何ゆえ、ロンドンの小路の悪臭は改善されませんの?
愛するお父様へ
前文お許しくださいませ。
お父様、お変わりありませんでしょうか? 日本は猛暑日を記録したとうかがいましたが、さぞ過ごしづらい日々をお送りのことでございましょう。くれぐれも暑気負けなどなさいませんように、ご自愛くださいませ。
さて、本日はできれば爽やかなお話を、と思ったのですが、実はぜひお聞きいただきたいことがございまして…耳に心地よい内容ではありませんので、眉をおひそめになるかもしれませんが、今回はどうぞご容赦くださいませね。
ロンドンに参りましてから、早や10ヵ月。怒りを覚えることも少なくはございませんが、大抵のことは我慢できる範囲でした。ただ、どうしても耐えられないことがひとつございます。それは、ロンドンの繁華街の小路などにこびりついております悪臭です! 原因は、言葉にするのが大変はばかられるのですけれど…殿方の(ご婦人方のものが皆無とは言い切れないかもしれませんが)路上での排泄行為(液体の方)なのです…!
暑さから、ビールなどをたくさん召し上がられるのでしょうか、とくにここ最近の路上の悪臭は甚だしく、ついにたまりかねて、ロンドン最大の繁華街ソーホーを管轄下におくウェストミンスター・カウンシルに抗議の電話をかけました。
対応して下さった清掃部の方によりますと、英国では路上での排泄行為は違法ではなく、警官が現場を見つけたとしても厳重注意するにとどまるとのこと。また、悪質な常習犯としては、酔った方はもちろんですが、なんとタクシーの運転手もその筆頭にあがるのだそうです。
馬車が主な交通機関だった時代、御者は馬車の後輪の影で排泄行為を行うことが許されていたようで(!)、路上排泄が取り締まりの対象にならないのは、その名残かもしれないとおっしゃっていました。
さらに付け加えますと、ひと昔前までは、紳士が尿意(失礼!)を催してしまった場合、「Man in distress!」(「この者、苦境の境地にあり!」と訳せばよろしいでしょうか)と大声で3度叫んで周囲に知らしめた後ならば、路上で排泄行為を行ってもよかったそうです。ご婦人の目に触れるようなことがなければ、こうしたことは大目に見られていたわけです。
その「悪習慣」が残っているからなのでしょうか…この悪臭は。清掃部の方は、「こうした苦情には迅速に対処するので、もし耐えられない悪臭を発する小路を見つけたら、遠慮なくお知らせ下さい」とおっしゃいましたが、たとえすぐに清掃してくださったとしても、悪臭が改善されるのはそのとき限り。また、心ない方々が同じ場所で排泄行為を行うのでございましょう。
愚痴ばかりになってしまい、本当に申し訳ございません。ですが、お話を聞いていただいて、少しは気が晴れた思いがいたします。それでは今日はこのへんで。もうすぐお母様の誕生日でございますね。贈り物をどうぞ楽しみに、とお伝えくださいませませ。
かしこ
平成27年7月13日 るり子



















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