徳川るり子の細腕感情記Ⅱ

何ゆえ、イースター直前の金曜日は キリストが十字架にかけられた日ですのに 『グッド』フライデーと呼ばれますの?

2015年4月2日

徳川るり子

愛するお父様へ

前文お許しくださいませ。

お父様がこの便りを読まれるころには、きっと山手の桜が満開となり、我が家の庭にも美しい光景が広がっているのでしょうね。ロンドンでも時折桜を目にいたしますが、そのたびに「るり子お嬢様は桜がお似合いになる」と運転手の高田が言ってくれていたのを思い出し、温かい気持ちに浸っております。

さて、英国の春の一大行事といえばイースターです。各所で関連のイベントが催されるばかりでなく、スーパーにはウサギや卵の形をあしらったお菓子などが並んでいます。日本ではあまりなじみのない行事ですので、今回はイースターについてご報告してみたいと思います。

お父様もご存知のように、この日は十字架にかけられたイエス・キリストが『復活』したことを祝う、キリスト教世界ではクリスマス以上に重要とされる祝日です。日程は毎年異なり、春分後の最初の満月の次の日曜日と決められており、今年は4月5日がその日にあたります。

ここ英国では、前々日の金曜日とイースター後の月曜日が祝日となります。つまり4月3日から6日にかけてイースター・ホリデーの4連休です(少し話はそれますが、スコットランドでは月曜は休みではないとのこと。同じ英国といえども、祝日は異なるものなのですね)。

ところで連休の初日である金曜日は、「グッド・フライデー(Good Friday)」と呼ばれています。連休のはじまりにふさわしい名前のように思いますが、この日はキリストが十字架にかけられた日にあたります。それにもかかわらずどうして『グッド』と言われるのでしょう。不謹慎ではないのでしょうか。気になりましたので、いろいろと調べてみました。

わたくしと同じように疑問に思う人はやはり多いようで、たくさんの資料がございました。それらに目を通してみますと、なぜ『グッド』なのか、はっきりとした起源はわかっていないとのこと。ですが、もともとは「ゴッズ・フライデー(God's Friday)」とされていたのが次第に変化したとする説や、グッドにはホーリー(holy=聖なる)の意が含まれていることに由来するなどのいわれを知ることができました。

さらに踏み込んだ解釈がなされている文献もございました。それによりますと、イエス・キリストはすべての人々の罪を背負い、人々の身代わりとなって死を迎えたとされ、つまりこの金曜日は、救世主キリストが死によって人類への愛を示し、祝福を捧げた日でもあるとのこと。さらに死から3日目、キリストは『復活』することになります。これは、新しい生命の誕生を意味しました。ですから、キリストが死を迎えた金曜日は、『復活』を導いた良き日と解釈されるとのこと。確かにこう捉えると、この日が悲しみの日ではなく『良い金曜日』と呼ばれるのも理解できるような気がいたしました。

わたくしも金曜日から学校が4連休となりますが、気を抜くことなく、心機一転、生まれ変わった気持ちでより一層勉学に励まねばと決意した次第です。それでは今日はこのへんで。お母様にもよろしくお伝えくださいませませ。

かしこ
平成27年3月29日 るり子



とくがわ・るりこ◆ 横浜生まれのお嬢様。名門聖エリザベス女学院卒。元華族出身の27歳。あまりに甘やかされ過ぎたため、きわめてワガママかつ勝気、しかも好奇心(ヤジ馬根性)旺盛。その性格の矯正を画する父君の命により渡英。在英3年2ヵ月。ホームステイをしながら英語学校に通学中。『細腕感情記』(平成6年3月~平成13年1月連載)の筆者・徳川きりこ嬢の姪。