ワインにまつわる今月のトピック㉚ イングランドのスパ-クリング・ワイン事情 その3

地球温暖化のもたらしたもの

地球温暖化の『恩恵』を受けている、数少ない分野のひとつといえるのが英国のワイン生産業で、シャンパーニュと同じ土壌であることに加え、ブドウ栽培&ワイン醸造技術の向上により、特にスパークリング・ワインの人気が伸びている。今から10年前の2012年には、英国のブドウ畑の数は約400、総ブドウ栽培面積は800へクタールだったのに対し、2020年の統計によると、ブドウ畑の数は769、総栽培面積は約3,500ヘクタールへと大幅に増加。ブドウ畑は、ケントKentやサセックスSussexといったイングランド南西部に集中しているが、他にもウェセックスWessex、イースト・アングリアEast Anglia、ウェストミッドランド&ノースWest Midlands & North、テムズ&チルターンThames & Chilterns、さらにはウェールズ、スコットランド、チャネル諸島Channel Islandsでも栽培されている。ただし、各栽培者の平均栽培面積は4.5へクタールと比較的小さい。

ブリティッシュ・ワインに英国の個性なし!?

英国のワインについて、一つご留意いただきたいことがある。英国のワインは、イングランド産ワインEnglish Vineyards Quality Wine、ウェールズ産ワインWales Vineyards Quality Wine、そしてブリティッシュ・ワインBritish Wineに分けられる点だ。イングランド産ワインとウェールズ産ワインは、イングランドやウェールズで栽培されたブドウを使って造られたワインだが、ブリティッシュ・ワインとは、輸送コストを削減するために脱水したブドウや凝縮ブドウ果汁をオーストラリア、南米、米カリフォルニア、イタリア等から輸入し、水道水で再水和してから発酵させて造られたもの。従って、ブリティッシュ・ワインには、英国の風土の個性はなく、価格もずっと低いかわりに品質が劣る。

ワイナリーを訪れたい特別な2週間

恒例のウェールズ・ワイン・ウィークとイングリッシュ・ワイン・ウィークが、今年は、それぞれ、6月4日~12日と6月18日~26日に行われる。この間、ワイナリーはプロモーション活動として一般客を歓迎し、ワイナリーにもよるが、ただでテースティングさせてくれたり、軽いランチを出してくれたり、またはソフト・ドリンクを提供してくれたりする。英国のワイナリーを訪ねるなら、この絶好の2週間を存分に活用したいもの。なお、子供同伴が可能かどうか、ワイナリーやブドウ畑の説明をしてくれる人がいるのか等々、各ワイナリーに事前に確認してから出かけるといいだろう。

お薦めのイングリッシュ・スパークリング・ワイン

ここで、イチオシのイングリッシュ・スパークリング・ワインを幾つか記しておこう。昨年12月9日号で取り上げたナイティンバーNyetimberに関しては、シャルドネ種だけで造られた「Blanc de Blancs」を勧めたい。そして、ナイティンバー以外で、是非試してほしい「Blanc de Blancs」としてウィンストン・エステートWinston Estateの「ブラン・ド・ブランBlanc de Blancs 2015」を挙げておく。このエステートはブライトンの東に位置し、数々の賞を受賞しており、そのワインは入手困難。さらに、ロンドンからサウサンプトンに行く途中にあるハッティングリー・ヴァレー・ワインHattingley Valley Wineの「キングズ・キュヴェ Kings Cuvée 2014」も見逃せない。2020年のイングリッシュ・スパークリング・ワインでトップの賞を取得したワインで、こちらも入手が難しい。そして最後にご紹介しておきたいのが、ブレイキー・ボトムBreaky Bottomの「キュヴェ・ミシェル・モローCuvée Michelle Moreau 2014」。ちなみに、同ワイナリーのオーナー、ピーター・ホール Peter Hall さんの父の母方の祖母、つまりひいおばあさんのミニー・シャーロット・ハーンMinnie Charlotte Hearnさんは、小泉八雲Lafcadio Hearnの腹違いの妹だという。小泉八雲とは血は繋がっていないのだが、ピーターさんにとって、八雲は祖母のおじにあたることになる。日本に関わりのあるスパークリング・ワインは一味違う。良く冷やして楽しんでいただきたい。

週刊ジャーニー No.1239(2022年5月12日)掲載

ミヨコ・スティーブンソン Miyoko Stevenson

WSETディプロマ取得。Circle of Wine Writers会員。Chevalier du Tastevin(利き酒騎士)団員。Jurade de St-Emilion団員。Ordre des Coteaux de Champagne団員。国際日本酒利き酒師。The Guild of Freemen of the City of London会員。ワイン関連の訳書・著書あり。現在、ロンドンでワイン教室を主宰。
www.miyokostevenson.co.uk
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