しかし、エリザベス女王は心の中ではそう思ってはいないようだ。
これに先駆けて英王室は前日の18日、ハリー王子とメガン妃(38)が今春をもって公務から退き「殿下(ロイヤルハイネス=HRH)」の称号の使用の停止、公務に就くことを条件に得ていた公的資金の受け取り停止、そしてエリザベス女王の正式な代理を務めることもなくなると発表していた。
王子は19日のスピーチの中で、「公的費用に頼ることなく、今後も祖母であるエリザベス女王、英連邦、そして英軍に仕えていけたらと願っていたが、それは叶わなかった」「英国は私のふるさとであり、愛する国。それだけはこれからも変わらない」とし「自分がどんな人間で、何が大切なのかは今後も変わることはない。だから王室との取り決めを受け入れることにした。王室から完全に離れる訳ではないことは分かって欲しい」と述べた。
今回の件はハリー王子の勇み足だったかもしれず、女王がここまで厳しい態度に出るとは予想していなかった可能性が高い。
エリザベス女王は今回のハリー王子たちのとった行動について、「傷つき」、「落胆」していると伝えられた。離婚歴のあるシンプソン夫人との結婚を選び、国王としての責任を放棄した伯父エドワード8世の身勝手な行動により、エリザベス女王の父君がジョージ6世となったのは1936年、まだエリザベス王女が10歳の時のことだった。突然、時期君主という重責がその肩にのしかったのだ。
逃げも隠れもできなかった。
英国で成人とみなされる21歳の誕生日を迎えた時、エリザベスはこう宣言した。
「ここで皆さん全ての前で誓います。長くとも短くとも、私はこの生涯を皆さんに、そして、私たち皆が属する英連邦に捧げることを」
その約5年後、父ジョージ6世が逝去し、エリザベス2世として即位するわけだが、それから67年の長きにわたり、文字通り国民のために働き続けてきた同女王からすると、よほど自由な生活を送ってきたハリー王子と、公務を始めてからたかだか2年ほどというメガン妃が弱音をはいて、逃げ出してしまったことは、「落胆」というような生易しい言葉では言い表せない出来事だったのではなかろうか。「裏切り」という言葉が使われてもおかしくない。
ハリー王子とメガン妃は王室を離脱する。そして今月末、英国はEUを離脱する。英国はどこへ向かおうとしているのだろう。目が離せない。
By 週刊ジャーニー (Japan Journals Ltd London)