
ワインにまつわる今月のトピック㉚ 新年に飲みたい1本
期待を決して裏切らない1本
謹賀新年。新型コロナウイルスのワクチン接種が始まったというニュースで、多少ながらでも希望を持って新年を迎えたところが、イングランドはまたロックダウンとなってしまった。今年は丑年。動きがゆったりとしていることから忍耐強いイメージのある牛のごとく、先が見えるまでじっと辛抱の年になりそうだ。
自宅でおとなしく過ごす日々が続いている今だからこそ、のんびりとしみじみワインを味わうことを提案したい。今号では、アルコール度もそれほど高くなく、身体にやさしく、かつ、大変おいしいフランス産白ワイン2本(精妙な極辛口1本とコクのあるやや辛口1本)をご紹介しよう。

南仏生まれのコクのある1本

次に、コクのあるやや辛口の1本として取り上げたいのが「Mas de Daumas Gassac Blanc 2018」。マス・ド・ドマ・ガサックでカベルネ・ソーヴィニョンCabernet Sauvignonから造られる赤ワインは、有名ワイン評論家、ヒュー・ジョンソンによると、「南仏随一のグラン・クリュ」、同じく著名なマイケル・ブロードベントによると「世界のベスト10ワインのひとつ」、そして、タイムズ紙によると「南仏のラトゥール」(ラトゥールはメドック格付け第1級、5大シャトーのひとつ)と称される。それほど高い評価を得ているワイナリー、マス・ド・ドマ・ガサックの白ワインがこれ。ラングドックの奥地に位置する土地特有の氷河礫質・石灰質土壌がブルゴーニュのコート・ドール地方の土壌と類似しており、日較差(1日における最低気温と最高気温の差)が大きく、ブドウ栽培に適す微気候に恵まれていることから醸造学者たちが注目し、ボルドー大学の醸造学者として有名なエミール・ペイノー教授の指導のもと、1974年に初めてブドウが植え付けられた。ここでは、カベルネ・ソーヴィニョンだけでなく、25種類の黒ブドウ品種と24種類の白ブドウ品種が栽培されているというから驚くが、それも、馬を使って耕作し、化学肥料および除草剤、殺虫剤、防腐剤といった農薬は一切使用せずにビオディナミ農法を適用していると聞けば、さらにすごい。「Mas de Daumas Gassac Blanc 2018」は、ヴィオニエViognier 25%、シャルドネChardonnay 25%、プティ・マンサンPetit Manseng 25%、シュナン・ブランChenin Blanc 15%、他白ブドウ品種10%から造られ、モモ、ナシ、柑橘類のゼスト、ハニーそしてスパイスを呈すコクのある、ほんのり甘味が感じられるやや辛口のワイン。今が飲み頃で、焼き魚に合わせることをお薦めしたい。エイジー・ワインズAG Wines、ワイン・ソサエティThe Wine Society、ヴィンヴィーエムVinVM、ヘドニズム・ワインズHedonism Winesで34.49~41.00ポンドで入手可。お正月を楽しみそこねたと残念に思っている方には特に、少しフンパツして試していただきたい1本といえる。
週刊ジャーニー No.1171(2021年1月14日)掲載