徳川るり子の細腕感情記Ⅱ
2015年8月7日
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何ゆえ、プレミア・リーグは

有料放送でしか見られませんの?

徳川るり子の細腕感情記Ⅱ
徳川るり子

愛するお父様へ

 前文お許しくださいませ。
 お父様、サッカーの岡崎慎司選手がイングランド・プレミア・リーグのレスター・シティに移籍されたニュースをお聞きになられましたでしょうか? 先日、岡崎選手の大ファンだという日本人の友人が目を輝かせて、今週末から始まりますシーズンが楽しみで仕方ないとおっしゃっていました。
 サッカーはわたくしの得意分野ではございませんが、せっかくサッカーの盛んな英国におりますのでテレビ中継でも見てみようと思いたちました。帰宅後エドワーズご夫妻にそのことを話してみましたところ、「我が家のテレビではプレミア・リーグは映りませんよ」とおっしゃるのです。そう聞いて、以前、放映権について調べたことをふと思い出しました。英国でのプレミア・リーグ生中継は、有料放送のBTスポーツあるいはスカイでのみとなり、一般のテレビではハイライトしか放送されません。ですが、サッカーは英国の国民的スポーツのはず。日本における野球や大相撲のような存在だとわたくしは認識しております。もし仮にプロ野球中継が有料放送のみになってしまったら、悲しむファンも大勢おられるに違いありません。
 どうして普通のテレビで視聴できないのでしょう。調べてみることにいたしました。
 英国で初めてサッカーの生中継が行われたのは1960年。この頃より、BBCと民放のITVが放映権を購入し、大きな試合や、ハイライトが放送されるようになりました。試合をハイライトで紹介する人気番組「マッチ・オブ・ザ・デイ」が始まったのも1964年とのこと。
 一方、1980年代後半になるとサッカー界に異変が生じます。スタジアム周辺で一部のファンが暴徒化する問題が深刻になったのです。来場者数が減り、収益も低下、優秀な選手が国外に移籍するという悪循環が生まれてしまいました。
 実は、この頃はまだプレミア・リーグは存在せず、トップチームのリーグ戦といえば、サッカー協会(Football Association)が主催する「ファースト・ディビジョン」でした。前述のようにサッカー界は不況でしたので、より高い放映権収入を目指して、サッカー協会に加盟する上位のチームが独自のリーグを作ることで合意。これにより1992年、プレミア・リーグが誕生します。そして同リーグの求める額を提示したのが、衛星放送のスカイだったというわけです。
 いざ放送が始まり、有料放送だけでしか見られないなんて! と国民からの不満が上がったのでは? と思いますが、スカイのおかげで、生中継される試合数が増えたことから、一概に残念な決定だったとは言いえないようです。
 今年2月のニュースによりますと、2016年から3年間の国内での放映権は51億ポンドに達したとのこと。前回の契約が30億ポンドでしたので、1・7倍の増加です(高騰しすぎるとの批判の声も上がっているようです)。プレミア・リーグではスタジアムでの観戦チケット代の高さも指摘されており、放映権が上がった分、観戦チケットがもっと安くなれば…と望む声も聞かれます。
 リーグ発展と、ファン・サービスをいかに両立させるか、難しい問題といえそうです。それでは今日はこのへんで。お母様にもよろしくお伝えくださいませませ。

 

 

かしこ 
平成27年8月3日 るり子

徳川るり子の細腕感情記Ⅱ

とくがわ・るりこ◆ 横浜生まれのお嬢様。名門聖エリザベス女学院卒。元華族出身の24歳。あまりに甘やかされ過ぎたため、きわめてワガママかつ勝気、しかも好奇心(ヤジ馬根性)旺盛。その性格の矯正を画する父君の命により渡英。在英10ヵ月。ホームステイをしながら英語学校に通学中。『細腕感情記』(平成6年3月~平成13年1月連載)の筆者・徳川きりこ嬢の姪。

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