徳川るり子の細腕感情記Ⅱ
2015年10月23日
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何ゆえ、ハロウィーンでは
仮装いたしますの?

徳川るり子の細腕感情記Ⅱ
徳川るり子

愛するお父様へ

 前文お許しくださいませ。
 今週末には冬時間に切り替わり、いよいよ英国の長くて暗い冬が始まります。今朝も起きてカーテンを開けましたら、空はどんよりと曇り寂しげな様相…。雲が低く垂れ込め、冬がもうすぐそこまで近づきつつあることを実感いたしました。
 さて、10月31日は「ハロウィーン」です。仮装した子どもたちが「Trick or treat!(お菓子をくれないと、いたずらするぞ!)」と言いながら、家を訪ねてまわる欧米の子どもの行事として知られておりますが、最近は日本でも大人限定の仮装パーティーやイベントが盛んに開かれるなど、ハロウィーン・ブームが巻き起こっているようでございますね。恥ずかしながらわたくしは、ハロウィーンは「米国発祥の行事」という印象を持っておりました。ところが先日、エドワーズご夫妻からその起源は英国やアイルランドを含むブリテン諸島であることをうかがい、大変驚きました。そもそもハロウィーンとは、どのような行事なのでしょう。なぜ仮装するのでしょうか? 調べてみることにいたしました。
 いくつかの文献にあたりましたところ、ハロウィーンの起源は2000年以上前にさかのぼり、アイルランドや英国北部に住んでいた古代ケルト人によるドルイド教の収穫祭「サウェン祭」を由来とするようです。ケルト人の暦は、11月1日~10月31日で1年とされていました。大晦日の10月31日には死者の霊(魂)が家族の元へ戻り、新年の始まりである11月1日には霊のいる場所に災厄を招く神々が現れると信じられていたとのこと。そのため10月31日にかがり火を焚き、霊が家に入らないようにしたのです。ハロウィーンは『日本のお盆』と説明されることも多々あるようですが、ご先祖様の霊を歓迎し手厚く供養するお盆に対し、ドルイド教の教義ではこの世に戻ってくる霊は「悪霊」と見なされておりましたので、迎え火や送り火ではなく、霊を追い払うためのかがり火を焚いたそうです。
 やがて長い時を経て、古代ケルトと古代ローマの文化、キリスト教の3つが融合した結果、すべての聖人に感謝をささげるキリスト教の祭日「諸聖人の日(All Hallow's Day)」(11月1日)が8世紀に誕生。その前日に、悪霊を追い出す祭りとして「諸聖人の前夜祭(All Hallows' EveまたはAll Hallows' Evening)」が行われるようになり、これが現在のハロウィーン(Halloween)という呼び名に変化しました。
 ちなみに、仮装した子どもたちが各家を訪ねる風習については、諸説あるものの、悪霊から身を隠すために悪霊に扮して町を歩いたことを発祥とする説が有力のようです。とくに8世紀以降は、翌日に行われる「諸聖人の日」の祭事で捧げる食物などを、変装して各家から集めてまわったとか。18~19世紀に多くのアイルランド人が新天地を求めて米国に移住したことにより、米国にハロウィーンが伝わりますが、時とともに宗教的な意味合いは薄れ、変装してお菓子をもらう風習だけが「民間行事」として発展したようです。
 英国におけるハロウィーンが米国ほど盛り上がりを見せないのは、こうした背景があるからなのですね。それでは今日はこのへんで。お母様にもよろしくお伝えくださいませ。

かしこ 
平成27年10月19日 るり子

徳川るり子の細腕感情記Ⅱ

とくがわ・るりこ◆ 横浜生まれのお嬢様。名門聖エリザベス女学院卒。元華族出身の24歳。あまりに甘やかされ過ぎたため、きわめてワガママかつ勝気、しかも好奇心(ヤジ馬根性)旺盛。その性格の矯正を画する父君の命により渡英。在英1年1ヵ月。ホームステイをしながら英語学校に通学中。『細腕感情記』(平成6年3月~平成13年1月連載)の筆者・徳川きりこ嬢の姪。

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