
ワインにまつわる今月のトピック:シャンパーニュの話 その2
国によって異なるバレンタイン・デーの贈り物
冬の寒さは続いているものの、2月3日に立春を迎え、日差しの中にもどことなく春が感じられる今日この頃だ。なんとなくウキウキするこの2月にはバレンタイン・デーがある。過去にご紹介したように、起源はローマ帝国時代にさかのぼる。時の皇帝が兵士たちの戦気を弱めないようにと彼らの結婚を禁止したが、この禁止令を無視して密かに数々の兵士たちを結婚させていたバレンタイン司祭が処刑された。その日が2月14日。今では、世界中でこの日を「愛を告白する日」として祝っているわけだが、国によってその祝い方も異なっている。
日本では、女性から男性にチョコレートを贈って気持ちを伝える日として知られているが、フランスの場合には、チョコレートをプレゼントする日でも女性から告白する日でもなく、愛し合う夫婦や恋人たちが2人で祝う「恋人たちのお祭り(ラ・フェットゥ・デ・ザムールLa fête des amoureux )」の日だ。

一方、英国では、2月14日が鳥たちの求愛の季節だと考えられており、5世紀ごろから、この日に恋人たちが贈り物を交わす風習が生まれた。サクソン時代のイングラントでは2月14日に男の子が少女に手袋をプレゼントするのが伝統だったという。その後、長い歴史の中で、バレンタイン・パン、キューピーのような柔らかい人形、ブローチや指輪などの宝飾品、銀製のペンにペン・ホルダー、シルクのストッキング、ガーターベルト、香水等々とそのプレゼントの形は移り変わり、今のようにチョコレートを贈る習慣ができたのはキャドバリーCadbury社が、ハートの箱に入ったチョコレートを発売し始めた19世紀になってからだ。今ではチョコレートの他、赤いバラをプレゼントすることも多い。
特別な夜にふさわしい泡のワインとカクテル
さて、愛する人をロマンチックな気持ちにさせてくれる贈り物といえば、チョコレートや赤いバラの花だけではない。「泡(発泡性)」のワインにはムードを盛り上げてくれる数々の要素がそろっている。開栓した時の音、糸のように連なって美しく立ち上る泡、エレガントな泡の音、美しい色合い、そして味わいなど、非発泡性ワインを上回る魅力が備わっている。
「泡のワイン(スパークリング・ワイン)」といえば、フランスのシャンパーニュ地方産のシャンパーニュが筆頭にくるが、他にもいろいろある。まず、フランスに目を向ければクレマンCrémantやヴァン・ムスーVin Mousseux。スペインにはカバCavaなど、イタリアにはプロセッコProseccoやアスティAsti、ランブルスコLambruscoなど、ドイツにはゼクトSekt、そしてニュー・ワールドにも様々なスパークリング・ワインがある。
バレンタイン・デーなら、やはりピンク色のロゼ・スパークリング・ワインに徹したいものだ。もちろんそのまま飲むも良し、また、イチゴ/サクランボ/桃など、あるいはリキュールとスパークリング・ワインを使ったピンク色のカクテルで祝うのも素敵だろう。お勧めは、ベル・レジェンドBelle Legende、フレンチ・クアレンタ・イ・トレスFrennchi Cuarennta y Tres(※下記参照)、シールバッハSeelbach(※※下記参照)、スー・ヴィード・レオナルドSous Vide Leonardo、ベリーニBellini、タニア・ツイストTania Twist、フレーズ・ソバージュFraise Sauvage。それでは、素敵な夜を!

※フレンチ・クアレンタ・イ・トレス
ブラウン・シュガー、リコール43 Licor 43 (地中海沿岸の柑橘類を始めとする43種類の植物から造られ、バニラ、キャラメル、蜂蜜などの風味を呈するスペインのリキュール)=写真右、濃縮スイートバルサミコ酢を熱してキャラメル化させ、グラスの底に置き、その上によく冷えたシャンパーニュを注いで作る。花のようなアロマが広がり、グラスの底のブラウン・シュガーがゆっくりと溶けて、時間ともに味わいが変化する。
※※シールバッハ
シャンパーニュをフルート型(縦長)のグラスに注ぎ、バーボンBourbon whiskey 30ml、クワントローCointreau 15ml、アンゴスチュラ・ビターズAngostura Bitters(ラムに、りんどうの根から取る苦味成分などを配合したもの)7滴、ペイショーズ・ビターPeychaud’s Bitters(スパイス、ハーブ系リキュール)を少々加え、静かに混ぜ、最後にグラスいっぱいになるようにシャンパーニュを注ぐ。
週刊ジャーニー No.1380(2025年2月13日)掲載