ワインにまつわる今月のトピック㉚ フランスのスパークリング・ワイン事情 その1

シャンパーニュ以外のフランス産スパークリング・ワイン

やっと気温が上がり青空が広がって初夏らしい気候となった。このような時節に欠かせないのは、キリっと冷やしたスパークリング・ワインだろう。今回から数回に渡って、シャンパーニュ以外でお買い得かつ上質なフランス産スパークリング・ワインをご紹介しよう。 フランスで造られるシャンパーニュ以外のスパークリング・ワインには、クレマンCrémant、ムスーMousseux、そして非発泡性ワインと同名のものがある。クレマンの代表的なものには、クレマン・ドゥ・ブルゴーニュCrémant de Bourgogne、クレマン・ダルザスCrémant d'Alsace、クレマン・ドゥ・ロワールCrémant de Loire、クレマン・ドゥ・ボルドーCrémant de Bordeaux、クレマン・ドゥ・ディCrémant de Die、クレマン・ドゥ・ジュラCrémant de Jura、クレマン・ドゥ・サヴォワCrémant de Savoie、クレマン・ドゥ・リムーCrémant de Limouxなどがあり、「クレマン」の後に生産地が記される。 ムスーについては、ソミュール・ムスーSaumur Mousseux、トーレーヌ・ムスーTouraine Mousseux、ガイヤック・ムスーGaillac Mousseux、ブルゴーニュ・ムスーBourgogne Mousseux、非発泡性と同名のものでは、ヴーヴレVouvray、モンルイMontlouisなどが知られている。

英国でも入手できる上質なクレマン

これらのスパークリング・ワインは、輸出を重視しているシャンパーニュとは違い、ほとんどが国内市場向けに造られているため、英国で入手できないものが多い。それでもクレマンは最も知名度が高く、英国のスーパーマーケットでも見かけることがあるので、今回は幾つかのクレマンを取り上げたい。 製法はシャンパーニュとまったく同じ(瓶内二次醗酵)で、法律で定められた厳しい規定に沿って造られ、高い品質が保証されている。ただ、シャンパーニュの瓶内が5~6気圧あるのに対し、クレマンは3.6~4気圧とやや低く、また、シャンパーニュよりも短い瓶内熟成(最低9ヵ月間)で出荷されるため、より軽やかでカジュアルな味わいに仕上がり、値段もお手頃だ。なお、クレマンは概して、その地方の非発泡性白ワイン用に使われるブドウを使って造られるが、アルザスでは、ミュスカMuscatやゲビュルツトラミネールGewürztraminerといったアロマティックなブドウ品種を使うことは認められていない。

シャンパーニュより長い歴史を誇る発泡酒

さて、クレマン・ドゥ・リムーについてもう少し説明したい。このワインはフランスで最も古い歴史をもつスパークリング・ワインで、1531年にサン・ティレール修道院の修道士によって造られたとの記録が残っている。17世紀半ばに、ドン・ペリニョがシャンパーニュを造るずっと前ということになる。生産地はフランスの南西部、フランスでも最も美しい町の1つであるカルカソンヌの南25キロに位置する。ここには、2つのスパークリング・ワインがあり、一つはブランケット・ドゥ・リムーBlanquette de Limouxで、モーザック種Mauzacを最低90%含み、他にシャルドネChardonnayやシュナン・ブランChenin Blancが使われている、フルーティーでクリーミーな味わいの辛口ワインだ。もう一つのクレマン・ドゥ・リムーは、主にシャルドネ、シュナン・ブラン、ピノ・ノワールPinot Noirから造られ、花やハチミツを連想させる果実香味豊かな辛口ワイン。試すとすれば、キュヴェ・ロワイヤル・ブリュット・クレマン・ドゥ・リムーCuvée Royale Brut Crémant de Limoux NV(12.75ポンド/www.waitrose.com)=写真右=を挙げておこう。

夏にお勧めの超辛口ワイン

次にクレマン・ダルザスについて。フランス北東部に位置するアルザス地方で、主にピノ・ブランPinot Blanc種から造られるが、他にピノ・ノワール、ピノ・グリPinot Gris、オーセロワ・ブランAuxerrois Blanc、シャルドネ、そして稀にリースリングRieslingを加えることが許可されている。実にキレのあるワインだ。お勧めしたいのは、グスターヴ・ロレンツ・クレマン・ダルザス・ゼロ・ドザージュGustave Lorentz Crémant d'Alsace Zéro Dosage(18.75ポンド/www.drinksandco.co.uk)=写真右。ゼロ・ドザージュ、つまり、残留糖分がゼロという極辛口。フレッシュで、芳醇なレモン、ライム・ゼスト(果皮)、ネクタリンの果実香味が広がる。暑い夏の日の食前酒として最適だ。このワインは、シャルドネ、ピノ・ブラン、ピノ・ノワールをほぼ同量使用している。いずれも、10℃以下に冷やして楽しみたい。

週刊ジャーニー No.1192(2021年6月10日)掲載

ミヨコ・スティーブンソン Miyoko Stevenson

WSETディプロマ取得。Circle of Wine Writers会員。Chevalier du Tastevin(利き酒騎士)団員。Jurade de St-Emilion団員。Ordre des Coteaux de Champagne団員。国際日本酒利き酒師。The Guild of Freemen of the City of London会員。ワイン関連の訳書・著書あり。現在、ロンドンでワイン教室を主宰。
www.miyokostevenson.co.uk
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