ワインにまつわる今月のトピック㉚番外編 暑い夏に飲みたいワイン

イングランドでは人気のブドウ品種に変化あり

例年になく暑い日が続く英国だが、そんな夏の日に、特にエアコン設備のないご家庭では、冷たいお料理にキリット冷やした白ワインやロゼ・ワインを合わせて涼をとりたいもの。減退しがちな食欲もこれなら取り戻せることだろう。
さて、ごく近年まで英国で最も人気の高いヴァラエタル・ワインvarietal wine(ブドウ品種名を表ラベルに明記したワイン)といえば、白ワインのソーヴィニョン・ブランSauvignon Blancだった。ところが、2021年11月発表の調査結果によるとスコットランドではソーヴィニョン・ブランが依然として1位だったものの、イングランドでは多少動きがあり、1位ピノ・グリッジョPinot Grigio、2位シャルドネChardonnay、3位ソーヴィニョン・ブランSauvignon Blanc、4位ロゼ・ワイン、そして5位赤ワインのカベルネ・ソーヴィニョンCabernet Sauvignonと順位に入れ替わりがあった。

地域によって異なるソーヴィニョン・ブランの特徴

ソーヴィニョン・ブランは、主にフランスのロワール川東部地域とボルドー、そしてニュー・ワールドの国々(ヨーロッパと中東、北アフリカを除く国を指す)で栽培されているが、フランスで造られる高価格のソーヴィニョン・ブランの場合には、ヴァラエタル・ワインとして出荷されるより、生産地がラベル表記されることが多い。この品種はアロマチックで、フランスで造られるソーヴィニョン・ブランの場合には刈ったばかりの草やグーズベリー(スグリ)といった香りを呈す酸味の高いワインとなる。これに対して、ニュー・ワールドで造られるソーヴィニョン・ブランの場合は、フランス産のものほど辛口ではなく、よりフルーティーで、パッション・フルーツのようなトロピカル・フルーツの香味が強い。ニューワールドの中でも、ニュージーランド産のものが最も濃厚で飲みごたえがある。しっかりした食事にはフランス産が合い、ニュー・ワールド産はたとえ食事がなくても楽しめるのが特徴。料理に合わせるとすれば、ロースト/グリルした冷たいチキンやポーク、サーモン、サラダ類、テリーヌ、チキンのタルトなどとの相性がよいことも覚えておくと良い。

冷やして楽しみたいこの夏お薦めの1本

さて、イングランドで人気第1位のピノ・グリッジョだが、主な産地はイタリア北部。早期消費用の辛口、かつライト=ボディで、ほどほどの酸味を持ち、洋ナシや白桃、グレープ・フルーツといった香りが出しゃばらず、口当たりが滑らかでどんな料理にも合いやすい。のど越しが心地よいことに加え、料理に合わせやすい点、そして値段も手ごろな所が人気の高い理由だろう。お薦めするとすれば、イタリアのアルト・アディジェAlto Adige産のものを挙げたい。
ちなみに、この品種、フランスのアルザス地方ではピノ・グリと呼ばれ、実は、ピノ・グリッジョとは全く異なるワインを造っている。フルボディで、辛口~甘口、濃厚な香味を備え、アルコール度数も高め、ライムやレモン、白い花、ドライ・フルーツ、ハチミツといった香りが凝縮され、口当たりが滑らか。値の張るものは、長期熟成によって複雑な香味をかもし出す。ニュー・ワールド産で、早期消費用のライト=ボディのワインであれば、そのラベルにピノ・グリッジョと表記され、アルザス産のようなワインであればピノ・グリと表記される。

次号では、第2位のシャルドネ、そして第4位のロゼについて書きたいと思うが、今回の締め括りに、試していただきたいピノ・グリッジョとして、フォルテ・アルト・ピノ・グリッジョForte Alto Pinot Grigio=写真右=をご紹介しておく。ウェイトローズで今なら6.79ポンド(通常9.79ポンド)。フレッシュでのど越しもよく、美味しいワインだ。しっかりと冷やして味わっていただきたい。


週刊ジャーニー No.1252(2022年8月11日)掲載

ミヨコ・スティーブンソン Miyoko Stevenson

WSETディプロマ取得。Circle of Wine Writers会員。Chevalier du Tastevin(利き酒騎士)団員。Jurade de St-Emilion団員。Ordre des Coteaux de Champagne団員。国際日本酒利き酒師。The Guild of Freemen of the City of London会員。ワイン関連の訳書・著書あり。現在、ロンドンでワイン教室を主宰。
www.miyokostevenson.co.uk
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