ワインにまつわる今月のトピック㉚ イタリアのスパ-クリング・ワイン事情

プロセッコだけではない イタリアの発泡性ワイン

先月号でプロセッコについて書いたのに続き、今回はプロセッコを含む、イタリアのスパークリング・ワイン全般を取り上げたい。プロセッコはベースワインの第二次発酵をタンクの中で行って造られる。これをタンク方式といって、ブドウ果実自体の香りや味わいを保つことが可能で、かつ大量生産できるのが特徴だ。発酵が始まると二酸化炭素が発生し、密閉タンクから逃げ出せない二酸化炭素が発酵中のワインに溶けることによって発泡性がもたらされるのだが、イタリアではプロセッコ以外にも様々なスパークリング・ワインが造られている。

心地よく甘い スパークリング・ワイン

山の麓の州、ピエモンテ州(州都はトリノ)で造られるスパークリング・ワインはアスティAstiモスカート・ダスティMoscato d'Asti。ともにモスカートMoscato種(イタリア語のマスカット)から造られ、ブドウの甘い香りと豊潤な風味を残すためにタンク方式が用いられている。ただし、プロセッコとは異なり、2回発酵させることはない。ベースワインを発酵させるのではなく、収穫後に圧搾して搾取した果汁をタンク方式で発酵させる。甘さを残すために、発酵が完全に終了する前に、発酵を止めて瓶詰する。従って、心地よく甘く、アルコール度の低いワインになる。アスティのアルコール度は6~9%、気圧は4~5バール。一方のモスカート・ダスティはアルコール度が5~6%、気圧は2.5バールほどだ。アルコール度が低いほど、甘いワインとなる。圧力が強め、つまり炭酸が強めのものは、スプマンテSpumante、弱めのものはフリッツァンテFrizzanteとラベル明記される。どちらもよく冷やしてアペリティフとして飲んだり、フルーツ・サラダの共にしたりするのがお勧め。

黒ブドウ品種から造られ 甘口から辛口まで揃うワイン

ミラノを州都とするエミリア・ロマーニャ州で生産されるのはランブルスコ。ランブルスコ系Lambruscoの黒ブドウ品種から造られ、これもタンク方式が用いられている。ほとんどのランブルスコは、ラベルにLambrusco、その後に産地が表示される。最も有名なものは、ランブルスコ・ディ・ソルバーラLambrusco di Sorbara、ランブルスコ・グラスパロッサLambrusco Grasparossa、そしてランブルスコ・サラミーノLambrusco Salamino。ランブルスコは黒ブドウ品種だが、赤、ロゼ、白が造られる。辛口から甘口まで幅広く揃っているのも特徴で、セッコseccoは辛口、アマービレamabileは中甘口、ドルチェdolceは甘口のこと。セッコはピザ、パスタ、肉類、魚介類の料理に、アマービレは塩味の強いものに、ドルチェはデザートに合わせるとよい。英国で販売されているものには、アルコール度が7~11%の半甘口でフリッツァンテ、つまり微発泡のものが多い。

F1の表彰式に 花を添えるスパークリング・ワイン

さらにイタリアには、ベースワインを瓶内で第二次発酵させる、つまりシャンパーニュと同じ製法で造られるスパークリング・ワインがある。代表的なものにフランチャコルタFranciacorta、トレントTrento、オルトレポ・パヴェーゼ・メトド・クラッシコOltrepo Pavese Metodo Classico、アルタ・ランガAlta Langa、そして一部のプロセッコがある。

このうち、フランチャコルタで初めてスパークリング・ワインが造られたのは1961年。ミラノの北東、コモ湖とガルダ湖の間にあるイゼーオ湖の南沿岸に広がる標高200~400メートルの山麓斜面で栽培されるピノ・ネロPinot Nero種、シャルドネChardonnay種、そしてピノ・ビアンコPinot Bianco種から造られる。生産量はシャンパーニュの100分の1ほどと少ない。一番上質のものは、最低5年半かけて造られるフランチャコルタ・リゼルヴァFranciacorta Riserva。辛口にはBrut、半辛口にはSec、半甘口にはDemi-Secとラベルに記される。右写真のベッラビスタBellavista Alma Gran Cuvee Franciacorta DOCG Brut(小売価格38ポンド)は辛口の1本。

ところで、筆者の最も好きなイタリアのスパークリング・ワインは、イタリア北部・トレンティーノ=アルト・アディジェ州のトレンティーノ地域トレントで造られるフェラーリFerrari。ぶどう畑はアルプス山麓の丘陵地帯(標高350~800メートル)にあり、フレッシュな酸味と、厳格な味わいを持つ。白とロゼのスプマンテがあり、シャルドネ、ピノ・ビアンコ、ピノ・ネロ、ピノ・ムニエPinot Meunierから造られている。2021年FIAフォーミュラ1(F1)世界選手権(初戦はバーレーン)の開幕を前にした3月2日に発表されたのだが、フェラーリのスパークリング・ワインは、このF1の公式スパークリング・ワインに選ばれた。これから3年間、あの華やかな勝者のセレブレーションの舞台で用いられる。

週刊ジャーニー No.1179(2021年3月11日)掲載

ミヨコ・スティーブンソン Miyoko Stevenson

WSETディプロマ取得。Circle of Wine Writers会員。Chevalier du Tastevin(利き酒騎士)団員。Jurade de St-Emilion団員。Ordre des Coteaux de Champagne団員。国際日本酒利き酒師。The Guild of Freemen of the City of London会員。ワイン関連の訳書・著書あり。現在、ロンドンでワイン教室を主宰。
www.miyokostevenson.co.uk
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