
ワインにまつわる今月のトピック㉚番外編 軽い赤ワインと重い赤ワイン
赤ワインの美味しい季節
暑すぎる日が多かった夏が過ぎたと思ったら、はや落ち葉を踏みしめて歩くほど秋が深まった。キャセロールやパイ、ローストやグリルした肉といった温かい料理と赤ワインが美味しい季節の到来だが、さぁ、何を飲もうかとなるとなかなか選択が難しい。そこで今回は、軽い赤ワインと重い赤ワインの見分け方のヒントについてお話しする。
英国にもある季節の野菜
ただ、その前にポテトのお話をしたい。私事で恐縮だが結婚したばかりの頃、お客様を招待しての料理作りには苦労した。ある秋の夕食に、メイン料理にビーフをローストし、その付け合わせのひとつにニュー・ポテトを、と思ったら夫に止められた。ニュー・ポテトは春から夏の野菜なので、かわりにロースト・ポテトやマッシュ・ポテトをお出しするように、とのこと。英国にも季節の野菜があり、ローストのつけ合わせには季節野菜を使わなければならないことを知った次第だ。また、この国には様々なポテトがあるが、それぞれ、マッシュ、ロースト、ベイキング、フライ等と用途に違いがある事も知った。脱線ついでにもう一つ。(日本の場合だけかもしれないが、聞いたところによると)今年は日本での松茸の出来が良いそうだ。松茸の出来の良い年のワインの出来は良くなく、松茸の出来が悪い年は逆にワインの出来が良いという。湿度や雨の量によるものだろうか。
注目すべきはボトルの形
さて、これからの季節の料理に話を戻そう。例えば、パイの場合、ビーフやヴェニソン(鹿肉)などのゲーム(狩猟肉)のパイの場合には重い赤ワインが合う。温かいチキン・パイの場合には軽めの赤ワインか重めの白ワイン、そしてフィッシュ・パイの場合には白ワインが合うだろう。ローストした肉の場合、ビーフやラムならば重めの赤ワイン、ポークやチキンなら軽めの赤ワインが合う。 では、その赤ワインが軽めか重めか、どうやって判断したらよいだろう。一つの目安としてボトルの形がある。ボトルの形には、いかり肩となで肩があり、仏ボルドーのワインはいかり肩のボトル入り。仏ブルゴーニュのワインはなで肩のボトルに入っている。例外はあるとしても、ボルドーの赤ワインの方が、ブルゴーニュの赤ワインより重い(ただ、少しややこしくなるが例外もあり、仏ローヌ産の赤ワインは、ブルゴーニュやボルドーより重いワインであるものの、なで肩のボトルに入っている)。
目安となるアルコール度数やブドウ品種
アルコール度数の話が出たので、追記する。ワインの軽さや重さを知る他の目安にアルコール度数がある。12%位から15.5%まであり、通常、12%以下のものは軽めで、13.5%以上のものは重い。一般的に、ニューワールド産の赤ワインはアルコール度数が高めであるだけでなく、果実香味が顕著なワインが多い。果実香味が顕著だと料理に合わせるのが難しくなりがちだが、果実香味が顕著でも軽め(アルコール度数が低め)の赤ワインならアペリティフに最適だ。 第3の目安としてブドウ品種が挙げられる。人気の高いカベルネ・ソーヴィニョン種はボルドー地方で栽培される代表的なブドウ品種だが、同様に人気の高いブルゴーニュ地方のピノ・ノワール品種から造られるワインより重い。他にボルドー地方で栽培されるメルローも重く、カベルネ・ソーヴィニョン同様、いかり肩のボトルに入っている。そして、ピノ・ノワールはなで肩のボトルに入っている。つまり軽めということだ。
週刊ジャーニー No.1261(2022年10月13日)掲載