ご当地ワインと郷土料理&名産物㉘ 南半球:オーストラリア その1

英国からの移住者がもたらしたワイン栽培

ニュージーランド産ワインについてはひと区切りつけ、今号よりオーストラリア産ワインに関して書くことにしたい。季節柄、スパークリング・ワインを飲む機会が多いと思われるので、まずはオーストラリア産のベスト・スパークリング・ワインを取り上げよう。
スパークリング・ワインは、その製造過程ゆえ、ベースとなるワインは、酸味が高く、アルコール度数は低めでなければならない。となると、産地は涼しい所に限られることになり、オーストラリアに限っていえば、南東に位置する島、タスマニア州ということになる。特にテイマー・ヴァレー(タスマニア島の北部に位置し、タスマニア産ワインの約半分を生産している)では冷涼なタスマニア島の気候に適したシャルドネ種やピノ・ノワール種などが好評価を得ており、冷涼な気候を活かして高品質ワインが生産されている。
タスマニアにブドウを持ち込んだのは英国からの移住者で、1823年頃のことだった。緯度は南緯41~43.5度、つまり、ニュージーランドでいえばマールボロ地区、日本で言うと北海道あたりになる。1月(夏季)の平均気温は14.4℃と涼しく、年降水量は620ミリと、オーストラリアでもっとも冷涼かつ乾燥した海洋性気候の地域だ。

160のワイナリーで造られるワイン

タスマニアのブドウ栽培面積は約1,800ヘクタールで、オーストラリアのワイン総生産量の約1.3%を占めている。160ほどのワイナリーがあり、2017年には1万1,000トンのブドウが収穫され、約800万リットルのワインを生産。栽培されているブドウ品種は、ピノ・ノワール種が一番多く(44%)、続いて、シャルドネ種(23%)、ソーヴィニヨン・ブラン種(12%)、ピノ・グリ種(11%)、リースリング種(5%)となっている。生産本数の約35%がスパークリング・ワインで、ほとんどがシャンパーニュ同様、シャルドネ種とピノ・ノワール種で造られる。大部分はオーストラリア国内で消費され、輸出量は少ない(約8%)ものの、輸出先1位は英国で、2位は中国、カナダ、日本、フィンランドと続いている。

年末年始に味わいたい タスマニア産スパークリング・ワイン

英国で買えるタスマニア産スパークリング・ワインのうち、お薦めのものを紹介したい。

Janszジャンツ

1986年設立。この島を最初に発見したオランダ人、アベル・ジャンツォーン氏に敬意を表して命名された。シャンパーニュの老舗、ルイ・ロドレールLouis Roedererと、タスマニアのワイン生産者、ヘムスカーク・ヴィンヤードHeemskerk Vineyardsによるベンチャーとしてスタートし、今はオーストラリア・ヴィクトリア州のヤルンバ地区で活躍するヒル・スミス家Hill Smith Familyの所有となっている。2018年に「 Daily Mail's 2018 Wine Awards」や、「International Wine Challenge」の銅賞を獲得。ニワトコと柑橘類の風味に、ヌガー、ローストしたナッツ、ストロベリー風味が加わった辛口のワインだ。アルコール度は12%。ウェイトローズで£17.99で購入可。

ジョゼフ・クローミーJosef Chromy

2000年設立。祖国チェコから無一文でオーストラリアに移住。やがてタスマニアに辿り着き、炭鉱夫として蓄えた資金で肉屋を始め、タスマニアの食肉業を皮切りに土地開発産業、そしてワイン産業に至るまで、実業家として頂点をきわめた偉大なる人物で、「タスマニアの父」と称されているジョゼフ・クローミーの名前を冠したワイン。ラベルにある、しっぽを2本持つライオンは、12世紀、ボヘミア王国の紋章だったもの。淡い麦わら色で、フレッシュで爽やかな青いリンゴとレモンの香りを呈し、ビスケットとトーストの風味を伴う辛口のスパークリング・ワインだ。オール・アバウト・ワインで£20.49。
他に、熟成感のみごとなアラス・スパークリング・ワインArras Sparkling Wine、エキシビション・タスマニア・シャルドネExhibition Tasmania Chardonnay、デヴィルズ・コーナー・タスマニアDevil's Corner Tasmaniaなどがある。この年末年始に試してみてはいかがだろう。では、すばらしいクリスマスと新年に乾杯!

週刊ジャーニー No.1116(2019年12月12日)掲載

ミヨコ・スティーブンソン Miyoko Stevenson

WSETディプロマ取得。Circle of Wine Writers会員。Chevalier du Tastevin(利き酒騎士)団員。Jurade de St-Emilion団員。Ordre des Coteaux de Champagne団員。国際日本酒利き酒師。The Guild of Freemen of the City of London会員。ワイン関連の訳書・著書あり。現在、ロンドンでワイン教室を主宰。
www.miyokostevenson.co.uk
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