ワインにまつわる今月のトピック:シャンパーニュの話 その1

祝福の席に最もふさわしいワイン

年が改まり、新年会などでシャンパーニュを飲む機会が多いことだろう。何の料理にも合い、飲みやすく、そして何より祝福に最も適しているといえばシャンパーニュと断言して良いと思う。さて、シャンパーニュの講義でよく聞かれる質問に、「シャンパーニュとスパークリング・ワインの違いは?」「シャンパーニュ産で非発泡性ワインはある?」「ほとんどのシャンパーニュのラベルにはヴィンテージ(収穫年)が記されないのはなぜ?」の3つがある。ほかに「シャンパーニュは主に3種類のブドウ品種から造られると聞いたが、他に許可されているブドウ品種はある?」「シャンパーニュのラベルにあるGrand Cruとはどのような意味?」といった質問もよく受ける。今号ではこれらの質問に答えていこう。なお、シャンパーニュに関して他にも質問がある場合は、「ジャーニー」誌にコンタクトしてほしい。わかる限りお答えしたい。このメールアドレスはスパムボットから保護されています。閲覧するにはJavaScriptを有効にする必要があります。

シャンパーニュにまつわる基礎の基礎

さて、まず最初の質問のシャンパーニュとスパークリング・ワインとの違いだが、スパークリング・ワインとは発泡性ワインという意味で、ワイン中に溶け込んでいた炭酸ガスにより、開栓すると泡が発生するという、つまりワインの種類(タイプ)になる。一方、シャンパーニュとは、シャンパーニュ地方で作られるスパークリング・ワインのこと。従って、他地域で造られるスパークリング・ワインは、シャンパーニュと名乗ることはできない。これは、コニャックが、ブランデーという種類に属すのと同じだ。なお、余談だが、Champagneにフランス語の冠詞ラlaを付けた女性名詞ならシャンパーニュ地方を指し、ルleをつけた男性名詞なら、飲み物のシャンパーニュを指す。

スパークリング・ワイン以外も産出するシャンパーニュ地方

次に、⎾シャンパーニュで非発泡性ワインは造られているか?」だが、答えはイエス。シャンパーニュ地方には3つの原産地統制呼称(AOC)がある。そのうちの一つが発泡性ワインのAOCシャンパーニュ、他の2つは非発泡性ワインで、AOCコトー・シャンプノワCoteaux ChampenoisとAOCロゼ・デ・リセーィRosé des Riceysだ。コトー・シャンプノワには白/ロゼ/赤ワインがあり、赤ワインは、ロゼ・シャンパーニュを造る際に加えられることで知られている。ロゼ・デ・リセーィはロゼ・ワインで、その昔、ヴェルサイユ宮殿の建設労働者の中で、リセーィ村出身者が特に疲れを知らず良く働き、その力の源がリセーィ村で作られる淡い赤色のワインだと知ったルイ14世が、そのワインを王室御用達にしたとのエピソードが残っている。

収穫年が記されることが少ない理由

ほとんどのシャンパーニュにヴィンテージ(収穫年)が記されないのは、その年に収穫されたブドウ以外に、それ以前の年に造られたリザーブ・ワインがブレンドされているからだ。シャンパーニュ地方は、ブドウ栽培の北限近くに位置し、ブドウが毎年完熟するとは限らないためにリザーブ・ワインをブレンドすることによって風味を複雑にし、ノン=ヴィンテージ(NV)として売られる。また、そうすることによって、各作り手の個性を確立させたワインに仕上げることができるのだ。もちろん、最良年には、単一収獲年のブドウだけから造るシャンパーニュがあり、その場合には、ラベルに収穫年が明記される。

7つのブドウ品種とシャンパーニュの格付け法

法律上、認められているシャンパーニュ用のブドウ品種は次の7種。①ピノ・ノワールPinot Noir種(黒ブドウ品種)②ピノ・ムニエPinot Meunier種(黒ブドウ品種)③シャルドネChardonnay種(白ブドウ品種)④ピノ・グリPinot Gris種(白ブドウ品種)⑤アルバンヌArbanne種(白ブドウ品種)⑥プティ・メリエPetit Meslier種(白ブドウ品種)⑦ピノ・ブランPinot Blanc種(白ブドウ品種)だが、多くのシャンパーニュは①~③の3品種から造られ、後の4品種の使用量は全体の1%にも満たない。最後に、ラベルに明記されるグラン・クリュGrand Cruだが、他にプルミエ・クリュPremier Cruというのもあり、それぞれ特級、一級という意味。ボルドー・ワインやブルゴーニュ・ワインの場合には、畑が格付けされるが、シャンパーニュの場合には村ごとに格付けされている。

週刊ジャーニー No.1376(2025年1月16日)掲載

ミヨコ・スティーブンソン Miyoko Stevenson

WSETディプロマ取得。Circle of Wine Writers会員。Chevalier du Tastevin(利き酒騎士)団員。Jurade de St-Emilion団員。Ordre des Coteaux de Champagne団員。国際日本酒利き酒師。The Guild of Freemen of the City of London会員。ワイン関連の訳書・著書あり。

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