徳川るり子の細腕感情記Ⅱ
2015年7月24日
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何ゆえ、ストライキが頻発いたしますの?

徳川るり子の細腕感情記Ⅱ
徳川るり子

愛するお父様へ

 前文お許しくださいませ。
 お父様、お変わりありませんでしょうか? こちらは本当にいい季節になってまいりました。先週の日曜日も小さなガーデン・パーティーにお呼ばれして、とても楽しく過ごしたところです。
 さて、そのパーティーで話題に上った「ストライキ」について今日はご報告したいと思います。
 2週間前、ロンドンでは地下鉄の大規模なストライキが行われました。一日中、すべての路線が完全に止まりましたのは実に13年ぶりとのこと。通勤・通学で普段から地下鉄を利用している人は、徒歩あるいは自転車、バスなどを使ってやり過ごされたものの、パーティーに参加されていた方々からはたくさんの不満や苦労話が聞かれました。なかには「久々にオフィスまで1時間歩いて良い運動になった」と話す、のんびりとした女性もおられましたが、多くの方にとって多大なストレスになったことは間違いないようです(お父様もご存知のようにわたくしは幸い便利な場所に住んでおり、バスが少し渋滞しただけで特に支障はございませんでしたのでご安心くださいませ)。
 ところでこのストライキ、何のために、そしてどのように実施されるのでしょう。興味がわきましたので調べてみることにいたしました。
 英国では、地下鉄などの公共交通機関だけでなく、学校の先生など公務員にもその権利が認められています。待遇改善を求めて実施されるケースが多く、消防士もストライキを行うことがあり、火災が発生した場合は軍隊が出動し、消火にあたることが決まっています(これを聞いて、「まさか警察も!?」と不安がよぎりましたが、警察は禁止されているとのこと、ホッと胸をなでおろしました)。
 今回の事の発端は、9月12日から一部の路線で始まります地下鉄の24時間運行にございます。夜間運行をめぐり、労働組合とロンドン地下鉄による話し合いが5ヵ月にわたり行われてきましたが、安全面への懸念、労働条件の面での意見が食い違い、最終手段としてこの度のストが決行されたとのこと。現在もまだ解決策は見えていないようですので、しばらく両者の攻防が続くことが見込まれます。
 一方で、ストライキが頻繁に行われますと、国の経済にも影響が及ぶことは容易に想像がつきます。そうした状況を踏まえ、今年の5月に誕生した保守党政権は、スト権を制限する法律を設けることを発表しました。その内容は、実施を決めるにあたり、労働組合で投票を行い、投票率が50%を超えた上で、賛成が40%を上回った場合のみ実施を認めるというものです。これを基準に、保守―自民の前連立政権下で行われた102件のストライキ投票を検証してみますと、3分の2が無効となる計算になるのだそうです。
 もしこの法案が可決されれば、先日のストで苦労を強いられた方々のストレスも減るのかもしれませんが、満を持してストを敢行しようとなさる方々の気持ちがおさまるとは思えません。問題の根本解決に至らないのでは? とわたくしは感じております。お父様はどうお考えになりますか。
 8月5日は再度、地下鉄のストライキが予定されています。それ以前に両者の話し合いがまとまることが一番ですね。それでは今日はこのへんで。お母様にもよろしくお伝えくださいませませ。

かしこ 
平成27年7月20日 るり子

徳川るり子の細腕感情記Ⅱ

とくがわ・るりこ◆ 横浜生まれのお嬢様。名門聖エリザベス女学院卒。元華族出身の24歳。あまりに甘やかされ過ぎたため、きわめてワガママかつ勝気、しかも好奇心(ヤジ馬根性)旺盛。その性格の矯正を画する父君の命により渡英。在英10ヵ月。ホームステイをしながら英語学校に通学中。『細腕感情記』(平成6年3月~平成13年1月連載)の筆者・徳川きりこ嬢の姪。

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