作品解説付きウェストエンドでミュージカルを観よう!

■多数の劇場が集まる街として米ニューヨークのブロードウェイと双璧をなすロンドンのウェストエンド。ロングランの古典から話題の新作まで毎晩さまざまな舞台が上演されているが、その半数以上を占めるのは芝居と歌や踊りが一体となったミュージカル作品だ。今回は、ウェストエンド・ミュージカル発展の歴史に迫ると共に、現在上演中の主な作品の見どころを紹介したい。

●サバイバー●取材・執筆/名越美千代・本誌編集部

18年の娯楽禁止後に演劇が復活

16世紀半ばから17世紀初頭にかけて隆盛した英国の演劇文化。演劇好きのエリザベス1世の恩恵を受け、たくさんの作品が発表され、クリストファー・マーロウやウィリアム・シェイクスピアといった才能ある劇作家が貴族のみならず民衆からも支持を受け、演劇が大きく花開いたことは広く知られている。
しかしそんな英国でも、演劇を禁じられた時代がある。1642年、イングランド内戦と質素倹約を唱える清教徒革命が勃発してチャールズ1世が斬首刑となると、国内のあらゆる娯楽が禁止されたのだ。エリザベス1世の治世に作られた数多くの劇場もすべて取り壊されてしまうなど、状況は一変した。
再びエンタメの光が射すのは、18年後の1660年。欧州大陸に亡命していたチャールズ2世が英国王として返り咲いてからのことだ。王政復古を果たしたチャールズ2世は娯楽を復活させようと、「デュークズ・カンパニー(Duke's Company)」と「キングズ・カンパニー(King's Company)」というふたつの劇団にのみ演劇を上演する特別許可(勅許)を与えた。デュークズ・カンパニーは、場所の移転を経てコベントガーデンにある現ロイヤル・オペラハウスへと継承され、キングズ・カンパニーが拠点とした劇場は、同じくコベントガーデンにあるドゥルリー・レーン劇場として今も同じ場所で上演を続けている。チャールズ2世のこの勅許により、劇場街としてのウェストエンドの歴史が幕を開けたと言えるだろう。

規制の抜け道として音楽を追加

まだまだ不安定な世の中で、急激な変化を望まなかったチャールズ2世は勅許劇団数を制限。歴代の王もこれに倣い、19世紀初めまでは少数の劇団だけが演劇の独占権を握っていた。とはいえ、演劇文化が一部の層に限定されていたわけではない。勅許を持たない人々は仕方なく、表向きは飲み物や食事を出すカフェとして営業し、ついでのサービスとしてショーを見せるという体裁を取って、細々と芝居を続けていた。
産業革命で都市部に人が流れ込んだ19世紀になると、娯楽を求める民衆の声はさらに強まっていた。そこで規制の抜け道となったのが音楽だ。音楽を伴う芝居は勅許の規制対象外とされたため、勧善懲悪の道徳的な物語に音楽を合わせた「メロドラマ」や、有名な作品のパロディに音楽を取り入れた「バーレスク」などを上演する小規模な劇場や音楽ホールがウェストエンドに増え、人々の大きな楽しみとなっていった。このようなセリフと音楽を融合した演劇形態に大衆が馴染んでいったことが、英国でのミュージカルの発展に繋がっていったのは想像に難くない。

反オペラが生んだバラッド・オペラ

では、規制の抜け道として演じられていた「芝居+音楽」というスタイルが、音楽、歌、セリフに踊りが加わってストーリー展開する現代ミュージカルとして、どのように現在の地位を築いたのだろうか。
ミュージカルの元祖のひとつとして、英国では「バラッド・オペラ」という形態が挙げられる。名前からはオペラの一種のように聞こえるが、実際にはかなり違う。オペラは16世紀末から17世紀初めにかけてイタリアで誕生し、そこからフランスやドイツなどに広がった音楽の総合芸術たる歌劇で、18世紀のロンドンでも特にイタリア・オペラが裕福な人々を惹きつけていた。
一方でバラッド・オペラは、重厚で敷居が高いオペラに対抗して作られたもので、わかりやすいキャラクター設定の登場人物に、風刺たっぷりのセリフ、そして当時流行った音楽を組み合わせた形式をとった。特に有名な作品は、劇作家ジョン・ゲイによる『Beggars Opera』(1728年)で、盗賊やならず者といった悪人たちばかりが登場し、政治や汚職、貧困や正義を皮肉った内容であった。ロンドンのリンカーンズ・イン・フィールズの劇場で上演されたこの作品は大好評を博し、その儲けは興行主がコベントガーデンに新しく劇場を建てることができたほどだった。

観劇情報❶

お得な割引チケットや席の最新情報は劇場窓口で直接聞くのが確実で、手数料もかからない。劇場や公演によっては「Day Seats」と呼ばれる当日券が枚数限定で販売されることがあり、15~25ポンドととても安いのでおすすめ! 劇場前に看板が出ている=写真=こともあれば、何も表示されていないこともあるので直接尋ねてみよう。売り切れることもあるので、朝早く出かける必要あり。

ミュージカル・コメディ誕生

もちろん、ミュージカルの発展の裏にはオペラの存在も大きい。例えば、クラシック音楽を使うオペラの形式はそのままに、庶民も楽しめるような軽めの喜歌劇の小作品に仕上げた「オペレッタ」は、エンターテインメント性が強いという点で現在のミュージカルに似ている。
英国では19世紀に、作家と音楽家のコンビのギルバート&サリヴァンが、ユーモア溢れるハチャメチャな世界に楽しい音楽を合わせた革新的な英国式オペレッタを生み出した。『The Pirates of Penzance』『The Mikado』など、彼らが作った14作品はオペレッタとも区別して、「コミック・オペラ」とも、上演場所であったサヴォイ劇場にちなんで「サヴォイ・オペラ」とも呼ばれている。
そして、サヴォイ劇場でギルバート&サリヴァン作品に関わっていたプロデューサーのジョージ・エドワーズが、のちに「ミュージカル・コメディ」と呼ばれる新しいジャンルをヒットさせることに成功した。こちらは、政治批判や風刺は入れず、単純な物語に、おしゃれな衣装、覚えやすいメロディとロマンチックな歌詞、そして魅力的なダンスなどを取り入れた、大衆向けの形態だった。オペレッタよりも現代のミュージカルにさらに近づいたといえるだろう。1893年の成功作で若い女の子たちを主役にした『A Gaiety Girl』は翌年にブロードウェイでも上演されている。

ブロードウェイで発展

一方、海を越えた米国・ブロードウェイでも、欧州の演劇やオペラ、そこから派生したオペレッタなどの影響を受けつつ、現代ミュージカルの形に近い作品が生まれ始めた。1866年に上演された『The Black Crook』はストーリーのある戯曲に音楽と踊りをつけた作品で、劇中の音楽は主に既存の曲が使われたが、作品のために新たに作曲されたものもあった。このことから、本作を世界で最初のミュージカルだとする説もある。
『The Black Crook』に続いて、1897年には『The Belle of New York』がヒットし、翌年にはウェストエンドにも持ち込まれた。このあたりから歴史あるウェストエンドが後発ブロードウェイのミュージカル作品を好んで受け入れるようになっていく。
1920年代には米作曲家ジョージ・ガーシュウィンが英国でも大人気となったのを皮切りに、作曲家コール・ポーター(『Anything Goes』『Can Can』他)や、作詞家と作曲家コンビのロジャース&ハマースタイン(『Oklahoma!』『South Pacific』『The King and I』他)らによる作品がブロードウェイからウェストエンドへ紹介された。
スマートで洗練された米国発のミュージカル作品が次々と英国で歓迎された結果、1950年代のウェストエンドでは米国発の作品がかなりの割合を占めるようになっていた。

観劇情報❷

インターネットを活用して座席情報を入手しよう!

インターネットでチケットを購入する場合、悩むのが席と値段のバランス。そんな時に参考になるウェブサイトが「シアターモンキー」(www.theatremonkey.com)だ。劇場愛好者からの情報やコメントを集めたサイトで、作品別や劇場別に公演内容や座席情報を検索できる。

座席の『価値』がわかるサイト「シアターモンキー」。
例えば、「For Seating Plan」から探したい劇場名を検索して「quality rating」を選ぶと、その劇場のシート・マップが色分けされて表示される。緑は「値段の割にお得な席」、白は「値段相応の席」、赤は「避けるほどではなくとも、この値段を出すなら他に良い席があるかもしれないのでよく考えて、という席」といった具合だ。さらにクリックすれば、具体的な理由を説明したページに飛べる。自分が考えている席に近いところに座ったファンの書き込みを探せば参考になるだろう。チケットはこのサイトで買う必要はないので、他サイトと比べて納得のいく金額のものを探そう。
また、アプリで手軽に買える「Today Tix」(www.todaytix.com)も利用者が増えているようだ。こちらでは公演内容や安売りチケットの情報が手に入る。公演によっては安くないチケットもあるので、やはりオフィシャルサイトの値段と比べてから購入しよう。

ウェストエンドに定着

もちろん、英国の劇作家らもミュージカルの発展に地道に貢献していた。中流階級の人々を軽い笑いで描いたノエル・カワードは、貴族の婦人が若き日の苦い恋を思い出す物語『Bitter Sweet』(1929年)を、戯曲に歌と音楽をつけた形で発表。アイヴァー・ノヴェッロはやたらに明るい現実逃避のミュージカル作品の数々で、作曲家と俳優の両方の才能を発揮した。作曲家ノエル・ゲイが音楽を担当したヒット作『Me and My Girl』(1937年)も後に何度か改訂されウェストエンド、ブロードウェイでリバイバル上演されているので、初演当時には今のミュージカルに近い形にまで完成されていたと言えるだろう。
余談だが、コミカルなミュージカル『The Boy Friend』(1954年、作詞作曲はサンディ・ウィルソン)が好評を得たのちにブロードウェイに渡り、そこで主演した英女優ジュリー・アンドリュースがブロードウェイ・スターへの道をスタート。後に名プロデューサーとなるキャメロン・マッキントッシュは8歳のとき、魔法のピアノが現れるファンタジー『Salad Days』(1954年)を観劇して、将来はミュージカルのプロデューサーになりたいと思ったというエピソードもある。

ロイド・ウェバーとマッキントッシュの登場

1970年代からは英国人作曲家のアンドリュー・ロイド・ウェバーが『Joseph and the Amazing Technicolor Dreamcoat』(1970年)や『Evita』(1978年)などを皮切りに数々のヒット作を発表する。また、マッキントッシュもロイド・ウェバーとのコラボレーションによる『Cats』(1981年)や『The Phantom of the Opera』(1986年)、フランス版を英国向けに改訂した『Les Misérables』(1985年)など、さまざまなミュージカルを成功させた。
これによってウェストエンドは波に乗り、昔の作品の再演ブームが巻き起こったほか、ABBAやクイーンといった人気アーティストのヒット曲で構成する作品の上演、映画のミュージカル化などの新企画も始まっていった。
現在、ウェストエンド・シアターと呼ばれる劇場は50近くあり、フリンジやオフ・ウェストエンドに分類される劇場も加えれば100を軽く超える。主なミュージカルだけでも20作品以上を上演中だ。歌とダンスと芝居が一度に堪能できるミュージカルは、セリフに音楽の効果も加わるので、英語に自信がなくてもストーリーさえわかっていれば楽しめる。英国にいる機会を生かして、生の舞台の醍醐味を味わっていただきたい。

ウェストエンドの劇場の舞台裏を覗き見!

バックステージ見学ツアー体験記

■ 王族のロマンスや醜聞から火事や殺人まで、英国で最も長い歴史を持つ劇場「シアター・ロイヤル・ドゥルリー・レーン」にまつわる逸話に触れる、1時間の見学ツアーに参加した。

現在、ミュージカル『42nd Street』を上演する「シアター・ロイヤル・ドゥルリー・レーン」。ツアーを案内してくれたデイヴィッドさんはよく通る美声の持ち主で、本職は俳優。正確な英語の発音は英語を母国語としない日本人には聞き取りやすくてありがたい。ガイド付きツアーの利点は、普段は入れない場所を覗けたり、知らなければ見落としてしまう見どころや裏話、トリビアなどを教えてもらえたりすることだ。しかも、ウェストエンドの歴史や劇場をよく知るプロに案内してもらえるなんて、それも嬉しい!
ドゥルリー・レーン劇場の歴史は1660年まで遡る。火事や老朽化で3回建て替えられ、現存の建物は1812年の4つ目のものだ。移転せずに同じ場所で上演を続けた劇場として英国最古だそうだから、幽霊がたくさん、棲みついていそう…。
現在の建物への建て直し前に、当時の王ジョージ3世と息子の王子が劇場ロビーで殴り合いの大げんかをする事件があり、ふたりが劇場で顔を合わせないよう、同劇場には王と王子のそれぞれに、入り口、控えの間、そして特別席が作られたという。ツアーではまず、現存する王の控えの間と特別席キングズ・ボックスに入れてもらう。控えの間の柱や鏡に今も残る装飾は24金の金箔なんだそう=写真右。キングズ・ボックスは舞台というより客席方向に張り出している印象だが、これは、昔の貴族が自分たちの姿も観客から見えるように舞台上に設置された席で観劇していたことの名残なのだとか。
見学できるエリアは舞台設置やリハーサルのタイミングによって変わるが、今回は運よくステージに立つことができた。美術セットは現在上演中の『42nd Street』のもの。華やかなタップダンスの群舞が見せ場のミュージカルを上演するだけあって、舞台はかなり広い。舞台中央に立って客席のほうを向いたら、照明係さんがスポットライトを当ててくれたではないか! たまたま、照明チェックのタイミングだったのかもしれないが、一瞬でもスターの気持ちを味わえたのが本日最大のハイライトだろう。

密会のためのトンネル

ステージ脇から細い階段を降りて、当時の小道具が展示されている地下の質素な小部屋へ進む。公演グッズなんてなかった昔、お金持ちの観客が舞台で使った小道具を観劇記念に持ち帰ってしまうため、困った劇場主は持ち去り対策として小道具に「property」の印字を施すようになった。それが略されて、「props(小道具) 」という演劇業界用語が生まれたらしい。
1663年の建設当時のままに残されているという小部屋にはトンネル跡がある。そのうちのひとつは、チャールズ2世が愛人の女優ネル・グインと密会するために、ネルの母親が経営する近所のパブまで地下道を繋げさせたものなのだそう。他にもテムズ河まで続いていたトンネルがあり、テムズ河にたむろしていた船乗りたちが小遣い稼ぎのためにこの地下道を抜けて劇場まで『通勤』し、裏方人足として働いていたのだとか。舞台の裏方をクルー(crew)と呼ぶのは、これが語源なのだそう。なるほど!
トリビアを学んだところで、予想どおり幽霊話に。舞台成功の吉兆とされるのは、気に入った演目のマチネ公演にだけ客席に現れる灰色のコートを着た幽霊。いつも同じ壁を抜けて帰っていくのだが、その壁の向こう側の部屋から昔、ナイフが刺さったままの骸骨が出てきたそうで、おそらくその骸骨の幽霊だろうと言われている。ほかにもお漏らしした衣装の臭い消しに大量のラベンダーオイルを使っていた俳優の霊が舞台にラベンダーの香りを充満させる話などを教えてもらう。ちなみに、ここには500以上の幽霊が棲んでいるそうだ!
最後にステージ真下の奈落に進み、歴史的建造物としてグレード1指定を受けているという年代物の昇降装置を間近に眺めながら過去の名作の裏話を聞いて、ツアーは終了。同劇場は改修のために2019年3月から約18ヵ月間ほど閉鎖される予定だそうだが、ここの幽霊たちはその間、どこへ行くのか、気になるところである。

Theatre Royal, Drury Lane Tour
Catherine Street, London WC2B 5JF
料金:大人10.5ポンド、子ども8.5ポンド
www.reallyusefultheatres.co.uk/specials-vip-hospitality/offers/tours
鑑賞がもっと楽しくなる!

ウェストエンド作品解説

人気ミュージカルの中から、定番作品と話題作を厳選して紹介(情報は2018年6月4日現在)。トレイラーや関連動画もチェック可能!
王様役に渡辺謙!大沢たかおも出演

The King and I

© PAUL KOLNIK
ロジャース&ハマースタインが実話をもとに舞台化した名作で、1951年のブロードウェイ初演以来、何度も再演されてきた。クライマックスでアンナと王様が心を通わせ歌い踊る『Shall We Dance?』は有名だ。渡辺謙が王様役で主演した2015年のブロードウェイ版では同年のトニー賞ミュージカル部門で主演男優賞を含む9部門にノミネートされ、再演作品賞、衣装デザイン賞、主演女優賞と助演女優賞の4部門に輝いた。今夏のウェストエンド版では王様役の渡辺謙と共に、アンナ役ケリー・オハラとチャン王妃役ルーシー・アン・マイルズというトニー賞受賞のオリジナル・キャストが出演。また、新たに日本から大沢たかおが、王様の側近・クララホム首相役で参加する。
【あらすじ】
舞台は1860年代のシャム(現在のタイ)。国の近代化を目指す王様は、王子や王女の教育係として未亡人の英国人教師アンナを宮殿に雇い入れる。アンナは伝統としきたりを重んじる封建的な王様と衝突を繰り返すが…。

【会場】
London Palladium
8 Argyll Street, W1F 7TE
6月21日~9月29日
https://kingandimusical.co.uk

ハンカチ必携の号泣ミュージカル

Les Misérables

Photo Johan Persson
原作はヴィクトル・ユゴーの同名小説で、ロンドン初演は1985年。1980年にパリで上演された作品を、キャメロン・マッキントッシュがロイヤル・シェイクスピア・カンパニーと提携して英語版に作り直した。原作に馴染みのない英国人にもわかりやすいように、内容にも手を加えたという。ナポレオンが完全失脚した1815年から、ルイ18世やシャルル10世の復古王政時代、7月革命へと続く1832年までのフランスの激動の歴史に沿って物語が進むため、時代背景がわかりにくい。事前にフランス革命あたりからの歴史を予習しておくとよいだろう。英歌手スーザン・ボイルのパフォーマンスで話題になった『I Dreamed a Dream』のほか、クライマックスの民衆の合唱も見もの。
【あらすじ】
19 世紀初頭のフランス。貧しさからパンを盗んだために19年間も投獄され、出獄後の世間の冷たさに心がすさんだ男が、ある司祭との出会いから信仰を得て、生まれ変わることを決意する。やがて男は成功を収め人柄も評価されるが、彼の過去を知る警察官が現れて…。

【会場】
Queen's Theatre
51 Shaftesbury Avenue, W1D 6BA
2019年3月2日分までチケット発売中
www.lesmis.com/london

初演から32年目、ウェストエンドの代表的作品

The Phantom of The Opera

Photo Johan Persson
アンドリュー・ロイド・ウェバーが、1981年に大ヒットした『Cats』に続いてキャメロン・マッキントッシュと組んだ作品。1986年の初演以来、ブロードウェイほか世界各地で大成功を収めた。ウェバーは当時の妻で無名の女優だったサラ・ブライトマンのために曲を書き、この作品で彼女をスターにしたが、その後離婚。少々、物語と重なるという説もある。劇中の3つのオペラや仮面舞踏会の場面など、舞台衣装は豪華絢爛。オペラ座地下の湖を進むゴンドラや舞台を幻想的に照らす無数のキャンドル、怪人が棲む地下の隠れ家のインテリアなど、隅々まで凝った舞台美術も圧巻だ。客席上に吊り下げられた巨大シャンデリアの落下場面ほか、素早い舞台転換にも驚かされるだろう。
【あらすじ】
1881年のパリ・オペラ座。舞台裏で頻発する怪奇現象を恐れた主役ソプラノ歌手が降板し、コーラスガールのクリスティーヌが見事に代役を務める。だが、その才能開花の陰にはオペラ座地下に隠れ棲む『怪人』の思惑が…。

【会場】
Her Majesty's Theatre
Haymarket, SW1Y 4QL
2019年3月2日分までチケット販売中
https://uk.thephantomoftheopera.com

『ABBA』のヒット曲でノリノリ

Mamma Mia!

© Brinkhoff/Mögenburg
作品タイトルにもなった『Mamma Mia!』をはじめ、1970年代から1980年代にかけて活躍したスウェーデンの人気ポップスグループ「ABBA」の曲を中心に構成した作品。ギリシャの小さな島を舞台にしたハートフルなストーリーに、20曲以上のヒット曲を歌詞も含めて見事に当てはめることに成功している。英国ジョークも満載だが、大筋はわかりやすいので、英語が不安な人にも向いている。どの曲も老若男女問わず、今なお世界中で愛されるメロディだけに、歌やダンス場面での舞台と客席の一体感は格別だ。特に、最後のアンコールでは3曲がライブ風のショーで披露されるので、一緒に踊って盛り上がろう。
【あらすじ】
エーゲ海の島で小さなホテルを経営するドナは、女手ひとつで育て上げた娘ソフィの結婚式を控え、準備に忙しい。一方、父を知らずに育ったソフィの夢は、父親を探し出してバージンロードを一緒に歩くことだった…。

【会場】
Novello Theatre
Aldwych, WC2B 4LD
2019年3月2日分までチケット販売中
http://mamma-mia.com

大人も楽しめるアナーキーな作品

Matilda The Musical

Photo Manuel Harlan
英国の作家、ロアルド・ダールによる児童文学小説『マチルダは小さな大天才』をもとにしたミュージカル。ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーの制作で2010年にストラトフォード・アポン・エイボンで開幕し、2011年からウェストエンドへ移動した。2012年のローレンス・オリビエ賞では最優秀新作ミュージカル賞や最優秀演出家賞を含む7冠に輝いている。5歳の子どもが不条理な大人の圧力に立ち向かう姿は、日々の社会生活の軋轢にへこんでいる大人にも元気を与えてくれるだろう。子役も鬼の女性校長役(時折男性が演じることもあり)も芸達者ぞろい。仕掛け満載の舞台装置やキレのよいダンスで全く飽きさせない舞台となっている。
【あらすじ】
低俗な両親から理解も愛も全く受けずに5歳まで育った天才少女マチルダ。小学校で出会ったハニー先生と心が通じ合うが、小学校には恐ろしいトランチブル校長がいて、その独裁者ぶりは学校中を恐怖に陥れていた。

【会場】
Cambridge Theatre
Earlham Street, WC2H 9HU
2019年10月20日分までチケット販売中
https://uk.matildathemusical.com

アフリカの大自然や動物をユニークに再現!

The Lion King

Photo by Brinkoff and Mogenburg
ディズニーの同名映画を舞台化した、1997年初演の米国発ミュージカル。アフリカ風の仮面、竹馬風の器具、張りぼて、パペット人形、モビール、色鮮やかな民俗調メークなど、それまでの舞台美術や衣装の常識を覆す手法でアフリカのサバンナやジャングルと動物たちをリアルに再現することに成功した。1998年のトニー賞では11部門にノミネートされ、最優秀ミュージカル賞ほか6部門で受賞した。音楽は録音だが、アフリカの伝統音楽を意識した打楽器は生演奏。ジャンベ、ボンゴ、トーキングドラム、シェレケ、カシシといったアフリカ独特の打楽器を組み合わせて、アフリカのサウンドとリズムを表現し、作品にさらなる彩りを与えている。
【あらすじ】
アフリカの広大なサバンナの王国を治めるライオンの王・ムサファに、息子のシンパが誕生する。やがて若い王子に成長したシンパは、王国の乗っ取りを企む狡猾な叔父スカーの仕掛けた罠にはまってしまう…。

【会場】
Lyceum Theatre
21 Wellington Street, WC2E 7RQ
2018年12月2日分までチケット販売中
https://thelionking.co.uk

今一番の話題作!

Hamilton

© Matthew Murphy
アメリカ合衆国建国の父のひとりとされ、ジョージ・ワシントン大統領からも厚い信頼を得ていた政治家アレクサンダー・ハミルトン(1755~1804年)を中心に、独立戦争前後の米国を描いた作品。歴史を題材にしながらも、現代的なヒップホップを取り入れるという異色の手法が2015年のオフブロードウェイ上演当初から話題となり、ブロードウェイでもいまだにチケットは入手困難。2017年末に開幕したばかりのウェストエンドでもプラチナ・チケットとなっている。各公演毎に、1枚10ポンドで買えるチケットが2枚提供されており、ハミルトンのアプリをダウンロードして申し込むことが可能。ロッタリー方式なので、当選確率は低いと言わざるを得ないが、ダメもとで応募し続けるのも手かもしれない。
【あらすじ】
10代で両親を亡くしたカリブ海育ちの貧しい少年アレクサンダーは文才を認められてニューヨークの大学に進学。独立戦争での活躍や弁護士業などを経て政治の世界に足を踏み入れ、様々な功績を残していく。

【会場】
Victoria Palace Theatre
126 Victoria Street, SW1E 5EA
2019年3月30日分までチケット販売中
https://hamiltonmusical.com/london

観劇情報❸

幕間時間を有効活用! 上演前にドリンクを注文してみよう!

2幕以上で構成される作品の場合、幕間には15〜25分の休憩時間(Interval)が挟まれる。そこで優雅に軽く1杯といきたいところだが、通路の人ごみに揉まれながらロビーに辿り着く頃にはバーの前に長蛇の列ができていることも多い。やっと飲み物を手にした頃には残り時間はわずかとなり、慌てて飲み干して席に戻る羽目にもなりかねない。
そこでおすすめなのが、インターバル・ドリンクの事前注文。開演前にあらかじめバーで注文して料金も支払っておけば、幕間にロビーへ出てくる頃には、名前が書かれた紙を添えたドリンクが用意されている。注文時に飲み物の置き場を教えてくれるので、自分の飲み物を探し回るようなことにもならないので安心。バーに群がる人々を横目に、第1幕の感想でも語り合いながら、ゆったりと飲み物をいただこう。

週刊ジャーニー No.1038(2018年6月7日)掲載