徳川るり子の細腕感情記Ⅱ
2015年6月12日
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何ゆえ、ロンドンでは

防犯アラームの誤作動が多いんですの?

徳川るり子の細腕感情記Ⅱ
徳川るり子

愛するお父様へ

 前文お許しくださいませ。
 ロンドンもようやく初夏と呼べそうな気候になってまいりました。外出するのがますます楽しく感じられますが、本業も決して忘れてはおりません。お父様の言いつけを胸に、日々、勉学に励んでおります。ところが先日、ちょっとした「事件」がございました。自室で英語の勉強をしておりましたところ、斜め向かいの家の防犯アラーム(警報機)が鳴り始めて延々と鳴り止まず、勉強妨害もいいところ。パトカーが来たものの、結局は誤作動だったのです。
 これに限らず、英国では防犯アラームが鳴り止まないケースが珍しくなく、通りを歩いていても耳を押さえなければ通過できないことも一度や二度ではございません。そこで今回、常々気になっておりました防犯アラームについて調べましたので、ご報告したいと思います。
 ここ英国は空き巣狙いが極めて多いそうで、オフィスや店舗はもちろん、一般住居でも防犯アラームが広く普及しています。このおかげで窃盗被害が多少なりとも抑えられているようですから、この国では防犯アラームは必要かつ大切なものと言えるでしょう。
 ただ、防犯アラームの誤作動も多く、それに警察が振り回されることが問題になっているという話も聞きました。2ヵ月ほど前に、ロンドンの貴金属専門店が立ち並ぶハットン・ガーデンで、コンクリートでできた地下金庫の壁に大きな穴が開けられ、強盗団が押し入った事件がございました。その際もアラームが鳴ったようなのですが、この日より以前に防犯アラームの誤作動が何度かあったためか、警察は出動しなかったとのこと。誤作動が多く、万が一何か起きた場合に役に立たないのでは意味がございません。
 でもどうして誤作動が多いのでしょう。また、アラームを聞きつけたとき、警察に通報した方がいいのかためらわれてしまいますが、どう対処すればいいのでしょう。思い切って、ロンドンの警視庁にあたるメトロポリタン・ポリスに問い合わせてみました。
 広報部の担当の方が親切で、さまざまなお話を伺うことができました。英国の防犯アラームの歴史は長く、アラームを作るメーカー、アラームが作動した際に24時間体制で対処を代行するモニタリング会社、アラームのメンテナンス会社など分業がなされているとのこと。
 アラームを取り付けてもモニタリング会社と契約しないケースも少なくなく、前述のように無人の家やオフィスで鳴りっ放しという事態がしばしば起こるのはこのためのようです。
 肝心の、誤作動の理由については、近年作動したアラームのうち、電池が古くなるなどの機器の不具合、利用者のうっかりミスによって起こった誤作動が実に92パーセント余りを占めるという事実もわかりました。単に取り付けるだけでなく、モニタリングの会社と契約したり、きちんとメンテナンスを行ったりするのも大事なようです。
 もしもアラームを聞きつけたとき、「明らかに」不審に思った場合は緊急時の番号(英国の警察は「999」番です)、誤作動と思われる場合は、通常の番号「101」に電話をかけるとよいと言われました。それでは今日はこのへんで。お母様にもよろしくお伝えくださいませませ。

かしこ 
平成27年6月8日 るり子

徳川るり子の細腕感情記Ⅱ

とくがわ・るりこ◆ 横浜生まれのお嬢様。名門聖エリザベス女学院卒。元華族出身の24歳。あまりに甘やかされ過ぎたため、きわめてワガママかつ勝気、しかも好奇心(ヤジ馬根性)旺盛。その性格の矯正を画する父君の命により渡英。在英8ヵ月。ホームステイをしながら英語学校に通学中。『細腕感情記』(平成6年3月~平成13年1月連載)の筆者・徳川きりこ嬢の姪。

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