
「子育てをしていると、子供の身体的・精神的な成長を目の当たりにし、日々小さな感動を覚える。同時に、子供と平等に時間が流れているにもかかわらず、子供の上り坂の「成長」に反比例するかのように、自分の下り坂の「老い」を実感する。医学的には、人間の成長と老いの転換期は30代前後から訪れるそうだ。
まさにそんな「加齢」という普遍的なテーマについて、過去から現代にいたる人々の葛藤や課題、新たな取り組みを、150点もの美術品やオブジェ、文献、映像などを通して紹介するのが本展だ。会場には老若男女を問わず多くの人が足を運び、熱心に展示に見入っている。人類の歴史において、人々が時に老いに抵抗し、時にユーモラスに受け入れてきたのは今も昔も変わらないようだ。
中でも、世界有数の超少子高齢化社会である日本に関する展示が目を引く。それらは決して老いを悲観したり、無理に抗ったりするものではなく、高齢社会を豊かに過ごすための社会実験的な試みや、革新的な科学技術であり、未来への希望を感じさせてくれる。その内容に、日本人としてどこか誇らしい気分になった。
これほど充実した内容で無料とは、さすがは飲み薬を固形化した『錠剤』を開発し、莫大な富を築いたヘンリー・ウェルカム氏が創設した「ウェルカム財団」、太っ腹だ。時間はあっという間に過ぎてしまう。「命短し……」という言葉がそぐわなくなってきた長寿の現代だが、「気づけば終了していた」なんてことにならないよう、ぜひ早めに足を運んでほしい。
「100歳という寿命がますます一般的になるにつれ、私たちはその価値を以前とは異なるように評価しはじめるのだろうか?」

エキシビションの入り口で来場者を迎えるのは、日本の展示品。1963年以来、日本政府は100歳を迎えた国民に表敬状と記念の銀の酒杯を贈呈していた。初年度に贈呈された酒杯が153個だったのに対し、2014年にはなんと2万9000個を超え、制作コストが高騰したため、酒杯の贈呈は一時的に中断された。後に、銀より安価なニッケル合金製の酒杯が贈呈されるようになった。

英国では100歳を迎えると国王からバースデー・カードが届く。写真はエリザベス2世在位当時、筆者の縁戚に女王の名で贈られた100歳のバースデー・カード。
注文をまちがえる、こんな店があってもいい

認知症の人々にホールスタッフとして働いてもらう、日本の「注文をまちがえる料理店」の取り組みを紹介。英国人家族が感心しながら紹介映像に見入っていた。
オールド・キャット・レディ

犬に比べ世話が楽な猫は、古くから老人たちの良き友。ユニークなイラストには、猫の葬儀に参列する年老いたメイドたちの姿が描かれている。
ペッパーくん

人間による介護か、ロボットによる介護か?
感情認識機能を搭載した日本のヒューマノイド・ロボット、ペッパーくんも参加。
夢のような「若返りの泉」


「The fountain of youth」1536年のドイツの木版画プリント。
拡大写真:下部には、担架で泉に運ばれてゆく老人たち。その上には、若返って不要になった木の杖を燃やし、その火の周りで狂喜乱舞する人たちが描かれている。
The Coming of Age

11月29日(日)まで
Wellecome Collection
183 Euston Road, NW1 2BE
入場無料
https://wellcomecollection.org
週刊ジャーニー No.1449(2026年6月18日)掲載















