ご当地ワインと郷土料理&名産物㉒ 北米・カリフォルニア その5

規模は小さくとも質の高さで勝負!

米国産ワインの90%以上を生産するカリフォルニア州は、高級ワイン産業と安価なワインの大量生産という明確な2極化が進んだ地域であることは前回、記した通りだ。このうち、高級ワイン生産地として最も有名なのはナパ・ヴァレーNapa Valleyだろう。現在、約700のブドウ栽培者が存在し、およそ500のワイナリーがあり、1000種類以上のワインを生産している。ワイナリーのほとんどは中規模から小規模の『ブティック・ワイナリー』と呼ばれる家族経営のワイナリーで、生産量は米国の全ワインの4%にしかすぎない(全世界のワイン生産量の0.4%)。ブドウ作付け面積は1万8,200ヘクタールというから、フランスのブドウ作付け面積の約44分の1、ボルドー地方の6分の1弱ということになる。そのブドウ畑や醸造所では、最先端の技術や情報に伝統的な技法を組み合わせ、いずれ劣らぬ高品質ワインを生産し、高級ワイン産地のイメージを確立させるに至っており、世界中のワイン市場で高く評価されている。

霧が作り出す、恵まれた気候

地中海性気候で雨が少ない同州は、サン・パブロ湾から流れ込む低温の霧のおかげで、南部の夏季日中気温は27℃、北部は35℃だが、夜間は12℃と、ワイン用上質ブドウの成熟に重要な日較差が大きい点で恵まれている。34種類ものワイン用ブドウ品種が栽培されており、うち赤ワイン用が77%、白ワイン用が23%。最も多く栽培されているのは、カベルネ・ソーヴィニョンCabernet Sauvignonで47%を占め、シャルドネChardonnayが15%、メルロMerlotが11%と続く。さらにソーヴィニョン・ブランSauvignon Blancとピノ・ノワールPinot Noirが6%、、ジンファンデルZinfandelが3%という割合になっている。

ナパ・ヴァレーの別格のブドウ栽培地域

米国は約230のアメリカブドウ栽培地域(通常、AVAと称される)を有し、ナパ・ヴァレーには16のAVAがある。特に別格のカベルネ・ソーヴィニョンを産するのはオークヴィルOakville AVA、ラザフォードRutherford AVA、セント・ヘレナSt. Helena AVAの3地域。ここは、海抜23~185メートルのヴァレーの中央に広がる地域で、早朝と夜間にでる霧の影響を受けて、ブドウの生育に適した環境となっている。土壌をみてみると、西のマヤカマスMayacamas山脈に向かう地域は小石の混ざった堆積ロームで、東のヴァカVaca山脈側は火山性の重い土壌。そこから、ブラックカラント(黒スグリ=仏語でカシス)やミント、黒コショウ、ブラックチェリー、ブルーベリー風味を呈し、ヴェルヴェットのような深みがあって、なめらかな口当たりのカベルネ・ソーヴィニョンが生まれている。

サンタ・マリア・ヴァレー生まれのカリフォルニア名物

さて、カリフォルニアのローカル・フードというと、お寿司のカリフォルニア巻がまず頭に浮かぶが、実は、世界で一番おいしいとされる名物バーベキューがカリフォルニアにあるという。もともとバーベキューとは、薪、炭などの弱火で、時には煙で燻しながら肉や野菜、魚介類などをじっくり焼く料理。その語源は、西インド諸島の先住民であるタイノ族の肉の丸焼き用の木枠を指す言葉とされ、それが「丸焼き」を意味するスペイン語の「barbacoa」に転化し、英語圏で「BBQ」と略されたとする説がある。北米では人気のある食文化の一つで、地域や家庭によって独特の伝統やこだわりがある。
さて、 このカリフォルニアの名物バーベキューとは、サンタ・マリア・スタイル・バーベキューと呼ばれるもの。カリフォルニア州サンタ・バーバラ地区のサンタ・マリア・ヴァレーSanta Maria Valleyが発祥地で、19世紀半ばから有名になり、カリフォルニア州全域のレストランでよく見られる1品とのこと。残念ながら筆者はまだ試したことがないが、そのすごさというのはまず肉そのものにあり、「tri-tip」=写真=と呼ばれる肉厚に切られた三角形のサーロインを、レッド・オークの木を勢いよく燃やして焼く。肉のジューシーさと柔らかさ、そしてサイドにつけられるサルサ・サラダとの相性のよさは折り紙つき。ナパ・ヴァレー産のカベルネ・ソーヴィニョンとあわせれば、絶妙なパートナーとして美味しさがさらにひきたつことだろう。

週刊ジャーニー No.1025(2018年3月8日)掲載

ミヨコ・スティーブンソン Miyoko Stevenson

WSETディプロマ取得。Circle of Wine Writers会員。Chevalier du Tastevin(利き酒騎士)団員。Jurade de St-Emilion団員。Ordre des Coteaux de Champagne団員。国際日本酒利き酒師。The Guild of Freemen of the City of London会員。ワイン関連の訳書・著書あり。現在、ロンドンでワイン教室を主宰。
www.miyokostevenson.co.uk
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