徳川るり子の細腕感情記Ⅱ

何ゆえ、ブラック・フライデーには 大セールが行われますの?

2015年11月20日

徳川るり子

愛するお父様へ

前文お許しくださいませ。

お父様、先日は素敵な誕生日プレゼントと、心温まるメッセージ・カードをお送りくださいまして、心よりお礼申し上げます。わたくしも25歳を迎え、女性として、ひとりの人間として、さらなる成長と語学力向上を目指さなければ、と決意を新たにした次第です。

さて今回は、最近英国で話題になっております事柄について、報告したいと思います。

わたくしは英語の勉強の一環として、毎朝登校前に新聞を読むようにしているのですが、先日ふと目にとまったのが「ブラック・フライデー」に関する記事です。昨年、大手スーパーマーケットのセール品を求めて人々がお店に押しかけ、暴動さながらの様相で商品を奪い合う姿が大きく報道されたことを思い出しました。日本でも新年に「福袋争奪」の模様が報道されますが、このように暴力に訴えての取り合いや店内破壊行為にまで発展することはございません。負傷者はもちろん、逮捕者が出るほどの騒動をニュースで目にし、エドワーズご夫妻とともに恐怖で震え上がりましたことが、いまだ記憶に新しいところです。

某新聞記事には、今年のブラック・フライデーが11月27日であることと、ブラック・フライデーにちなんだ特別セールを実施するスーパーマーケットやデパートの一覧などが掲載されておりました。今年は警備を強化するそうですが、一体どうなることかと不安が拭えません…。そもそも、このブラック・フライデーとは何なのでしょう? 調べてみることにいたしました。

いくつかの資料をあたりましたところ、ブラック・フライデーとは、11月の第4木曜日に米国で行われる「感謝祭(サンクス・ギビング・デー)」の翌日に開催される大セールのことを指すようです。米国では神の恵みに感謝し、秋の収穫を祝う感謝祭は大切な家族行事のひとつ。一家で食卓を囲んで七面鳥を食べるのが慣わしとか。そして、その翌日の金曜は「冬の始まり」として、一斉にクリスマス・セールがスタートするそうです。この日はどこの商店も「黒字」になる傾向があることから、「ブラック・フライデー」と呼ばれるようになったとのこと。米国では一般的なこの習慣が英国に上陸したのはここ数年で、とくに昨年、米国系のスーパーマーケット「ASDA」が大々的に宣伝したことにより、広く認知されました。耳慣れない大セールに浮き足立った英国人が殺到した結果、激しい争奪戦を繰り広げることになってしまったのでしょう。ちなみに「ASDA」は、今年のブラック・フライデー・セールは行わないことを発表しています。

さらにつけ加えますと、近年では感謝祭の翌週の月曜日を「サイバー・マンデー」と呼び、オンライン・ショッピングのクリスマス・セールが始まる日として、米国で周知されてきているようです。IT化の発達によって、昨年の米国内のセール売上げは、ついにブラック・フライデーを追い抜いたとか…。

今年の英国のブラック・フライデーが、事故や事件に発展せず、みなさまが秩序を守ってお買い物なさることを願うばかりでございます。それでは今日はこのへんで。お母様にもよろしくお伝えくださいませませ。

かしこ
平成27年11月17日 るり子



とくがわ・るりこ◆ 横浜生まれのお嬢様。名門聖エリザベス女学院卒。元華族出身の27歳。あまりに甘やかされ過ぎたため、きわめてワガママかつ勝気、しかも好奇心(ヤジ馬根性)旺盛。その性格の矯正を画する父君の命により渡英。在英3年2ヵ月。ホームステイをしながら英語学校に通学中。『細腕感情記』(平成6年3月~平成13年1月連載)の筆者・徳川きりこ嬢の姪。