ご当地ワインと郷土料理&名産物㉗ 南半球:ニュージーランド その5

とっておきのニュージーランド産ピノ・ノワール

先月号に続き、ニュージーランドのピノ・ノワールについて書くが、今回はとっておきのワイン、つまり、ニュージーランドでベストと評価されるもののうち、いくつかをご紹介したい。機会があれば、ぜひ味わってみていただきたいものばかりだ。

Kusuda Pinot Noir 2006 Martinborough クスダ・ピノ・ノワール2006、マーティンボロ
名前から分かる通り、日本人が作ったワイン。生産者の楠田浩之氏については、本誌で2008年にも紹介している。
その年、筆者がニュージーランドの北島の南に位置するマーティンボロを訪ね、100種以上のピノ・ノワールをテイストした中で、最も感激したワインだった。生産者が日本人だということはテイストの後で知らされたので、日本人びいきをした訳ではなく、掛け値なしにすばらしいワインだったということだ。楠田氏は、ドイツに5年間留学し、ブドウ栽培・ワイン醸造を学び、2001年からご家族と一緒にマーティンボロに住み、ワイン造りに専念している。彼のピノ・ノワールは、その明確に表現されたブドウの果実味が実にエレガントで、酸味、タンニン、アルコールのバランスが絶妙。赤いチェリー風味にスパイスとハーブが加わり、口当たりは見事なほどシルキーで印象に残るワインといえる。

Ata Rangi Pinot Noir 2010 Martinborough アタ・ランギ・ピノ・ノワール2010、マーティンボロ
ニュージーランドで最も有名なピノ・ノワールを造るワイナリー、アタ・ランギ。同ワイナリーのピノ・ノワールのブドウ樹が、1本200万円もする仏ブルゴーニュ地方のロマネ・コンティの畑から盗んだ挿し木を親木としていることについては、今年5月号の紙面で書いた通り。アタ・ランギとは、現地のマオリ語で「夜明けの空」を意味し、マーティンボロ地区で最初にブドウ栽培を始め、1985年からピノ・ノワールを造っているアタ・ランギの心意気を的確に表した名称といえるだろう。このワインは、何と言ってもその芳香がすばらしい。赤いベリー類と熟成した赤いチェリーにハーブが加わり、その格別な風味を酸味が引き立て、凝縮している。見事なストラクチャーに感嘆するほかない。

Rippon Tinker's Field Pinot Noir 2010 Central Otago リッポン・ティンカーズ・フィールド・ピノ・ノワール2010、セントラル・オタゴ
世界で一番美しい景色を誇るブドウ畑といえば、このリッポン・ヴィンヤードではなかろうか。ニュージーランド南島のワイン産地でも最も南に位置するワイナリーで、ブドウ畑は、万年雪をかぶる南アルプスを対岸に望む、標高約300メートルのワナカ湖の斜面に築かれている。ビオ・ディナミ農法を適用している。ワインの造り手はオーナーの息子であるニック・ミルズ氏だが、彼は21歳の時にフリー・スタイルのスキーで国内チャンピオンに輝いたほどの腕前の持ち主。ワインは、これまたすばらしい芳香を呈すエレガントな仕上がりで、ブドウが受ける強い紫外線が完熟させた赤いチェリーと赤いプラムの風味が秀逸。ビオ・ディナミ農法に由来する深みと複雑さが備わっている。

Felton Road Calvert Pinot Noir 2011 Central Otago フェルトン・ロード・カルヴァート・ピノ・ノワール2011、セントラル・オタゴ
白ブドウ品種のリースリングで、ニュージーランドのワインとしてはいち早く世界的に有名になったワイナリーで造られる。世界での評価が高いにもかかわらず、所有畑は14ヘクタールと小さいため入手が困難なワインだ。ここもビオ・ディナミ農法を早くから行っている。重力に配慮した醸造所設計で、天然酵母による発酵など、人的介入を最小限に抑えている。チェリーとプラムのアロマが実にフレッシュなワインで、精妙なタンニンとバックボーンとしての酸味とのバランスがすばらしい。

週刊ジャーニー No.1107(2019年10月10日)掲載

ミヨコ・スティーブンソン Miyoko Stevenson

WSETディプロマ取得。Circle of Wine Writers会員。Chevalier du Tastevin(利き酒騎士)団員。Jurade de St-Emilion団員。Ordre des Coteaux de Champagne団員。国際日本酒利き酒師。The Guild of Freemen of the City of London会員。ワイン関連の訳書・著書あり。現在、ロンドンでワイン教室を主宰。
www.miyokostevenson.co.uk
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