徳川るり子の細腕感情記Ⅱ
2015年4月24日
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何ゆえ、ゴミを分別する
       必要がありませんの?

徳川るり子の細腕感情記Ⅱ
徳川るり子

愛するお父様へ

 前文お許しくださいませ。
 お父様お変わりありませんでしょうか? 今日は常々疑問に思っておりました事柄について調べましたので、それをご報告したく筆をとりました。
 英国に参りまして驚いたことのひとつが、「ゴミの捨て方」です。ロンドンでは、燃えるゴミも燃えないゴミも一緒にゴミ袋に入れるのが、当たり前なのです! ここ数年のリサイクル志向の高まりによって、リサイクル専用のゴミ箱が登場しはじめましたが、こうしたゴミの分別の指導は日本ほど徹底していません。ですので、生ゴミ、紙クズ、プラスチック、空き缶、空きビンなどを分別せずに、とにかくまとめてビニール袋(色なども決められておりません)に入れてゴミ置き場に出せばよいといった様相なのです。なぜロンドンではゴミを分別する必要がないのでしょうか? ゴミ処理問題が常に大きな課題となっているはずのウェストミンスター・カウンシル(いわゆる区役所にあたります)に尋ねてみることにいたしました。
 清掃部の方によりますと、ウェストミンスター地区に限らず、ロンドンで生じるゴミのほとんどはそのまま埋め立てられているとのこと。その工程についても、丁寧にお話くださいました。
 ロンドン各地から回収されたゴミはヴィクトリア駅近くのゴミ移送センターに集められた後、エセックスにあるレイナム(Rainham)埋立地へとトラックで移送されるそうです。この埋立地は1907年からゴミが捨てられはじめたということですから、100年以上の歴史を誇ります。埋立地に運び込まれたゴミは、一般ゴミとリサイクル・ゴミに分けられ、一般ゴミは強力な圧縮機に入れられて体積を減らされます。そしてトラックで埋め立て現場まで運ばれ、土とともに埋められるという仕組みです。
 一方、リサイクル・ゴミは埋立地の敷地内にあるリサイクル工場に移されます。機械によって袋を破かれ、人の手と機械の力を介して紙類、プラスチック類、缶類など種類ごとに分別されて、やがて新たな資源(商品)となっていくそうです。ただ、このリサイクル工場に運ばれてくるゴミは、あらかじめリサイクル・ゴミとして出されたものだけということでした。
 埋立地が少ない日本では、ゴミの7~8割は焼却処理をほどこされ、体積がもとの一割ほどに減らされた後に埋め立てるという方法がとられています。ゴミを細かく分類するほど焼却の効率がよくなりますから、ゴミの分別に対して厳しい決めごとがなされるのは、ある意味仕方のないことなのでしょう。
 英国にも焼却所がないわけではないそうですが、焼却処理はお金がかかること、また焼却する際に発生する煙の成分がEUの定める基準を満たすようにするには、かなり高額な設備が必要であることなどから、そのまま圧縮して埋め立てる方が経済的であるようです。燃えるゴミと燃えないゴミを分別する必要がなかったのは、こういう理由だったのですね。ゴミひとつをとっても、英国と日本では大きく異なるものだとあらためて実感いたしました。それでは今日はこのへんで。お母様にもよろしくお伝えくださいませませ。

かしこ 
平成27年4月20日 るり子

徳川るり子の細腕感情記Ⅱ

とくがわ・るりこ◆ 横浜生まれのお嬢様。名門聖エリザベス女学院卒。元華族出身の24歳。あまりに甘やかされ過ぎたため、きわめてワガママかつ勝気、しかも好奇心(ヤジ馬根性)旺盛。その性格の矯正を画する父君の命により渡英。在英7ヵ月。ホームステイをしながら英語学校に通学中。『細腕感情記』(平成6年3月~平成13年1月連載)の筆者・徳川きりこ嬢の姪。

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