ご当地ワインと郷土料理&名産物㉙ 番外編:シャンパーニュ その1

357の村のみに許された シャンパーニュ造り

クリスマスから年始にかけ、シャンパーニュを飲む機会が多かったのではないだろうか。今年の初原稿として、オーストラリアからは一時離れ、そのシャンパーニュを取り上げたい。 当講座に幾度となく登場しているシャンパーニュは、あくまでも上品で軽く、アルコール度数は高くなく、風味は強すぎず、それでいて後味が複雑な飲み物として独特の存在感を示す。スパークリング・ワインの中でもシャンパーニュと名乗ることができるのは、フランスのシャンパーニュ地方の357村で造られたもののみ。同地方はパリから約130キロ北東に位置する北部大陸性気候の冷涼なエリアで、北部のモンターニュ・ドゥ・ランスMontagne de Reims地区、南のコート・デ・ブランCôte des Blancs地区、西のヴァレ・ドゥ・ラ・マルヌVallée de la Marne地区、南西のコート・ドゥ・セザンヌCôte de Sézanne地区、南東部のコート・デ・バールCôte des Bar地区の5地区から成る。 さらに、シャンパーニュに使用できるブドウ品種は、ピノ・ノワールPinot Noir種、ピノ・ムニエPinot Meunier種(以上黒ブドウ品種)、シャルドネChardonnay種、ピノ・グリPinot Gris種、アルバンヌArbane(またはArbanne)種、プティ・メリエPetit Meslier種、ピノ・ブランPinot Blanc種(以上白ブドウ品種)の7種で、ほとんどのシャンパーニュは先に挙げた3品種から造られる。


世界最大手の造り手が生む エレガントなシャンパーニュ

シャンパーニュはコクはあっても果実香味が強すぎず、きりっとした酸味があり、様々な料理に合わせやすい。各シャンパーニュの個性にあわせて選べば、より楽しめるだろう。9000ほどもあるブランドのうち、今回は英国で入手しやすい3ブランドについて説明する。 まずは、世界最大のシャンパーニュ会社、モエ=エ=シャンドンMoët & Chandon(カタカナではこう表記するが、実際の発音に近いのは「モエ=テ=シャンドン」)=写真右上。モエ家はオランダ人で、15世紀にフランスに移住し、シャンドン家との結婚によってモエ=エ=シャンドンと名が変わり、シャンパーニュ会社としては1743年創設の老舗。フラッグシップのモエ=エ=シャンドン・アンペリヤル・ノン=ヴィンテージMoët & Chandon Impérial NVは、何と言ってもエレガントで、やさしい風味が特徴。シャルドネ種が多く含まれるので口当たりがやわらかく、泡も細かく美しい。個性は強くなく、料理に合わせやすい。どちらかというと軽めなので、アペリティフとして、または、海産物のスターターと合わせるのがお薦め。

メイン・ディッシュやチーズと 合わせたいシャンパーニュ

次は、1829年創設のボランジェBollinger=写真右。フラッグシップのボランジェ・スペシャル・キュヴェ・ブリュット・ノン=ヴィンテージBollinger Special Cuvée Brut NVも、シャルドネ種の含まれる割合が高いが、円熟した風味は複雑かつ濃厚で、農家の裏庭、さらには日本の漬物さえ感じさせるうまみ感が強く、口当たりはふくよかで角がない。大きな味わいのするシャンパーニュだ。アペリティフというより、仔牛や若鶏のロースト、中華料理の甘酢のあんかけといった、メイン・ディッシュ、または食後に味わう白カビソフトタイプのブリーなどのチーズとも合う。


王室ご用達のシャンパーニュ

3つめは、ウィンブルドンの会場でもおなじみのランソンLanson=写真右下。ヴィクトリア女王以来の王室ご用達で、フラッグシップはランソン・ブラック・ラベル・ノン=ヴィンテージLanson Black Label NV。このシャンパーニュにはピノ・ノワール種が多く含まれるので、広がり感というよりも、きりっとしまった感じが強い。また、ほとんどのシャンパーニュ会社で行っているマロ・ラクティック発酵(アルコール発酵後に起こる発酵で、ワイン中に含まれるリンゴ酸を口当たりの柔らかい乳酸に替える)を行っていない珍しいシャンパーニュで、シュワッとする感覚がするどい。極まった酸味とミネラル感があり、朝食の牡蠣に合わせたいシャンパーニュと言える。 では、今年も健康に楽しくグラスを重ねることができますように!

週刊ジャーニー No.1120(2020年1月16日)掲載

ミヨコ・スティーブンソン Miyoko Stevenson

WSETディプロマ取得。Circle of Wine Writers会員。Chevalier du Tastevin(利き酒騎士)団員。Jurade de St-Emilion団員。Ordre des Coteaux de Champagne団員。国際日本酒利き酒師。The Guild of Freemen of the City of London会員。ワイン関連の訳書・著書あり。現在、ロンドンでワイン教室を主宰。
www.miyokostevenson.co.uk
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