ワインにまつわる今月のトピック㉚ スペインのスパ-クリング・ワイン事情 その2

名称と質をめぐる『内乱』

引き続き、スペインを代表するスパークリング・ワインのカバを取り上げたい。カバの生産者が2つのグループに分かれたことは、先月号で説明した。量より質を提唱する、カタルーニャ地方(州都バルセロナ)のペネデスの一部団体に賛同するメーカーも複数集まったとはいえ、まだ正式名が決まっておらず、先が見えない今後に不安を感じ、その団体には加わらずにカバ名称を使い続けることを選んだ上質なカバ・メーカーも少なくない。

そのカバ名称だが、フランスのシャンパーニュやイタリアのプロセッコとは異なり、製造法が規制されているだけで、生産地域が指定されておらず、スペインのどこで造っても名乗ることができる。例えば非発泡性ワインで有名なリオハで、テースティング用リストに、カバが含まれていて驚くことがあるのもこのため。とはいうものの、カバのほとんどはペネデス地域のサント・サドゥルニ・ダノイアSant Sadurní d'Anoiaに集中している。

カバを造り出すブドウたち

要生産地であるサント・サドゥルニ・ダノイアは緯度41度に位置し、シャンパーニュ地方と比べて9度ほど南に位置することから、ブドウ果実の成熟期における平均気温も4℃ほど高く、発泡性ワインに大切な酸味を確保するのが困難で、ワインも大味になりがちだ。この酸味をいかにコントロールするかが生産者の腕の見せ所といえる。

カバに使われるブドウ品種は、白ブドウ品種のマカベオMacabeo(栽培率35.3%)、チャレッロXarel·lo(25.5%)、パレリャーダParellada(20.3%)、シャルドネChardonnay(8.7%)、スビラット・パレントSubirat Parent(0.2%)、黒ブドウ品種のガルナッチャGarnacha (4.1%)、トレパットTrepat(3.3%/ロゼ用のみに認可)、ピノ・ノワールPinot Noir(2.5%)、モナストレルMonastrell (0.1%)

最も多く栽培されるマカベオは、リオハ地域ではビウラViuraと呼ばれ、主にピレネー山脈やカンタブリア山脈の斜面といった標高の高い圃場から、ニュートラルな香味、高い酸味、そして塩味を呈すフレッシュなワインを生み出す。そのニュートラルな個性ゆえに、シャンパーニュと同様、酵母の自己分解による特徴を表現する生産工程が合う。

次に重要な品種はチャレッロで、凝縮した果実香味を呈し、高い酸味のために酸化しにくい。特に上質なカバ生産や、Brut Natureといった極辛口のカバに多く用いられる。カモミールやフェンネルを思わせる芳醇な香りを持ち、後味に心地よい苦味を残す。長く熟成させると、ハチミツや温かいパティスリーといったブーケを呈すようになる。

ブレンドの脇役として活躍するパレリャーダは、エレガントで精妙なワインを造るが、酸味が低く、酸化しやすく、アルコール度の低いワインとなるために、長期熟成用ワインには不向き。しかし、標高の高い圃場で育つ樹齢の高いブドウ樹でとれるブドウから、オレンジ・ゼストの香りを呈す魅力的なワインを生み出すことができる。

スペイン料理との相性が抜群のカバ

スペイン土着品種から造られるカバは、タパスやピンチョス、揚げたエビ、パエリャ、イベリコ・ハム、小エビ入りクリーム・コロッケ、揚げたホワイト・ベイトといったスペイン料理とは抜群の相性。試してみたい方向けに、辛口カバ、プレミアム・カバ(やや甘口)、辛口クラシック・ペネデスを1種類ずつ紹介する。

辛口カバとしてお勧めしたいのはAlta Alella Gran Reserva Brut Nature (26.95ポンド/www.thewhiskyexchange.com)=写真右上。国際品種を使って造られており、複雑な香味を呈すエレガントなカバで、どんな料理とも合わせやすい。

次はプレミアムのカバで、Agusti Torello Mata - Cava Kripta Gran Reserva Brut Nature(58ポンド/www.jamonshop.co.uk)=写真中央。底が平らでないため、氷をいれたワイン・クーラーが必要。黄金色を帯びた色合いで、クルミやトースト、ハチミツを含む凝縮した風味で、ほのかに甘味をもつフルボディなワインだが、エレガントでもある。食後に塩味のある古いチーズと合わせたい。このワインにはマカベオが45%使用されている。

最後に、お勧めのクラシック・ペネデスとして挙げたいのはColet Navazos Extra Brut Reserva(31.75ポンド/www.yorkshirevintners.co.uk、29.06ポンド/www.decantalo.com/uk)=写真右下。有機栽培で造られたエレガントで、コクのあるワインだ。いずれも冷やして楽しみたい。

週刊ジャーニー No.1188(2021年5月13日)掲載

ミヨコ・スティーブンソン Miyoko Stevenson

WSETディプロマ取得。Circle of Wine Writers会員。Chevalier du Tastevin(利き酒騎士)団員。Jurade de St-Emilion団員。Ordre des Coteaux de Champagne団員。国際日本酒利き酒師。The Guild of Freemen of the City of London会員。ワイン関連の訳書・著書あり。現在、ロンドンでワイン教室を主宰。
www.miyokostevenson.co.uk
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