・ボックスをプレゼントし、家族が待つ家に送り出したそうです。また、クリスマス当日にクリスマス・カードやプレゼントを届けに来た郵便配達員にもクリスマス・ボックスを渡す習慣があり、郵便配達員たちはこれらのボックスを持って26日に家族のもとへ帰りました。こうしたことから、ボクシング・デーという名称が生まれ、使用人のための休日が、やがて国民的な祝日へと変化したようです。26日は、クリスマス商戦で売れ残った商品を安く販売する日というだけでなく、『現代版クリスマス・ボックス・デー』とも言えるのかもしれませんね。
 それでは今日はこのへんで。お父様、お母様、メリー・クリスマス!

かしこ 
平成27年12月20日 るり子

徳川るり子の細腕感情記Ⅱ

とくがわ・るりこ◆ 横浜生まれのお嬢様。名門聖エリザベス女学院卒。元華族出身の25歳。あまりに甘やかされ過ぎたため、きわめてワガママかつ勝気、しかも好奇心(ヤジ馬根性)旺盛。その性格の矯正を画する父君の命により渡英。在英1年3ヵ月。ホームステイをしながら英語学校に通学中。『細腕感情記』(平成6年3月~平成13年1月連載)の筆者・徳川きりこ嬢の姪。

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