ワインにまつわる今月のトピック㉚ シャンパーニュ再訪 その1

黄金色に染まる秋のシャンパーニュ

11月に入り、通りはクリスマスのデコレーションで飾られ、店にはクリスマス商品が並んでいる。そろそろシャンパーニュの出番が多くなるシーズンだ。今号から再びシャンパーニュを中心にしたトピックをお届けすることにしよう。 その前に私事で恐縮だが、10月の半ばに、シャンパーニュとブルゴーニュを車で回る予定をしていた件についてお話したい。なんと出発の2日前になって、フランスのガソリン・ストライキのことを知り、急きょ、電車、レンタカー、タクシーをアレンジする羽目になった。ガソリン・スタンド従業員による賃上げストに加えて、原油不足による製油所の閉鎖によって、ガソリン入手が更に困難になったためだ。フランスでは、今も8つの製油所のうち、6つが閉鎖されている状態が続き、事態は更に深刻化している。そのあおりを受けて、ユーロスター、電車、タクシーの予約は非常に困難になっており、レンタカーを借りる際には、ガソリン・タンクを一杯にして返さない場合には通常の4倍のガソリン代が請求されることを告げられた。また、ホテルと駅間の移動のためにタクシーをつかまえるなどほとんど不可能だった。日々、苦労の連続だったわけだが、シャンパーニュは秋本番を迎えており、いつものように広大なブドウ畑は黄金色に染まり、疲れもゆううつな気持ちも吹き飛ばすほど美しかった。

世界最大の発泡性ワインの産地

シャンパーニュで人気の高いジャック・セロスのホテル。部屋からブドウ畑を眺めることができる。

さて、本題に入ろう。シャンパーニュは3.4万ヘクタールのブドウ畑を有する世界最大の発泡性ワインの産地だ。といっても、発泡性ワインだけでなく、コトー・シャンプノワCoteaux Champenoisと呼ばれる赤ワインや、ロゼ・デ・リセRosé des Riceysと呼ばれるロゼ・ワインも僅かながら造られており、赤ワインは、ロゼのシャンパーニュを造るのにも用いられている。覚えておられる読者も多いだろうが、シャンパーニュとは、シャンパーニュ指定地域で造られる発泡性ワインのことで、シャンパーニュと同じブドウ品種を使い、同じ製法で造られたとしても、シャンパーニュ以外の地域で造られた発泡酒はシャンパーニュと呼ぶことは許されていない。

村ごとに行われる格付け

ブラン・ドゥ・ブランで最も有名なClos du Mesnilの畑。

ここには、約320のメゾン(英国ではハウスと呼ぶ)、140の協同組合があり、4,300人のブドウ栽培者によって、年間約3億リットル、約9,000種類ものシャンパーニュが生産されている。うち、約75%が輸出され、その75%はメゾンによるシャンパーニュで占められている。エマージング・マーケット(新興成長市場)の需要を満たすために2003年に生産地拡大が起案され、長い間、検討が続けられた結果、2018年にあらたにシャンパーニュを名乗ることのできる40村が加えられた。シャンパーニュ地方では、ブドウ畑が格付けの対象となるボルドー地方やブルゴ―ニュ地方と異なり、グラン・クリュGrand cru(特級)、プルミエ・クリュPremier cru(一級)、または普通クラスなどと村ごとに格付けが行われている。

味わいの幅を広げた2018年の産地拡大

シャンパーニュ生産に使用が認可されているブドウは品種は7種類。すなわち、ピノ・ノワールPinot Noir種(黒ブドウ品種)、ピノ・ムニエPinot Meunier種(黒ブドウ品種)、シャルドネChardonnay種(白ブドウ品種)、ピノ・グリPinot Gris種(白ブドウ品種)、アルバンヌArbanne種(白ブドウ品種)、プティ・メリエPetit Meslier種(白ブドウ品種)、ピノ・ブランPinot Blanc種(白ブドウ品種)だ。ほとんどのシャンパーニュは先述の3品種をブレンドすることによって造られ、後述の4品種の使用は全体のわずか0.3%足らず。シャルドネは、ブルゴーニュ地方よりも軽く、高い酸味と花や柑橘類の風味を呈するワインを造り、ピノ・ノワールはワインにしっかりしたボディを与え、ピノ・ムニエはブレンドに果実香味を持たせる。2018年のシャンパーニュ産地拡大によって、ピノ・ムニエ種のみ、あるいはピノ・ブラン種だけで造られるシャンパーニュも登場し始め、シャンパーニュの味わいの幅が広がった。12月号では、引き続きシャンパーニュについて説明し、この年末に是非試してほしい幾つかをご紹介することにしたい。

週刊ジャーニー No.1265(2022年11月10日)掲載

ミヨコ・スティーブンソン Miyoko Stevenson

WSETディプロマ取得。Circle of Wine Writers会員。Chevalier du Tastevin(利き酒騎士)団員。Jurade de St-Emilion団員。Ordre des Coteaux de Champagne団員。国際日本酒利き酒師。The Guild of Freemen of the City of London会員。ワイン関連の訳書・著書あり。現在、ロンドンでワイン教室を主宰。
www.miyokostevenson.co.uk
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