徳川るり子の細腕感情記Ⅱ
2015年12月11日
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何ゆえ、1ポンド硬貨の
デザインが変更されますの?

徳川るり子の細腕感情記Ⅱ
徳川るり子

愛するお父様へ

 前文お許しくださいませ。
 ヴィクトリア朝風の可愛らしいイラストが描かれた、クリスマスまでをカウントダウンする「アドベント・カレンダー」を、エドワーズご夫妻からプレゼントしていただきました。「今日のイラストはキャンドルかしら? それとも天使?」と胸を躍らせながらカレンダーの小窓を開けることが、最近の毎朝の楽しみとなっております。
 さて、今日も新たに知り得ました事柄をご報告いたしますね。
 英国に初めて参りました折、日本とは異なる事柄や習慣が多々あり、ときには苛立ちを覚えながらも、それらを大変興味深く思いました。もちろん、今も日々新しい発見をしておりますが、来英当初に驚きました違いのひとつが「硬貨」です。とにかく英国の硬貨は重いのです! 日本のお財布は、これほど重く分厚い硬貨が何枚も入れられることを想定してつくられておりません。そのため、日本から持参した愛用のお財布を傷めてしまい、先日泣く泣く丈夫なものに買い換えました…。
 英国では現在、2ポンド、1ポンド、50ペンス、20ペンス、10ペンス、5ペンス、2ペンス、1ペニーと、8種類の硬貨が流通しています。日本よりも種類が多いため、使いこなせるようになるまで苦労いたしました。とくに重いのが1ポンド硬貨! お財布の中でかさばるので、とても不便です。「デザインが変更されることはないのかしら…」と憂えておりましたら、なんと今年、1ポンド硬貨のデザイン変更が政府より発表されたのです! 新硬貨の導入開始は2017年とのこと。それにしましてもデザインを変更すると、自動販売機や駐車場のメーターなど、さまざまな分野での変更や調整を要し、多額の費用がかかると思われますのに、なぜこのような改革に踏み切ったのでしょう? 思い切って、問い合わせてみました。
 電話をいたしましたのは、英国の造幣局「ロイヤル・ミント」です。対応してくださった広報官の方によりますと、今回のような大幅なデザイン変更は、1997年に行われた50ペンス硬貨の小型化以来とのこと。それ以前にも、1990年に5ペンス、1992年に10ペンス硬貨が小型化されたそうです。
 英国では、1971年に「1ポンド=100ペンス」と計算する「十進法」が施行され、単位がポンドとペンス(ペニーの複数形)に統一されました。これ以降、次々と新硬貨が導入されていき(50ペンス硬貨は十進法施行に先立ち、1969年に導入されています)、1ポンド硬貨が加わったのは1983年、もっとも新しい2ポンド硬貨が流通したのは1997年です。
 約30年ぶりに新1ポンド硬貨の発行を決めたのは、偽造硬貨問題が深刻化しているからとか。長い間デザインが変わっていない丸い1ポンド硬貨は偽造しやすく、毎年200万ポンド相当の偽造硬貨が発見されており、現在流通している1ポンド硬貨の3%(約4500万枚)が偽造硬貨と推計されるそうです。新硬貨は偽造が難しい12角形で、2ポンド硬貨と同様の金と銀の2色使い。ただ大きさは現在のものとほぼ同じとのことで、重さや厚さも変わらないのでしょうか…。安全性の向上を目指すだけでなく、利便性も高めてほしいところです。それでは今日はこのへんで。お母様にもよろしくお伝えくださいませませ。

かしこ 
平成27年12月7日 るり子

徳川るり子の細腕感情記Ⅱ

とくがわ・るりこ◆ 横浜生まれのお嬢様。名門聖エリザベス女学院卒。元華族出身の25歳。あまりに甘やかされ過ぎたため、きわめてワガママかつ勝気、しかも好奇心(ヤジ馬根性)旺盛。その性格の矯正を画する父君の命により渡英。在英1年2ヵ月。ホームステイをしながら英語学校に通学中。『細腕感情記』(平成6年3月~平成13年1月連載)の筆者・徳川きりこ嬢の姪。

ruriko