徳川るり子の細腕感情記Ⅱ
2015年12月8日
pen

何ゆえ、英国の高速道路は
原則として無料なんですの?

徳川るり子の細腕感情記Ⅱ
徳川るり子

愛するお父様へ

 前文お許しくださいませ。
 お父様、お変わりありませんでしょうか?
 先週の週末に、お父様が英国に留学しておられましたときのご学友、ロバーツ様のお宅に遊びに行ってまいりました。ロバーツ様のお宅のあるイースト・サセックスのライは、中世の石畳の歩道が残る可愛らしい小さな町で、とても気に入りました。エドワーズ氏が運転する自動車でライまで送っていただいたのですが、その道中での出来事について、本日はご報告しようと思います。
 ロンドンからライまで自動車で2時間ほどですが、その途中で高速道路を利用いたしました。英国では高速道路のことを「モーターウェイ」と呼び、頭文字をとって「M」で表します。これに数字を組み合わせたものが、高速道路名となります。ちなみに、主要幹線道路は「A」+数字、ローカル道路は「B」+数字で呼ばれるようです。今回利用したのは「M20」で、ドーバー方面へと南下していきました。
 自動車で遠出するのは初めての経験でしたので、エドワーズ氏から「これから高速道路にのりますよ」と聞いて、とても楽しみにしておりました。ところが、いつまで経ちましても料金所が見えてまいりません。思わず、「高速道路はまだなのでしょうか?」と尋ねましたところ、エドワーズ氏は驚いた表情で「今走っているのがM20ですよ」とおっしゃるのです! いつの間に料金所を通ったのでしょう? それとも後払いなのでしょうか…? 不思議に思い、なおも尋ねますと、なんと英国の高速道路は、ごく一部を除き無料とのこと! なぜ英国では高速道路の無料化をなしえているのでしょう。ロンドンに戻りましてから、調べてみることにいたしました。
 資料によりますと、英国では馬車による交通が発達していたため、かなり早い時期から道路が整備されていたようです。
 19世紀末に自動車が登場し、道路交通の主役が馬車から自動車に移ると、1909年には道路の整備費用を自動車税やガソリン税でまかなうことを定めた「開発・道路改良基金法」が制定されました。英国で最初の自動車専用高速道路が開通したのは1958年、現在の「M6」の一部で、ランカシャーを走る「プレストン・バイパス」です。これ以降、高速道路は原則としてすべて無料(特殊なトンネルや橋などは有料になっております)、公共財源により建設されているそうです。
 近年では英国でも高速道路の有料化が計画されているようですが、一般道路の整備水準が高いため、有料にすると高速道路の利用者が減少する可能性が高いことや、すでにガソリン税などを課しているので二重課税となってしまうことから、実現はなかなか難しいようです。
 ちなみに、日本は英国やヨーロッパなどに比べて道路整備が遅れており、本格的に整備が進められたのは戦後です。整備に必要な費用を当時の国の税収ではまかなえなかったため、借入金で道路を建設し、完成後に通行料金を徴収して借入金の返済に充てる方式が採られたとのことです。それでは今日はこのへんで。お母様にもよろしくお伝えくださいませませ。

かしこ 
平成27年12月1日 るり子

徳川るり子の細腕感情記Ⅱ

とくがわ・るりこ◆ 横浜生まれのお嬢様。名門聖エリザベス女学院卒。元華族出身の25歳。あまりに甘やかされ過ぎたため、きわめてワガママかつ勝気、しかも好奇心(ヤジ馬根性)旺盛。その性格の矯正を画する父君の命により渡英。在英1年2ヵ月。ホームステイをしながら英語学校に通学中。『細腕感情記』(平成6年3月~平成13年1月連載)の筆者・徳川きりこ嬢の姪。

ruriko