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徳川るり子の細腕感情記Ⅱ

何ゆえ、火山のない英国で 温泉が湧きますの?

2015年9月25日

徳川るり子

愛するお父様へ

前文お許しくださいませ。

先週末、わたくしが大好きな作家のひとり、ジェーン・オースティンと縁の深い街、バースへ行ってまいりました。小説『ノーサンガー・アビー』や『説得』の舞台となった、優雅なジョージ王朝時代の名残をとどめる街並みを散策したり、ジェーンの生涯を知ることができる「ジェーン・オースティン・センター」、かつて一家が暮らした家々(転々と引っ越されていたようで、5ヵ所もあるのです)などをめぐったりと、『文学散歩』を満喫いたしました。

さて、バースといえば、その街の名が「お風呂(Bath)」の語源となったとも伝えられている通り、古代ローマ時代の公衆浴場跡が観光スポットとして有名です。およそ1950年前、ブリテン島に侵攻してきたローマ人が湧き出ている天然温泉を発見し、女神からの恵みに感謝して、この地に神殿や浴場を建設しました。現在も当時と同じ場所から、46度の温水が毎日湧き出し続けています。それにしても、一体なぜ火山のない英国で温泉が湧くのでしょう? 疑問に思い、調べてみることにいたしました。

資料によりますと、温泉には火山地帯やその周辺で湧く「火山性温泉」と、火山のない地域で湧く「非火山性温泉」の2種類があるとのこと。火山性温泉は、地中の断層などの割れ目に溜まった地下水や雨水が、火山の地下数キロ~数十キロメートルにあるマグマから放出される高圧・高温ガスや熱水と接触するなどし、高温の温泉水となって地表へ噴き出すことで生まれます。

一方、非火山性温泉は、地熱を熱源として温められた地下水や雨水が、断層などに沿って地表まで噴き出してくることによって誕生します。地中の温度は深度が深くなるほど上がり、一般的に100メートルごとに約3度ずつ上昇するそうですが、こうした深層地下水は地表に到達するまでに温度が低下していくので、40度以上の高温泉が湧出する例はそれほど多くないようでした。

バースの場合は、後者の非火山性温泉にあたります。バースから30マイルほど南下したところに広がるメンディップ・ヒルズ(Mendip Hills)の降水が水源ではないかと考えられていますが、現在も確証を得るまでにはいたっておりません。地下3000~4000メートル付近で地熱により温められた深層地下水は、ペニークイック断層を通じて地表に噴出し、1日に117万リットルも湧き出しているそうです。

ちなみに、英国にはバースのほかにも、ハロゲート、チェルトナム、レミントンなど、かつて「スパ・タウン」(高級温泉保養地)として栄えた街があります。ただ、どの温泉も発見されたのは17~19世紀で、2000年におよぶ歴史があり、今なお豊富な水量を誇るのはバースだけだそうです。

なにやら、日本の温泉がとても恋しくなってしまいました…。年末に一時帰国する際には、おばあ様のお好きな伊豆の温泉で、家族そろってのんびりと過ごせましたら嬉しく存じます。それでは今日はこのへんで。お母様にもよろしくお伝えくださいませませ。

かしこ
平成27年9月21日 るり子



とくがわ・るりこ◆ 横浜生まれのお嬢様。名門聖エリザベス女学院卒。元華族出身の27歳。あまりに甘やかされ過ぎたため、きわめてワガママかつ勝気、しかも好奇心(ヤジ馬根性)旺盛。その性格の矯正を画する父君の命により渡英。在英3年2ヵ月。ホームステイをしながら英語学校に通学中。『細腕感情記』(平成6年3月~平成13年1月連載)の筆者・徳川きりこ嬢の姪。