ワインにまつわる今月のトピック:ワイン・トレンド2024

テーマは持続可能であること

地球規模での「sustainability=持続可能であること」が重要視されるようになり、ビオや有機といった言葉が多く聞かれる今日、ワイン業界でも新たな動きが活発化している。今号では、そうしたワイン業界のトレンドをご紹介することにしたい。
まず、ビオだが、これはフランス語のビオディナミBiodynamieの略で、英語ではビオダイナミックBiodinamicとよばれる農法だ。月と惑星の運行に基づいて、種まきや収穫、調合剤の攪拌などを行う。牛の角や水晶粉、ホメオパシー療法にも用いられる物質から成るプレパラシオンPreparationsと呼ばれる肥料や調合剤を使用することで、土壌の改良をめざしている。この方法を使っている最も有名なワインに、世界で最も高価なロマネ・コンティRomanée-conti=下写真2点=がある。

写真左 © Andrea Schaffer / 同右 © Ohndo

規定が見直されているオーガニック・ワイン

一方、有機(オーガニックOrganic)栽培とは、化学肥料や農薬を使わず、また、遺伝子組み換えも行わず、農業生産による環境に与えるマイナスの影響をできる限り減らすことをめざす農法だ。ブドウ栽培においては、コッパーつまり銅が含まれる散布剤は許可されているが、2019年2月の改定によって、ヨーロッパにおいては銅の使用が極力制限されている。オーガニック・ワインとは、化学肥料・農薬を使用しない有機農法で栽培されたブドウを使い、オーガニック・ワインの細かい規定をクリアした状態で醸造し、正式な認証を得たワインだ。

自然派ワインが注目される中古い醸造法も復活

このような自然派のワインが求められるようになり、最近では、ワインのラベルにナチュラル・ワインNatural Wineと明記されるものがでてきている。このワインに使われるブドウは、持続可能で、有機、またはビオディナミ農法のブドウ畑から収穫され、野生/天然酵母のみを使って発酵させ、発酵中に添加する栄養素なども一切使わず、亜硫酸塩もほとんどまたは全く添加されないものであることが条件。ナチュラル・ワインは、通常、一般的なワインよりもフルーティーではなく、むしろゲイミー(gamy=猟鳥獣の香りを呈すること)で、ヨーグルトのような香りがする(もちろん、中には、かなりクリーンでフルーティーなものもある)。長期保存させないこと。

昨今、オレンジ・ワインOrange Wineという名称が突如現れたが、このワイン、実は、北部イタリアやスロヴェニアで使われていた最も古いワイン醸造法を使って造られる。通常、白ワインの発酵には、果皮や種を除いて発酵させるのだが、このワインの場合においては、白ブドウ品種を使って、赤ワインを造るように果皮や種を除かずに発酵させて造る。従って色がオレンジ色となる。試してみたいという読者向けに、コーテ・マス オランジュCôté Mas Orange(ウェイトローズWaitroseにて9.99ポンド)=写真右=を挙げておこう。

植物性由来に特化したワイン

ワインの醸造過程において、不要なタンパク質やタンニンを取り除くために、卵白やゼラチンなどか使われることが多いために、通常、ヴィーガンや、卵も食べないベジタリアンの中にはワインを飲むのを躊躇する人たちもいる。しかし、ワインにも動物由来ではなく、植物性由来の珪藻土(ベンナイト)を清澄剤として使う生産者がある。その場合には、「ヴィーガンvegan」と明記されている=左写真はその一例=ので、安心して飲んでほしい。多様性を認める動きが進む中、伝統や規制を重んじてきたワイン業界も柔軟な対応を示さざるを得ない時代となっていると言えそうだ。

週刊ジャーニー No.1363(2024年10月10日)掲載

ミヨコ・スティーブンソン Miyoko Stevenson

WSETディプロマ取得。Circle of Wine Writers会員。Chevalier du Tastevin(利き酒騎士)団員。Jurade de St-Emilion団員。Ordre des Coteaux de Champagne団員。国際日本酒利き酒師。The Guild of Freemen of the City of London会員。ワイン関連の訳書・著書あり。

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