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ご当地ワインと郷土料理&名産物㉗ 南半球:ニュージーランド その3

オールド・ワールドで統制名称ワインが生まれた理由

EUには「ワイン法」というものがあり、加盟国はその法律に従ってブドウ栽培、ワイン醸造、ラベル表記等を行うことが求められる。さらに各国・各地域で詳細規則を定めている。 ブドウ栽培およびワイン醸造について、2000年、またはそれ以上の長い歴史を持つ地域(オールド・ワールド)では経験によって土地ごとの気候、土壌、風土、郷土料理に最適なブドウ品種が選ばれ、その品種が多く育てられることにより、各土地のブドウ品種として定着した。やがて、地域ごとに限定されたワイン用ブドウ品種を使って造ることを条件の一つとする統制名称ワインが確立されるに至った。例えば、仏ボルドー地方では、南のローヌ川流域のブドウ品種を使って統制名称ワインを造ることは認められていない。もし、ボルドー地方でローヌ川流域のブドウ品種でワインを造っても「テーブル・ワイン」としてしか販売できないのが決まり。つまり各地のワインはその土地の風土を表現していることになり、ワイン・ラベルに生産地名が明記されることが多いのはこの理由による。

ニュー・ワールドのワイン・ラベル事情

これに対してニュー・ワールド、つまり、キリスト教の伝来とともにブドウ栽培・ワイン醸造が伝えられた諸国では事情が異なる。ヨーロッパ諸国・地域から多様な種類のブドウ樹の挿し木が持ち込まれたので、ある1地域、もしくは1村、1生産者に限ってみても、複数のフランスのブドウ品種やスペインのブドウ品種、イタリアのブドウ品種が栽培されるのが一般的で、ラベルに生産地名を表記しても意味がないことになる。ニュー・ワールドのワイン・ラベルには、ブドウ品種名が表記されるのはこのため(稀に例外はあり)。例えば、ニュージーランド産ワインで、英国で最も人気の高いブランドのひとつにオイスター・ベイOyster Bayがあるが、ラベルには「Oyster Bay」の名の下にMerlot(メルロ:仏ボルドー地方のブドウ品種)であったり、Sauvignon Blanc(ソーヴィニョン・ブラン:仏ロワール川流域のブドウ品種)であったり、あるいはPinot Noir(ピノ・ノワール:仏ブルゴーニュ地方のブドウ品種)といった具合にブドウ品種名が記される。このように品種名がラベルに記されたワインは「ヴァラエタル・ワインvarietal wine」と呼ばれる。ブルゴーニュ地方の赤ワインを好む人がニュー・ワールドのワインを購入する際には、ラベルにピノ・ノワールと記されたものを選べばよいという訳だ。なお、ニュー・ワールドのワインは、一般的にオールド・ワールド産より果実香味が鮮明で、アルコール度も幾分高めのものが多いことも覚えておきたい。

洋上で楽しむ貝料理とソーヴィニョン・ブラン

さて、ニュージーランド・ワインが白ワインのソーヴィニョン・ブランで有名になり、国内のワイン用ブドウ作付け面積でも、この品種が77%を占めていることは前回お伝えした通り。ほとんどはマールボロ地区で栽培されているが、ここは昼間と夜間の気温差(日格差)が大きいために、風味が凝縮されやすい。マールボロ産ソーヴィニョン・ブランからは、パッション・フルーツや柑橘類、西洋スグリの香味を呈し、後味に柑橘類の皮の風味をほんのりと残す、非常にフレッシュでジューシーなワインが造られるのが特徴。前出のオイスター・ベイという名前のワインについては、ニュージーランド特産の「グリーン・リップト・マッスルgreen lipped mussel」=写真上=(日本ではパーナ貝あるいはモエギイ貝と呼ばれる)という、縁がエメラルド・グリーンの貝を蒸した料理=同下=の方が、カキよりも合う。この貝を堪能するには、マールボロ近郊のピクトンPicton港から出ている3時間半のセーリング・ツアー(※)がお薦め。同ツアーでは、南島と北島の間にある貝の養殖場まで航行したあと、船上で採れたての貝を蒸し、マールボロ産ソーヴィニョン・ブランとともに供してくれる。さわやかな海風の中、真っ青な空の下で穏やかな波に揺られながら味わう貝とワインは最高だ。貝を調理する間、船はその場で停泊するので、気温が許せば飛び込んで泳ぐこともできる。泳ぎながら楽しむ貝とワインの味の素晴らしさはまたひとしお。ニュージーランドを訪れるならぜひ試していただきたい。
※詳細は次のウェブサイトにてどうぞ。www.tripadvisor.com/AttractionProductReview-g285728-d11483360-Marlborough_Sounds_Seafood_Cruise_from_Picton-Picton_Marlborough_Region_South_Isla.html


週刊ジャーニー No.1090(2019年6月13日)掲載

ミヨコ・スティーブンソン Miyoko Stevenson

WSETディプロマ取得。Circle of Wine Writers会員。Chevalier du Tastevin(利き酒騎士)団員。Jurade de St-Emilion団員。Ordre des Coteaux de Champagne団員。国際日本酒利き酒師。The Guild of Freemen of the City of London会員。ワイン関連の訳書・著書あり。現在、ロンドンでワイン教室を主宰。
www.miyokostevenson.co.uk
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