
ご当地ワインと郷土料理&名産物㉘ 番外編:ロゼ・ワイン その1
冷やしたロゼ・ワインを堪能したい季節到来!
英国ではようやく夏らしい日々が到来し、スポーツや屋外イベントのシーズンを迎えている。冷やしたワインが美味しい季節だ。いただく料理が肉料理であれ、野菜・果物であれ、また、温かい料理、あるいは冷たい料理であれ、何にでも合うのが辛口のロゼ・ワインだろう。ニュージーランドのワインについて3回にわたって書いてきたがひと休みし、今の季節にぴったりのロゼ・ワインを取り上げることにする。
ロゼ・ワインの人気が英国市場で高まってきてから数年になる。ロゼ・ワインといえば、以前はロワール川流域で造られる軽いロゼか、ローヌ川流域、特にタヴェルTavel産の重いロゼ、またはプロヴァンスの中程度の重さのロゼ、もしくはスペインのナヴァラNavaraのロゼと相場が決まっていた。それが今日では、ニューワールドのほか、オールド・ワールドの各産地からも様々なロゼ・ワインが市場に出回るようになっている。使われるブドウ品種や、産地などによって色や個性が異なり、まさによりどりみどり。逆に、どれを選べばいいか迷ってしまうほどだ。そこで、今回と次回の2回に分けてお薦めのロゼ・ワインについてお届けしたい。今回は特に「いちおし」と言えるロゼ・ワイン2種にスポットを当て、次回はより手頃な価格で、それでいて美味しいロゼ・ワインを集めて記事にまとめたいと考えている。
特別な日にお薦めの「ささやく天使」
ロゼ・ワインは寝かしておいても質が上がるものではない。購入したら、冷蔵庫でよく冷やして早めに飲んでいただきたい。スクリュー・キャップのものは、横にしても立ててもよいが、コーク栓のものは横にして冷蔵庫に入れて冷やす。ほとんどのロゼ・ワインは価格が手頃でうれしくなるものの、多少値段は張っても、ここ一番という特別なオケージョンで飲みたいものもある。そのようなロゼ・ワインの中で、選りすぐった2種をご紹介したい。
まずは、今、世界的に人気が非常に高く、名前もかわいらしいウィスパリング・エンジェルWhispering Angel(ささやく天使)。このワインは南仏のプロヴァンス産だが、フランスはボルドーの名家、リシーヌLichine(1855年格付けシャトー、シャトー・プリュレ・リシーヌChâteau Prieuré Lichine)が買収した後、積極的な投資を行い、その質と人気を格段に上げたロゼ・ワインだ。グルナッシュ種53%、サンソー種17%、シラー種12%、ロール種(ヴェルメンティーノ種とも呼ぶ)6%、カリニャン種6%、ムールヴェドル種2%、その他4%と、南仏で栽培されるほとんどの黒ブドウ品種をブレンドして造っている。アルコール度は13.5%で、価格は17~23ポンド(Waitrose、Majestic Winesなどで購入可)。色は淡いサーモン・ピンクだが、味わいはリッチで深い。フレッシュで、赤スグリや白桃の果実香味を呈し、バランスのとれた酸味を備える、柔らかいくちあたりのロゼ・ワインだ。後味が複雑で凝縮されているのも特徴。どんな料理にも合うが、夏野菜の冷テリーヌ、エビやホタテを使った料理、チキン料理のほか、豚肉のしゃぶしゃぶなどによく合う。
淡いゴールデン・ピンクの正統派ロゼ・ワイン
2つめは、やはりプロヴァンス産のフィギュエールFiguière。マルセイユとニースの間に位置するこのブドウ園は、海岸の冷涼な気候に恵まれ、過去40年間、有機栽培でブドウを育てている。片岩質土壌で、雑味のない、ミネラル感のある、どちらかというと正統派といえるロゼ・ワインを造っている。ブドウ品種はサンソー種とグルナッシュ種で、色はワインの縁に灰色の色合いをほんのりと加えた、淡いゴールデン・ピンク。味わいは赤スグリとストロベリーに地中海のハーブ(タイム等)や黒コショウ、塩味さえ感じさせるミネラル感を備え、非常に複雑。爽やかな酸味があるので魚、チキン料理、サラダなどに合う。レモンと挽きたての黒コショウを使うと味がひきたち、さらに美味。価格は25ポンド程度(Harvey Nicholsで購入可)。どちらも、きりっと冷やして楽しんでいただきたい。
週刊ジャーニー No.1090(2019年7月11日)掲載